見てはならないものを見てしまった。そんな思いを強くする番組を目の当たりにして、テレビメディアの退廃というか荒廃も極まれりと暗澹たる気持ちになりました。
毎日のニュースで「挑発的言動を繰り返す北朝鮮・・・」という「まくら言葉」はそれなりに慣れっこになったというぐらいのものですが、その没論理あるいは視る者、聴く者への「刷り込み」としかいえない没ジャーナリズムの言説にこの国のメディアの行く先に暗澹たる思いを抱くのは私だけでしょうか。
さて、その「驚き」の番組です。
これまで放送番組や新聞の記事を批判的に取り上げるときにはできるだけ「名指し」は避けてきました。
それは同じくメディアに身をおいてきた者として、他をあげつらってそれで終わりと言うものではなく、あるいはタメにする批判に堕することを避けたいという思いがあったからです。
しかし放送からほぼ十日になろうとしていますので、何を批判しているのかわからなくなるというのはかえって責任ある批判にならないと思いますので、番組名を明記することにします。
5月31日(日)の朝放送された「サンデーモーニング」(TBS系列)でのことです。
関口宏氏が軽やかに進行するこの番組を私はほぼ欠かさず見ています。
この番組の最後に「風をよむ」というコーナーがあります。
そこに、ごみを山のように積み上げて隣近所に悪臭やなにやかやを撒き散らして臆するところのない、あるいは犬などを何匹もむやみに飼って迷惑を及ぼすといった「困った隣人」が取り上げられて、そういう状況に直面すると隣近所の人々は、まずはごみをなんとかするようにと言いに行くのだが、ごみ屋敷の主に『逆ギレ』される、あるいは犬に噛まれて怪我をする・・・というストーリーで、まさにこれが北朝鮮だ!と展開していくのでした。
制作者の認識の低さあるいは退廃をあげつらうのは簡単ですが、それよりなによりスタジオに居並ぶ「識者」たちが、この「例え」あるいはレポートの構成に疑問を提出することなく「困った隣人北朝鮮!」についてあれこれのコメントを重ねたのでした。
いやいや!この番組はあなたが言うようにジャーナリズムなどではないから目くじら立てるものではないと「慰めて」くれる人がいないでもないのですが、それにしても見ていて唖然としてことばが出ませんでした。
ミサイル、核実験・・・と立て続けに「挑発的言動を重ねる」北朝鮮をやりこめてやろうという意図だけは十分に伝わってきて、なかには溜飲を下げた視聴者もいたのでしょうが、これが時代の「風をよむ」営みといえるのだろうかと、考え込まざるをえませんでした。
ごみ屋敷を登場させたからというわけではなく、それこそマスコミではなく「マスゴミ」といわれても、これでは反論する論理を持てないのではないかと思いました。
見るものの「劣情」に訴えることで同意や支持を得ようとするさもしい気持ちを持ちはじめたとたん、そこには退廃と堕落の荒野しか広がらないことを肝に銘じておくべきだと、もはやこの番組の制作者や出演者たちに何かを語りかけても無駄かもしれないとは思いつつ、しかし、なにがしかの問題意識と良心のかけらがあるなら、こうした番組に対する恥というものを知ってほしいと思ったのでした。
北朝鮮の核やミサイル開発に一片の共感も抱くことのない私ですが、国際政治の中にあるいは歴史の文脈のなかにこの問題を据えて見つめるとき、北朝鮮を「ごみ屋敷に文句を言ったら逆ギレされてしまった困った隣人」などという例えで語るなどということはしないだけの節度は持っているべきだと思います。
制作者たちはあるいはスタジオで進行する役割をふられた人々は、そしてコメンテーターの「識者」?たちは、それぐらいの最低限の感性と問題意識を持っているべきだと、これは放送の世界で40年近く仕事をしてきただけに、より強く思うのでした。
それにしても、北朝鮮がテーマなら何を言っても言ったもの勝ちという風潮に、言論そしてメディア(あえてジャーナリズムなどとは言いますまい!)はどれだけの論理性を持てるのか、厳しく問われる時を迎えているのだろうと思います。
さて、先週は「天安門事件」から20年ということで、メディアで大きく取り上げられました。
「6・4」直前の5月末、テレビの「緊急特番」を担当した後、戒厳令下の北京に出かけたことを思い返しながら、先週後半、20年前の「事件」の一連の流れについて反芻して過ごしました。
学生と労働者の形容しがたい熱とある種の「倦怠感」がないまぜになった天安門広場を歩き、「本部」の置かれた人民英雄記念碑の石段を登ったこと、はりぼての「自由の女神像」の下で若者のすすめに従ってカンパと引き換えにバッジを手にしたことなどを思い出します。
そしてなにより、もう少し留まるべきだという中国の青年たちの「すすめ」に、仕事をかかえているという事情を話して6月1日に日本に戻った私に、6月4日早朝北京からかかってきた友人からの電話の切迫した声が、二十年という時間を経てもなお、耳に残っていることを知ることになったのでした。
それはなにも「感傷」に浸っているのではなく、いまだに整理のつかない思いを引きずっているということを、あらためて反芻したという意味です。
少なくとも、権力の腐敗とものの値段が上がり貧富の格差が生まれていることをはじめ、政治、経済にわたるいくつもの問題に対する青年たちの「異議申し立て」には理があり、それゆえ多くの労働者、庶民の支持が集まったことは間違いのないことだったと思います。
しかし一方ではことばにできない、ある種の「不可思議さ」が拭えず、結局「天安門事件」とは何であったのかという問いに十分な答えを得るところに至っていないことを思い知ります。
いささかの飛躍を許していただけば、結局「冷戦崩壊」とは何であったのかという問題と通底するものでもあります。
いま、まだ十分に語りうる「ことば」を獲得できていない恨みがあるのですが、どこかに「見えざる手」の存在を意識させるものが拭えません。
なぜこんなこと書くかと言えば、世界で起きている問題には、当然といえば当然ですが、さまざまな「顔」が隠されていて、一面的にしかものを見ることができない場合は事の本質、実体を見落とす怖さが、いつもついて回ると思うからです。
とりわけ、いま私たちが目の当たりにしている「北朝鮮問題」はよほど注意しながら向き合わないと、大きな読み違いを重ねることになるのではないかと危惧を抱きます。
いささか感覚に傾いた話になったかもしれませんが、いまの私の正直な感慨です。
いまはまだ具体性に踏み込んだことが言えず、もどかしくてなりませんが、少なくとも「ごみ屋敷の逆ギレ」のように、戯画化してしまうことには「わきまえ」ということが必要だと思っています。
ところで、北朝鮮の核実験をうけて、HPに掲載するべく、北東アジアの安全保障などをご専門にされている李 鐘元さん(立教大学法学部教授)にインタビューをお願いしました。
冷静かつ論理性に富み実に深いお話をうかがえました。
いま、字に起こし、Web掲載をめざして作業をすすめています。
先週出向いたいくつかの「会合」のことも含めて、もう少し「報告」を続けたいと考えています。
(続く)
2009年06月09日
2009年05月30日
何をめざすのか・・・
ブログの筆を執るのが間遠になっている間も、当然のことですが、世界は、日本は大きく動いていて、書くという営為が情勢についていっていないことに忸怩たる思いが募っていました。
「貧乏ヒマなし」って本当だね・・・などと軽口をたたきながら、片づけなければならない目の前のあれこれに追われる日々が続き、ブログにむかうこともままなりませんでした。
また、なによりも日々起きてくる問題について「勉強」し、研究を深め、分析と思索を深めるという、もっとも基本的なことに時間の不足と力不足を痛感して焦る毎日でもありました。
とりわけ「過去」(歴史)というものへの勉強が足りないことを哀しいほど痛感する日々になっています。
さて、北朝鮮の核実験によってメディアが、言論が揺れています。
エッ!世界が揺れていると言うべきだろう・・・とお思いの方も多いかもしれませんが、世界は極めて冷静に問題と向き合っているのに、日本のメディアと言論が揺れているというのが私のこの間の感慨です。
まず前提として明確にしておかなければならないのは、アメリカのオバマ大統領でさえ「核の廃絶」を、世界で初めて核を使用した国としての「道義的責任」だと、言いはじめているときに、核開発に走ることに賛成することなどできないことは自明のことだということです。
私は、ジャーナリストだった父の影響で、小さい時から世界、あるいは社会にそして歴史に目を向けることの大切さを、厳しくと言っていい環境で、教えられてきました。
もちろん、だからといって自慢できるほどのことではありません。当然といえば当然のことです。
しかし、たとえば核の問題についていえば、幼い時から広島の原爆について映画や書物を通じて学ぶことを迫られました。
そして、映画「生きていてよかった」(亀井文夫監督1956年)を見に連れてゆかれ、小学校の低学年でしたが、原爆というもの、原爆投下を、絶対に許すことのできないものだという思いを心の奥深くに刻むことになりました。
小学校の高学年にさしかかるころには原水爆禁止世界大会の会場で『原爆許すまじ』を歌う少年になっていました。
当時は「原水爆禁止運動」は「国民運動」として大きな盛り上がりをみせていて、政党、政派による分裂が持ち込まれる前でした。
私の「自分史」を書くのが目的ではないので、ここまでにしますが、核を憎むという気持ちにおいて人後に落ちないといういささかの自負は揺るがないということです。
もうひとつ付け加えると、放送の仕事の中で、「生ましめんかな」の詩で知られる詩人の栗原貞子さんを広島にお訪ねして取材したり、長崎局で勤務して原爆投下当時の生き証人ともいえるみなさんにお話をうかがう機会を得たこともありました。
核廃絶に向けての思いを、さらに、さらに強くする体験を重ねても来ました。
さて、そこで、しかし今回の北朝鮮の核実験についての日本のメディアと言論の冷静さを失った「ゆらぎ」については、同じメディアに長く身を置いてきた者として、なんともいたたまれなくなるものです。
けさのテレビのある「ニュースショー」のオープニングは「北朝鮮の暴挙に国際社会はどう立ち向かうのか!」とはじまり「繰り返される挑発行為に国際社会は結束して当たれ!」「北朝鮮の暴走を止めるために・・・」さらに「ミサイル、核実験の先には北朝鮮による韓国侵攻という恐怖のシナリオも!」と繰り返していました。
このブログを書くPCラックの横には、1992年から今年までの「北朝鮮問題」を特集した各論壇誌が並んでいます。それらを読み直しながら気づくのは、目の前に起きた事象だけに右往左往せず、歴史的な視点を失わず、問題の構造的なありようを深く見据えて、分析、思考することがいかに大事であるかということです。
こんなあたりまえのことを言うのは恥ずかしいことですが、実は北朝鮮問題をめぐる、最低でも過去20年ぐらいの言説を読み返すと、この恥ずかしいほどの初歩的なことが日本のメディアや言論の世界で十分になされていないということに突き当ってしまいます。
いやはや、これは「執念深く」?記憶を刻んでおかないと、いつも同じ失敗の繰り返しだ!と痛感するものです。
たとえば、「アメリカを自分のほうに向かせるための、いつもの瀬戸際作戦」と十年一日のごとく繰り返すのは、それはそれで結構なのだけれども、何も説明したことにはならないことにそろそろ気づくべきです。
さて、いま深めなければならない問題意識という意味で、いくつかのポイントについて、ランダムにですが、あげておきたいと思います。
このブログの読者の皆さんと一緒に考えを深めていくための手掛かりという意味でもあります。
1.まず、国連の安保理決議をめざして、日本が「厳しい制裁」の取りまとめに奔走している様子が連日伝えられていますが、前回の「ミサイル発射」にかかわる議長声明でも、日本は米国から梯子をはずされた格好で、ふりあげたこぶしの下ろしどころに苦慮したことを教訓として事にあたっているのか。
2.北朝鮮は、なぜ、いま、核実験に踏み切ったのかをありきたりの「俗説」に陥ることなく、冷静かつ論理的に分析するとどうなるのか。とりわけ北朝鮮からは「予告的」な言明があり、アメリカのメディアは今月初めから核実験の予兆について報じていたこと、またアメリカのボズワース北朝鮮政策特別代表も今月はじめには北朝鮮の核実験に言及して、実験に踏み切るかもしれないが止めることはできないといった発言をしてたことをどう分析するのか。
3.オバマ政権になってから北朝鮮政策が定まらないのはなぜなのか。幾人かの「識者」の指摘にあるように、本当に政策の「優先順位」が低いのか。政権内に、あるいはアメリカの政治、経済にもっと別の要因が内在するということはないのか。
4.北朝鮮の体制内の『焦り』がいわれますが、実体はどういうものなのか。日本のメディアが言うように、金正日総書記の健康問題と後継者への権力継承問題が背景にあるという分析は正しいのかどうか。
5.「アメリカを自分のほうに向かせたい」という論調を否定するものではないが、少なくとも北朝鮮の「核危機」(核開発への危惧)が言われはじめた1990年代初頭以来の展開を見ると、北朝鮮は冷静、周到に米国政権、あるいは国際情勢について分析しているとかんがえるべきではないか。
6.国連の制裁強化をという動き自体は「否定できない」と言えるのだろうが、もっと慎重に見据えないと日本の政策判断を誤るおそれがなきにしもあらずではないか。
米国は日本に決議の「とりまとめ」をさせるという「流れ」だが、ここは「注意」が必要ではないか。
7.オバマ大統領が「核の廃絶」に向けて発言する(プラハ発言)中で、結局は五大国だけが核保有を「許される」というNPT体制の内包する矛盾と正面から向き合うことなしに北朝鮮の核を「非難する」だけでは問題の本質が見えなくなるのではないか。
8.さらに、イスラエル、インド、パキスタンなどNPTの枠組の「外」に存在する核保有国にかかわる、NPT体制の矛盾、ダブルスタンダードについて説得力ある論理と政策がなければ北朝鮮の核問題の解決はむずかしいのではないか。
8.つまるところ東アジアの非核化という問題にどう向き合うのかが、「核の傘」の下にある日本に問われてくるという、問題の構造をしっかり認識する必要があるのではないか。
9.ミサイル、核で揺さぶられる北東アジアおよび朝鮮半島の安全保障問題の根本的な解決に向かうためには、結局は、米朝関係の本質的な転換−朝鮮戦争、あるいは冷戦構造の歴史的な「清算」を避けて通ることができないことを浮き彫りにしていると言うべきで、そこへの認識が迫られてくるという問題の構造に戻っていく。
10.こうした本質的な問題(の構造)を突きつけてきているのがミ北朝鮮のサイル、核実験というものではないか。であるならば、本当に、もうこのあたりで、日本の(政府、メディア、そしてわれわれの)「思考」を変えなければ、東アジアの平和と安定には向かえないのではないか。
さて、これらの問題意識を集約して言うなら、めざすべきことは北朝鮮への制裁なのか、ガツンと一発いわしておく(突然の関西弁で恐縮ですが「いわす」とは懲らしめるとか叩きのめすといったニュアンスですが・・・)ことなのか?!ということです。
メディアも言論も皮相に北朝鮮を「いわす」ことに走っているのを前にして、ちょっと頭を冷やして考えると、めざすべき目標は「いわす」ことにあるのではなく、北朝鮮の核の放棄であり、核やミサイルの実験が不要になる、あるいは無意味になる状況をどうすれば創りだせるのかということだということは、赤子でもわかることだと思います。
(「いわす」ことが目的ではないと言うが、あんな奴らはいわしておかなければ気が済まない、あるいは許せないという人もいるでしょう。が、しかし相手は「いわされて」も、「いわされて」もとことんやるぞ!と言っているのです。さて共倒れするまで「いわし」つづける「根性」を示してでも「いわしたる!」というのでしょうか。つまりそれは戦争ということを意味するのですが、そういう人たちは真っ先に腹に爆弾でも巻いて北朝鮮に突っ込んでいこうとでもいうのでしょうか。冷静に考えればすぐわかる理屈です。)
さて、繰り返しです、ここまで簡単、平易な言葉で語ってきましたが、しかつめらしく言えば、外交のミッション(目標)とは何かという本質的な問題です。
その目標に対してどういう道筋をたどって実現していくのか!
そのことに対しての深い分析とそれにも勝る深い思索が、いま必要とされているのです。
さて、私たちはなにをめざそうとしているのでしょうか。
北朝鮮をガツンといわすことなのでしょうか。
それとも、東アジアが平和で安定した発展のできる環境をめざそうとするのでしょうか。
あるいは、オバマ大統領でさえ!語り始めた世界の、そして東アジアの核廃絶と平和をめざそうというのでしょうか。
もう一度くりかえしです。
われわれは何をめざすのか・・・。
なお、私が運営しているウエッブ(ホームページ)で今回の核実験について急きょインタビューのお願いをしてお引き受けいただいた企画があります。
来週にはそのインタビューができると思いますので、できるだけ早くウエッブに掲載するよう努力するつもりでいます。
しばしお待ちください。
「貧乏ヒマなし」って本当だね・・・などと軽口をたたきながら、片づけなければならない目の前のあれこれに追われる日々が続き、ブログにむかうこともままなりませんでした。
また、なによりも日々起きてくる問題について「勉強」し、研究を深め、分析と思索を深めるという、もっとも基本的なことに時間の不足と力不足を痛感して焦る毎日でもありました。
とりわけ「過去」(歴史)というものへの勉強が足りないことを哀しいほど痛感する日々になっています。
さて、北朝鮮の核実験によってメディアが、言論が揺れています。
エッ!世界が揺れていると言うべきだろう・・・とお思いの方も多いかもしれませんが、世界は極めて冷静に問題と向き合っているのに、日本のメディアと言論が揺れているというのが私のこの間の感慨です。
まず前提として明確にしておかなければならないのは、アメリカのオバマ大統領でさえ「核の廃絶」を、世界で初めて核を使用した国としての「道義的責任」だと、言いはじめているときに、核開発に走ることに賛成することなどできないことは自明のことだということです。
私は、ジャーナリストだった父の影響で、小さい時から世界、あるいは社会にそして歴史に目を向けることの大切さを、厳しくと言っていい環境で、教えられてきました。
もちろん、だからといって自慢できるほどのことではありません。当然といえば当然のことです。
しかし、たとえば核の問題についていえば、幼い時から広島の原爆について映画や書物を通じて学ぶことを迫られました。
そして、映画「生きていてよかった」(亀井文夫監督1956年)を見に連れてゆかれ、小学校の低学年でしたが、原爆というもの、原爆投下を、絶対に許すことのできないものだという思いを心の奥深くに刻むことになりました。
小学校の高学年にさしかかるころには原水爆禁止世界大会の会場で『原爆許すまじ』を歌う少年になっていました。
当時は「原水爆禁止運動」は「国民運動」として大きな盛り上がりをみせていて、政党、政派による分裂が持ち込まれる前でした。
私の「自分史」を書くのが目的ではないので、ここまでにしますが、核を憎むという気持ちにおいて人後に落ちないといういささかの自負は揺るがないということです。
もうひとつ付け加えると、放送の仕事の中で、「生ましめんかな」の詩で知られる詩人の栗原貞子さんを広島にお訪ねして取材したり、長崎局で勤務して原爆投下当時の生き証人ともいえるみなさんにお話をうかがう機会を得たこともありました。
核廃絶に向けての思いを、さらに、さらに強くする体験を重ねても来ました。
さて、そこで、しかし今回の北朝鮮の核実験についての日本のメディアと言論の冷静さを失った「ゆらぎ」については、同じメディアに長く身を置いてきた者として、なんともいたたまれなくなるものです。
けさのテレビのある「ニュースショー」のオープニングは「北朝鮮の暴挙に国際社会はどう立ち向かうのか!」とはじまり「繰り返される挑発行為に国際社会は結束して当たれ!」「北朝鮮の暴走を止めるために・・・」さらに「ミサイル、核実験の先には北朝鮮による韓国侵攻という恐怖のシナリオも!」と繰り返していました。
このブログを書くPCラックの横には、1992年から今年までの「北朝鮮問題」を特集した各論壇誌が並んでいます。それらを読み直しながら気づくのは、目の前に起きた事象だけに右往左往せず、歴史的な視点を失わず、問題の構造的なありようを深く見据えて、分析、思考することがいかに大事であるかということです。
こんなあたりまえのことを言うのは恥ずかしいことですが、実は北朝鮮問題をめぐる、最低でも過去20年ぐらいの言説を読み返すと、この恥ずかしいほどの初歩的なことが日本のメディアや言論の世界で十分になされていないということに突き当ってしまいます。
いやはや、これは「執念深く」?記憶を刻んでおかないと、いつも同じ失敗の繰り返しだ!と痛感するものです。
たとえば、「アメリカを自分のほうに向かせるための、いつもの瀬戸際作戦」と十年一日のごとく繰り返すのは、それはそれで結構なのだけれども、何も説明したことにはならないことにそろそろ気づくべきです。
さて、いま深めなければならない問題意識という意味で、いくつかのポイントについて、ランダムにですが、あげておきたいと思います。
このブログの読者の皆さんと一緒に考えを深めていくための手掛かりという意味でもあります。
1.まず、国連の安保理決議をめざして、日本が「厳しい制裁」の取りまとめに奔走している様子が連日伝えられていますが、前回の「ミサイル発射」にかかわる議長声明でも、日本は米国から梯子をはずされた格好で、ふりあげたこぶしの下ろしどころに苦慮したことを教訓として事にあたっているのか。
2.北朝鮮は、なぜ、いま、核実験に踏み切ったのかをありきたりの「俗説」に陥ることなく、冷静かつ論理的に分析するとどうなるのか。とりわけ北朝鮮からは「予告的」な言明があり、アメリカのメディアは今月初めから核実験の予兆について報じていたこと、またアメリカのボズワース北朝鮮政策特別代表も今月はじめには北朝鮮の核実験に言及して、実験に踏み切るかもしれないが止めることはできないといった発言をしてたことをどう分析するのか。
3.オバマ政権になってから北朝鮮政策が定まらないのはなぜなのか。幾人かの「識者」の指摘にあるように、本当に政策の「優先順位」が低いのか。政権内に、あるいはアメリカの政治、経済にもっと別の要因が内在するということはないのか。
4.北朝鮮の体制内の『焦り』がいわれますが、実体はどういうものなのか。日本のメディアが言うように、金正日総書記の健康問題と後継者への権力継承問題が背景にあるという分析は正しいのかどうか。
5.「アメリカを自分のほうに向かせたい」という論調を否定するものではないが、少なくとも北朝鮮の「核危機」(核開発への危惧)が言われはじめた1990年代初頭以来の展開を見ると、北朝鮮は冷静、周到に米国政権、あるいは国際情勢について分析しているとかんがえるべきではないか。
6.国連の制裁強化をという動き自体は「否定できない」と言えるのだろうが、もっと慎重に見据えないと日本の政策判断を誤るおそれがなきにしもあらずではないか。
米国は日本に決議の「とりまとめ」をさせるという「流れ」だが、ここは「注意」が必要ではないか。
7.オバマ大統領が「核の廃絶」に向けて発言する(プラハ発言)中で、結局は五大国だけが核保有を「許される」というNPT体制の内包する矛盾と正面から向き合うことなしに北朝鮮の核を「非難する」だけでは問題の本質が見えなくなるのではないか。
8.さらに、イスラエル、インド、パキスタンなどNPTの枠組の「外」に存在する核保有国にかかわる、NPT体制の矛盾、ダブルスタンダードについて説得力ある論理と政策がなければ北朝鮮の核問題の解決はむずかしいのではないか。
8.つまるところ東アジアの非核化という問題にどう向き合うのかが、「核の傘」の下にある日本に問われてくるという、問題の構造をしっかり認識する必要があるのではないか。
9.ミサイル、核で揺さぶられる北東アジアおよび朝鮮半島の安全保障問題の根本的な解決に向かうためには、結局は、米朝関係の本質的な転換−朝鮮戦争、あるいは冷戦構造の歴史的な「清算」を避けて通ることができないことを浮き彫りにしていると言うべきで、そこへの認識が迫られてくるという問題の構造に戻っていく。
10.こうした本質的な問題(の構造)を突きつけてきているのがミ北朝鮮のサイル、核実験というものではないか。であるならば、本当に、もうこのあたりで、日本の(政府、メディア、そしてわれわれの)「思考」を変えなければ、東アジアの平和と安定には向かえないのではないか。
さて、これらの問題意識を集約して言うなら、めざすべきことは北朝鮮への制裁なのか、ガツンと一発いわしておく(突然の関西弁で恐縮ですが「いわす」とは懲らしめるとか叩きのめすといったニュアンスですが・・・)ことなのか?!ということです。
メディアも言論も皮相に北朝鮮を「いわす」ことに走っているのを前にして、ちょっと頭を冷やして考えると、めざすべき目標は「いわす」ことにあるのではなく、北朝鮮の核の放棄であり、核やミサイルの実験が不要になる、あるいは無意味になる状況をどうすれば創りだせるのかということだということは、赤子でもわかることだと思います。
(「いわす」ことが目的ではないと言うが、あんな奴らはいわしておかなければ気が済まない、あるいは許せないという人もいるでしょう。が、しかし相手は「いわされて」も、「いわされて」もとことんやるぞ!と言っているのです。さて共倒れするまで「いわし」つづける「根性」を示してでも「いわしたる!」というのでしょうか。つまりそれは戦争ということを意味するのですが、そういう人たちは真っ先に腹に爆弾でも巻いて北朝鮮に突っ込んでいこうとでもいうのでしょうか。冷静に考えればすぐわかる理屈です。)
さて、繰り返しです、ここまで簡単、平易な言葉で語ってきましたが、しかつめらしく言えば、外交のミッション(目標)とは何かという本質的な問題です。
その目標に対してどういう道筋をたどって実現していくのか!
そのことに対しての深い分析とそれにも勝る深い思索が、いま必要とされているのです。
さて、私たちはなにをめざそうとしているのでしょうか。
北朝鮮をガツンといわすことなのでしょうか。
それとも、東アジアが平和で安定した発展のできる環境をめざそうとするのでしょうか。
あるいは、オバマ大統領でさえ!語り始めた世界の、そして東アジアの核廃絶と平和をめざそうというのでしょうか。
もう一度くりかえしです。
われわれは何をめざすのか・・・。
なお、私が運営しているウエッブ(ホームページ)で今回の核実験について急きょインタビューのお願いをしてお引き受けいただいた企画があります。
来週にはそのインタビューができると思いますので、できるだけ早くウエッブに掲載するよう努力するつもりでいます。
しばしお待ちください。
2009年05月25日
また、ホームページのお知らせで恐縮ですが・・・
私が運営しているホームページに新たな企画「社会動態インタビュー」をスタートさせました。
歴史的に大きな転換点に立つ世界とどう向き合い、時代を切り拓いていくために何をどう見据え、考えるべきなのか、識者にお話をうかがっていく企画です。
いまはまだささやかな「営み」ですが、こうした企画を重ねながら、問題意識を深め、課題に立ち向かう力を広げていきたいと考えています。
インタビュー企画の第一回は、外務省アジア局長、中国大使などを歴任された中江要介さんです。
いま緊張とこう着状態に陥っている日朝関係をどうとらえ、国交正常化問題とどう向き合うべきなのかについてうかがいました。
日本が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と国交正常化交渉を始めたのは1991年のことでした。
以来18年になりますが、いまだに関係の正常化は果たされていません。
とりわけ2002年9月に小泉首相が訪朝し金正日国防委員長とのあいだで、日朝国交正常化の早期実現に向けて努力することを約束した「日朝平壌宣言」に調印しましたが、北朝鮮側が、日本人の拉致問題を認め謝罪したことで、日本国内の激しい反発を生みました。
加えて、2006年のミサイル発射、核実験に対して日本政府が北朝鮮への「制裁」に踏み切ったことで両国の関係は緊張を一層深める状況になりました。
そして今年4月の「ロケット発射問題」で日本政府が制裁措置をさらに強化し、一方の北朝鮮側も日本への非難を強めるなど、国交正常化への道はきわめて険しいものになっています。
こうした状況に、拉致問題も解決への道筋が見えず、核、ミサイル問題とあいまって、日本と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の関係を打開する手掛かりを見いだせずに過ぎています。
またアメリカのオバマ政権も、いまのところ、対北朝鮮政策を明確にするところに至らず、米朝関係も停滞、足踏み状態にあります。
しかし、米国発のいわゆる「金融危機」に端を発する世界的な経済危機が深刻さを増す中、東アジアにおける平和で安定した環境、協力と連携の重要性がますます増しています。
なによりも、冷戦構造を残す朝鮮半島に平和と協力の環境を実現し、未来に向けて東アジアの平和的な発展をめざすという、歴史的な課題にどう向き合うのかが、いまこそ問われていると考えます。
こうした問題意識に立って、中江さんにお話をうかがうことにしました。ページは以下の通りです。
http://www.shakaidotai.com/CCP.html
また、同じくホームページの小島正憲氏の「凝視中国」に新しいレポート「09年4月暴動情報」を掲載しました。
上記インタビューとレポートをぜひお読みください。
歴史的に大きな転換点に立つ世界とどう向き合い、時代を切り拓いていくために何をどう見据え、考えるべきなのか、識者にお話をうかがっていく企画です。
いまはまだささやかな「営み」ですが、こうした企画を重ねながら、問題意識を深め、課題に立ち向かう力を広げていきたいと考えています。
インタビュー企画の第一回は、外務省アジア局長、中国大使などを歴任された中江要介さんです。
いま緊張とこう着状態に陥っている日朝関係をどうとらえ、国交正常化問題とどう向き合うべきなのかについてうかがいました。
日本が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と国交正常化交渉を始めたのは1991年のことでした。
以来18年になりますが、いまだに関係の正常化は果たされていません。
とりわけ2002年9月に小泉首相が訪朝し金正日国防委員長とのあいだで、日朝国交正常化の早期実現に向けて努力することを約束した「日朝平壌宣言」に調印しましたが、北朝鮮側が、日本人の拉致問題を認め謝罪したことで、日本国内の激しい反発を生みました。
加えて、2006年のミサイル発射、核実験に対して日本政府が北朝鮮への「制裁」に踏み切ったことで両国の関係は緊張を一層深める状況になりました。
そして今年4月の「ロケット発射問題」で日本政府が制裁措置をさらに強化し、一方の北朝鮮側も日本への非難を強めるなど、国交正常化への道はきわめて険しいものになっています。
こうした状況に、拉致問題も解決への道筋が見えず、核、ミサイル問題とあいまって、日本と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の関係を打開する手掛かりを見いだせずに過ぎています。
またアメリカのオバマ政権も、いまのところ、対北朝鮮政策を明確にするところに至らず、米朝関係も停滞、足踏み状態にあります。
しかし、米国発のいわゆる「金融危機」に端を発する世界的な経済危機が深刻さを増す中、東アジアにおける平和で安定した環境、協力と連携の重要性がますます増しています。
なによりも、冷戦構造を残す朝鮮半島に平和と協力の環境を実現し、未来に向けて東アジアの平和的な発展をめざすという、歴史的な課題にどう向き合うのかが、いまこそ問われていると考えます。
こうした問題意識に立って、中江さんにお話をうかがうことにしました。ページは以下の通りです。
http://www.shakaidotai.com/CCP.html
また、同じくホームページの小島正憲氏の「凝視中国」に新しいレポート「09年4月暴動情報」を掲載しました。
上記インタビューとレポートをぜひお読みください。
2009年05月15日
お詫びです・・・
さまざまに追われる事情があってブログの更新ができませんでした。
何人もの方から、どうしているのか?!というお問い合わせと叱咤を頂戴しました。
ご心配をおかけして申し訳ありません。
あらためて詳しく書くことにしたいと思いますが、この間、ここ20年程の間に発行された書籍や雑誌をはじめとした刊行物、さまざまな研究会などのニュースレターなどなどを、読み返す機会を持ちました。
あらためて、ジャーナリズムが抱える課題、マスメディアに内在する問題について考えさせられるものでした。
同時に、研究者や識者の分析や予測をはじめとする「言説」あるいは言論の力と限界についても考えさせられました。
これらについては追々このページでも考えていきたいと思っています。
さてそこで、ホームページの更新情報を。
みなさんから大きな反響をいただいている小島正憲氏の中国ウオッチング、『凝視中国』のページに、きょう、一挙に三つのレポートを掲載しました。
1.上海モーターショーあれこれ
2.上海万博最新情報
3.義烏市の近況
この三本のレポートです。
豪華三本立て一挙公開!!という趣ですが、小島氏からは週に一回のペースでレポートを頂戴していました。
はじめに述べたもろもろの事情でウエッブへの掲載が遅れたということがあって一挙掲載ということになってしまいましたが、実に読みごたえのあるレポートに、Web用の編集をしながら唸ってしまいました。
画像も豊富なレポートですので、視覚的にもよく伝わってきます。
なお義烏市についてひとことだけ説明しておきますと、日本で通称「百均」(ひゃっきん)という言葉で呼ばれる「百円均一ショップ」で売られている商品の、いわば「ふるさと」が中国の義烏市です。しかし、今回の小島氏のレポートの視角はそこではありません。
実に興味深いレポートです。
内容はホームページで、どうぞ!!
サイトは
http://www.shakaidotai.com
です。
何人もの方から、どうしているのか?!というお問い合わせと叱咤を頂戴しました。
ご心配をおかけして申し訳ありません。
あらためて詳しく書くことにしたいと思いますが、この間、ここ20年程の間に発行された書籍や雑誌をはじめとした刊行物、さまざまな研究会などのニュースレターなどなどを、読み返す機会を持ちました。
あらためて、ジャーナリズムが抱える課題、マスメディアに内在する問題について考えさせられるものでした。
同時に、研究者や識者の分析や予測をはじめとする「言説」あるいは言論の力と限界についても考えさせられました。
これらについては追々このページでも考えていきたいと思っています。
さてそこで、ホームページの更新情報を。
みなさんから大きな反響をいただいている小島正憲氏の中国ウオッチング、『凝視中国』のページに、きょう、一挙に三つのレポートを掲載しました。
1.上海モーターショーあれこれ
2.上海万博最新情報
3.義烏市の近況
この三本のレポートです。
豪華三本立て一挙公開!!という趣ですが、小島氏からは週に一回のペースでレポートを頂戴していました。
はじめに述べたもろもろの事情でウエッブへの掲載が遅れたということがあって一挙掲載ということになってしまいましたが、実に読みごたえのあるレポートに、Web用の編集をしながら唸ってしまいました。
画像も豊富なレポートですので、視覚的にもよく伝わってきます。
なお義烏市についてひとことだけ説明しておきますと、日本で通称「百均」(ひゃっきん)という言葉で呼ばれる「百円均一ショップ」で売られている商品の、いわば「ふるさと」が中国の義烏市です。しかし、今回の小島氏のレポートの視角はそこではありません。
実に興味深いレポートです。
内容はホームページで、どうぞ!!
サイトは
http://www.shakaidotai.com
です。
2009年05月01日
小島正憲氏の最新中国レポート「多発・過激化あうる労働争議」
ホームページの「凝視中国」に小島正憲氏から届いた最新リポート「多発・過激化する労働争議」を掲載しました。
中国各地で雇用や労働条件をめぐって労働争議が起きていることはたびたび伝えられてきました。
とりわけ昨年からの、アメリカの金融危機に端を発する世界的な不況、経済危機を背景に広東省をはじめとする華南の輸出型産業で倒産や解雇などをめぐる争議が多発していることが報じられています。
しかし、その実態についてはなかなか見えてこないもどかしさがあります。
今回の小島氏のレポートは具体的な事例から、多発する労働争議の実態を詳らかに解析しています。
また、そこにとどまらず、中国に展開する日本企業とその経営者にむけて重要な問題を提起しているといえます。
今回も示唆に富む小島氏のレポートをお読みください。
Webサイトは、
http://www.shakaidotai.com です。
中国各地で雇用や労働条件をめぐって労働争議が起きていることはたびたび伝えられてきました。
とりわけ昨年からの、アメリカの金融危機に端を発する世界的な不況、経済危機を背景に広東省をはじめとする華南の輸出型産業で倒産や解雇などをめぐる争議が多発していることが報じられています。
しかし、その実態についてはなかなか見えてこないもどかしさがあります。
今回の小島氏のレポートは具体的な事例から、多発する労働争議の実態を詳らかに解析しています。
また、そこにとどまらず、中国に展開する日本企業とその経営者にむけて重要な問題を提起しているといえます。
今回も示唆に富む小島氏のレポートをお読みください。
Webサイトは、
http://www.shakaidotai.com です。
2009年04月20日
続「狂騒」の後に・・・
14日のブログ記事で、先日話を聴く機会があった中国の戦略問題専門家の話として、アメリカの対北朝鮮政策が一定していないという指摘があったことを書きました。
そこでとりわけ対照的だと感じるのは、このところ米国がキューバやベネゼエラのチャベス政権との関係改善の動きを見せていることです。
カリブ海のトリニダード・トバゴの首都ポートオブスペインで開かれた、キューバを除く中南米カリブ諸国と米国、カナダの計34カ国が参加する米州首脳会議で、オバマ米大統領は開幕式典の演説で「米国はキューバとの新たな始まりを求めている」と述べて、キューバとの関係改善への意欲を示しました。
半世紀にもわたる米国とキューバの敵対関係に変化の兆しが見えてきているわけです。
またこの会議では、これまで激しい反米の姿勢をとり続けてきたベネゼエラのチャベス大統領がオバマ大統領と握手し、関係修復の動きが注目されました。
このようにオバマ政権になってブッシュ政権にはなかった動きが見えてきたのですが、一方、朝鮮半島政策とりわけ対北朝鮮政策はというとボズワース氏を北朝鮮政策担当の特別代表に任命したことをおけば、かならずしも明確な方向性が示されないまま過ぎています。
ブッシュ政権末期からの「停滞」を考えるとすでにかなりの時間がズルズルと過ぎているというべきです。
米国の対北朝鮮政策がどのようなものなのかはっきり見えてこないということは、今回の「ミサイル発射問題」に深くかかわる要因として軽視できない問題だというべきです。
そこで、中国の「高位の戦略問題専門家」の話について、筆者の責任で、北朝鮮の核、ミサイルにかかわる部分について、もう少し補足しておきたいと思います。
以下は北朝鮮の核、ミサイルにかかわる話の要旨です。
「米国の対北朝鮮政策が一定しておらずブレがある。北朝鮮が何を信用し、どう対応すればいいのかわからないことが問題を複雑にしている。
米国の対北朝鮮政策の決定については国務省よりペンタゴン(国防総省)のほうがより強いとみるべきだ。
米国はコントロールされた緊張関係を持ちたいと望んでいる。
最良の道は6者協議をうまくやることだ。
米国が韓国に核を配置しない、日本にも核を配置しないと明確にすれば中国は北朝鮮を説得できるかもしれない。
しかし米国はつねに「あいまい政策」をとっている。
金正日総書記の心理についても考えてみる必要があるだろう。
北朝鮮は中国の改革開放政策に一定の留保を持っている。
かつては中国の改革開放政策は資本主義の道を歩むものだとしていた。金正日総書記が何度かの訪中を重ね、深センの視察をしてはじめてその考えを改めた。そして北朝鮮も少し開放した。しかし、韓国などの思想が入ってきて崩壊につながることを恐れている。
胡錦濤主席が訪朝した際かなりの額の経済支援を約束した。しかし戦争への備えが必要な状況が続くと経済政策部門にこれを投入しないだろう。韓国が「太陽政策」を続けていれば北朝鮮も開放政策をすすめやすかっただろうが・・・。
98年以来ミサイル発射、核実験といろいろあったが、結局米国との直接対話をすることになった。ここまでもってきた金正日の知恵というものを軽視すべきではない。あれだけの国土で2000万人の人を生存させるのはたやすいことではない。
いま国際社会は北朝鮮にひたすら悪罵を投げつけている。米国は意識的に北朝鮮を悪魔化している。しかし、国際関係というものは同じテーブルで話し合うことが必要だということを忘れてはならない。
核、ミサイル問題について言うなら、ミサイルと核が拡散するのは、米国が過去たえずミサイルと核で恫喝するという政策をとってきたからだ。
米国はイスラエルに核を与えた。インド、パキスタンの核実験にはじめは反対した。しかし終わったらまず米国が認めた。核は米国が他国を従わせるための道具となってきたのだ。
北朝鮮の核を放棄させようとするなら、まず北朝鮮の安全を保証しなければならない。
核兵器の全廃は世界の人民の願いだ。われわれ中国は最初に核を使用しない、核を持たない国を対象に使わないと言い続けてきている。中国の核政策ははっきりしている。米国やほかの国との核の軍拡競争はしない。いくつかの核保有国が同時に廃棄することが必要だ。そのためには多国間の協調がないとむずかしい。
金日成も金正日も国の安全を第一においてきた。
米国が北朝鮮に対するテロ支援国家の指定解除をしたが、その上に相互不可侵条約を結べば核、ミサイルの放棄を迫るということは理にかなっている。
中国が北朝鮮を説得しようとするならまず米国の北朝鮮政策を変えるよう説得しなければならない。しかしケ小平、江沢民、胡錦濤、いずれの中国指導者も米国を説得できなかった。
ではオバマ大統領を説得できるのかといえばそう簡単なことではないかもしれない。」
私のメモを元にした要旨ですが、読み返してみると重要な指摘が随所にあることに気づきます。
なによりも米国の対北朝鮮政策がどういうものになるのか、ここが重要なカギになっていることを見ておかなければならないと思います。
とりわけ米朝の二国間での話し合いの重要性が見えてきます。
そしてその場合のオバマ政権の「困難」ということにも目を凝らす必要があります。
「北朝鮮ロケット発射、米軍需産業にとっては朗報か」
これは北朝鮮のロケット発射を控えた今月5日、ロイターが配信した記事の見出しです。
そこでは「北朝鮮によるロケット発射は、オバマ政権が軍事費削減の方針を打ち出す中、米ロッキード・マーチンや米ボーイングなど軍需産業大手にとっては良いニュースかもしれない。」としています。
ブッシュ前政権の閣僚のうち唯一留任したゲーツ国防長官が今年1月、軍需企業に対して「9・11(同時多発テロ)で開いた国防費の蛇口は閉まりつつある」と通告したことや、オバマ大統領が国防総省に対して「冷戦時代の兵器への支出を抑える国防費の改革」を求めていることなどをとりあげながら、軍需産業を背景にした有力議員から「「北朝鮮の弾道ミサイル能力は米国や米軍、地域の友好国や同盟国にとって脅威だ」という警告が発せられていることが米国の軍需産業にとっては「朗報」となるかもしれないというわけです。
軍産複合体の存在が、オバマ政権が対北朝鮮政策を打ち出す際の「困難」となりうることを如実に示すものだといえるでしょう。
一方、16日の韓国聨合通信はワシントン発で注目すべき記事を伝えています。
それによると「北朝鮮が6カ国協議不参加を宣言し国際原子力機関(IAEA)検証チームなどに退去を命じたことと関連し、米国務省が先ごろ北朝鮮と直接対話を行い米政府の立場を伝えていたことがわかった。同省のウッド副報道官が16日の定例会見で明らかにした。北朝鮮の長距離ロケット発射で米朝間の緊張が高まっているにもかかわらず、双方の対話チャンネルが稼動していることになり、冷却期間が予想より短くなるかどうかが注目される。ただ、ウッド副報道官は、米朝接触に用いたチャンネルや対話の内容については具体的な言及を避けた。」というのです。
まさに中国の戦略問題専門家が指摘するように、米政権内部のペンタゴンと国務省のスタンスの違いを物語るニュースだといえます。
同時に、従来から見られた、朝鮮半島政策をめぐる米政権内の角逐、対立が依然として根深く存在していることに十分注意を払う必要があるということです。
さて、そこで注目すべき最新の「ニュース」です。
米国のシラキュース大学の公共政策系大学院マクスウェルスクールのスチュアート・トーソン教授が15日、ワシントンのコリア経済研究所(KEI)で開かれた講演会で「北朝鮮側から米国の科学者で構成された代表団をこの夏ピョンヤンへ送って欲しいとの要請を受けた」ことを明らかにしたというのです。
2001年以来北朝鮮の金策工業大学と交流を続けてきたトーソン教授は「今回の代表団の訪問目的は、北朝鮮と米国の科学者間に信頼関係を作り上げ、特にどの分野の科学交流が必要なのかを調べるため」だと説明し、「早ければ7月に代表団が北朝鮮を訪問できるよう準備中」と述べたということです。
この米代表団は、「1975年にノーベル生理医学賞を受賞したデビッド・ボルティモア博士が引率し、コンピュータと情報通信をはじめとする科学分野で活動する科学者数名と科学団体、大学関係者などで構成する予定」で、今回の訪問が実現すれば2002年に20人、2004年に22人の米国の科学者らが金策工業大を訪問して以来4年ぶりの大型の科学者訪問団となるということです。
こうした「水面下」での米朝両国の動きから目をはなすことができません。
さらに今回の北朝鮮外務省の「声明」の中で、6者協議に「二度と絶対に参加しないし、6者会談のいかなる合意にもこれ以上拘束されないであろう」と述べるとともに「われわれの主体的な原子力エネルギー工業構造を完備するため、自前の軽水炉発電所の建設を積極的に検討するであろう」と「軽水炉」に言及している点は、1994年のいわゆる「枠組み合意」とそれがたどった「その後の経緯」についてもう一度復習することを迫っているといえます。
結局、米朝の二国間交渉と、さらに「枠組み合意」がなぜ破綻したのかという地点に戻らざるをえないということになるのではないでしょうか。
この「枠組み合意」の崩壊については、前にも元ワシントンポスト記者のドン・オーバードーファー氏の記事にふれて少し書いたことがありますが、メディアの報道に内在する問題も含めて、あらためて考察してみたいと考えます。
それにしても、やはりここが問題の重要なカギになってきたかという感慨です。
そこでとりわけ対照的だと感じるのは、このところ米国がキューバやベネゼエラのチャベス政権との関係改善の動きを見せていることです。
カリブ海のトリニダード・トバゴの首都ポートオブスペインで開かれた、キューバを除く中南米カリブ諸国と米国、カナダの計34カ国が参加する米州首脳会議で、オバマ米大統領は開幕式典の演説で「米国はキューバとの新たな始まりを求めている」と述べて、キューバとの関係改善への意欲を示しました。
半世紀にもわたる米国とキューバの敵対関係に変化の兆しが見えてきているわけです。
またこの会議では、これまで激しい反米の姿勢をとり続けてきたベネゼエラのチャベス大統領がオバマ大統領と握手し、関係修復の動きが注目されました。
このようにオバマ政権になってブッシュ政権にはなかった動きが見えてきたのですが、一方、朝鮮半島政策とりわけ対北朝鮮政策はというとボズワース氏を北朝鮮政策担当の特別代表に任命したことをおけば、かならずしも明確な方向性が示されないまま過ぎています。
ブッシュ政権末期からの「停滞」を考えるとすでにかなりの時間がズルズルと過ぎているというべきです。
米国の対北朝鮮政策がどのようなものなのかはっきり見えてこないということは、今回の「ミサイル発射問題」に深くかかわる要因として軽視できない問題だというべきです。
そこで、中国の「高位の戦略問題専門家」の話について、筆者の責任で、北朝鮮の核、ミサイルにかかわる部分について、もう少し補足しておきたいと思います。
以下は北朝鮮の核、ミサイルにかかわる話の要旨です。
「米国の対北朝鮮政策が一定しておらずブレがある。北朝鮮が何を信用し、どう対応すればいいのかわからないことが問題を複雑にしている。
米国の対北朝鮮政策の決定については国務省よりペンタゴン(国防総省)のほうがより強いとみるべきだ。
米国はコントロールされた緊張関係を持ちたいと望んでいる。
最良の道は6者協議をうまくやることだ。
米国が韓国に核を配置しない、日本にも核を配置しないと明確にすれば中国は北朝鮮を説得できるかもしれない。
しかし米国はつねに「あいまい政策」をとっている。
金正日総書記の心理についても考えてみる必要があるだろう。
北朝鮮は中国の改革開放政策に一定の留保を持っている。
かつては中国の改革開放政策は資本主義の道を歩むものだとしていた。金正日総書記が何度かの訪中を重ね、深センの視察をしてはじめてその考えを改めた。そして北朝鮮も少し開放した。しかし、韓国などの思想が入ってきて崩壊につながることを恐れている。
胡錦濤主席が訪朝した際かなりの額の経済支援を約束した。しかし戦争への備えが必要な状況が続くと経済政策部門にこれを投入しないだろう。韓国が「太陽政策」を続けていれば北朝鮮も開放政策をすすめやすかっただろうが・・・。
98年以来ミサイル発射、核実験といろいろあったが、結局米国との直接対話をすることになった。ここまでもってきた金正日の知恵というものを軽視すべきではない。あれだけの国土で2000万人の人を生存させるのはたやすいことではない。
いま国際社会は北朝鮮にひたすら悪罵を投げつけている。米国は意識的に北朝鮮を悪魔化している。しかし、国際関係というものは同じテーブルで話し合うことが必要だということを忘れてはならない。
核、ミサイル問題について言うなら、ミサイルと核が拡散するのは、米国が過去たえずミサイルと核で恫喝するという政策をとってきたからだ。
米国はイスラエルに核を与えた。インド、パキスタンの核実験にはじめは反対した。しかし終わったらまず米国が認めた。核は米国が他国を従わせるための道具となってきたのだ。
北朝鮮の核を放棄させようとするなら、まず北朝鮮の安全を保証しなければならない。
核兵器の全廃は世界の人民の願いだ。われわれ中国は最初に核を使用しない、核を持たない国を対象に使わないと言い続けてきている。中国の核政策ははっきりしている。米国やほかの国との核の軍拡競争はしない。いくつかの核保有国が同時に廃棄することが必要だ。そのためには多国間の協調がないとむずかしい。
金日成も金正日も国の安全を第一においてきた。
米国が北朝鮮に対するテロ支援国家の指定解除をしたが、その上に相互不可侵条約を結べば核、ミサイルの放棄を迫るということは理にかなっている。
中国が北朝鮮を説得しようとするならまず米国の北朝鮮政策を変えるよう説得しなければならない。しかしケ小平、江沢民、胡錦濤、いずれの中国指導者も米国を説得できなかった。
ではオバマ大統領を説得できるのかといえばそう簡単なことではないかもしれない。」
私のメモを元にした要旨ですが、読み返してみると重要な指摘が随所にあることに気づきます。
なによりも米国の対北朝鮮政策がどういうものになるのか、ここが重要なカギになっていることを見ておかなければならないと思います。
とりわけ米朝の二国間での話し合いの重要性が見えてきます。
そしてその場合のオバマ政権の「困難」ということにも目を凝らす必要があります。
「北朝鮮ロケット発射、米軍需産業にとっては朗報か」
これは北朝鮮のロケット発射を控えた今月5日、ロイターが配信した記事の見出しです。
そこでは「北朝鮮によるロケット発射は、オバマ政権が軍事費削減の方針を打ち出す中、米ロッキード・マーチンや米ボーイングなど軍需産業大手にとっては良いニュースかもしれない。」としています。
ブッシュ前政権の閣僚のうち唯一留任したゲーツ国防長官が今年1月、軍需企業に対して「9・11(同時多発テロ)で開いた国防費の蛇口は閉まりつつある」と通告したことや、オバマ大統領が国防総省に対して「冷戦時代の兵器への支出を抑える国防費の改革」を求めていることなどをとりあげながら、軍需産業を背景にした有力議員から「「北朝鮮の弾道ミサイル能力は米国や米軍、地域の友好国や同盟国にとって脅威だ」という警告が発せられていることが米国の軍需産業にとっては「朗報」となるかもしれないというわけです。
軍産複合体の存在が、オバマ政権が対北朝鮮政策を打ち出す際の「困難」となりうることを如実に示すものだといえるでしょう。
一方、16日の韓国聨合通信はワシントン発で注目すべき記事を伝えています。
それによると「北朝鮮が6カ国協議不参加を宣言し国際原子力機関(IAEA)検証チームなどに退去を命じたことと関連し、米国務省が先ごろ北朝鮮と直接対話を行い米政府の立場を伝えていたことがわかった。同省のウッド副報道官が16日の定例会見で明らかにした。北朝鮮の長距離ロケット発射で米朝間の緊張が高まっているにもかかわらず、双方の対話チャンネルが稼動していることになり、冷却期間が予想より短くなるかどうかが注目される。ただ、ウッド副報道官は、米朝接触に用いたチャンネルや対話の内容については具体的な言及を避けた。」というのです。
まさに中国の戦略問題専門家が指摘するように、米政権内部のペンタゴンと国務省のスタンスの違いを物語るニュースだといえます。
同時に、従来から見られた、朝鮮半島政策をめぐる米政権内の角逐、対立が依然として根深く存在していることに十分注意を払う必要があるということです。
さて、そこで注目すべき最新の「ニュース」です。
米国のシラキュース大学の公共政策系大学院マクスウェルスクールのスチュアート・トーソン教授が15日、ワシントンのコリア経済研究所(KEI)で開かれた講演会で「北朝鮮側から米国の科学者で構成された代表団をこの夏ピョンヤンへ送って欲しいとの要請を受けた」ことを明らかにしたというのです。
2001年以来北朝鮮の金策工業大学と交流を続けてきたトーソン教授は「今回の代表団の訪問目的は、北朝鮮と米国の科学者間に信頼関係を作り上げ、特にどの分野の科学交流が必要なのかを調べるため」だと説明し、「早ければ7月に代表団が北朝鮮を訪問できるよう準備中」と述べたということです。
この米代表団は、「1975年にノーベル生理医学賞を受賞したデビッド・ボルティモア博士が引率し、コンピュータと情報通信をはじめとする科学分野で活動する科学者数名と科学団体、大学関係者などで構成する予定」で、今回の訪問が実現すれば2002年に20人、2004年に22人の米国の科学者らが金策工業大を訪問して以来4年ぶりの大型の科学者訪問団となるということです。
こうした「水面下」での米朝両国の動きから目をはなすことができません。
さらに今回の北朝鮮外務省の「声明」の中で、6者協議に「二度と絶対に参加しないし、6者会談のいかなる合意にもこれ以上拘束されないであろう」と述べるとともに「われわれの主体的な原子力エネルギー工業構造を完備するため、自前の軽水炉発電所の建設を積極的に検討するであろう」と「軽水炉」に言及している点は、1994年のいわゆる「枠組み合意」とそれがたどった「その後の経緯」についてもう一度復習することを迫っているといえます。
結局、米朝の二国間交渉と、さらに「枠組み合意」がなぜ破綻したのかという地点に戻らざるをえないということになるのではないでしょうか。
この「枠組み合意」の崩壊については、前にも元ワシントンポスト記者のドン・オーバードーファー氏の記事にふれて少し書いたことがありますが、メディアの報道に内在する問題も含めて、あらためて考察してみたいと考えます。
それにしても、やはりここが問題の重要なカギになってきたかという感慨です。
2009年04月19日
小島正憲氏の「凝視中国」更新
ホームページ掲載の小島正憲氏の「凝視中国」の最新レポート「09年3月:暴動情報検証」が届きました。
小島氏のレポートは、事件の現場や庶民の生活の場に赴いて取材し、自身の目で見て肌を通して感じた実態から中国社会の動向を凝視する、氏独自の「分析手法」によるものだといえます。
読んでいると実に興味深い中国社会の「現在」(いま)が見えてきます。とともに、報道などで伝えられる「暴動情報」などはそのっ背後の奥深くに分け入って検証してみなければ本当の「中国社会の動態」はつかめないということも痛感します。
ぜひご一読ください。
ホームページは
http://www.shakaidotai.com
です。
小島氏のレポートは、事件の現場や庶民の生活の場に赴いて取材し、自身の目で見て肌を通して感じた実態から中国社会の動向を凝視する、氏独自の「分析手法」によるものだといえます。
読んでいると実に興味深い中国社会の「現在」(いま)が見えてきます。とともに、報道などで伝えられる「暴動情報」などはそのっ背後の奥深くに分け入って検証してみなければ本当の「中国社会の動態」はつかめないということも痛感します。
ぜひご一読ください。
ホームページは
http://www.shakaidotai.com
です。
2009年04月17日
「狂騒の後に・・・」、読者から寄せられた反響から
北朝鮮の「ミサイル発射問題」について書いた14日の記事に感想や反響をいただいています。
以下は、以前からこのブログを熱心に読んで感想や意見を寄せてくださっていた、茨城県にお住まいの読者からのメールです。
ブログを介して双方向性の中で問題を深めていくという意味から、今回いただいた長文のコメントを紹介させていただくことにしました。
なお論旨を損なわないように気をつけながら、個人にかかわる部分など、一部割愛させていただいたところもあります。ご理解ください。
「北朝鮮ミサイル発射」に関する論考、読ませていただきました。
まさにわが意を得たりの内容でした。私ら一般の者が接するのは新聞、テレビ、雑誌ぐらいの二次情報、三次情報しかありませんが、今回のような騒ぎは嫌でも耳目をそばだたせてくれます。
前の不審船の時もそうでしたが、今回も日本の政治、行政、報道、社会全体の反応に至るまで子供じみた未熟さを露呈してしまいました。
それこそ国家としての安全にかかわるところを全世界に暴露してしまったように思います。
「誤報」だけのことではなく、一連の流れの中で、日本という国は、周辺でどのような事態を作り出し、どのような情報を流せば自分たちの意図するままに国論がまとめられ動いてくれるかがアメリカによって、いいように操られ、しっかりシミュレーションされたように思います。
この間、日本での「ばか騒ぎ」をしっかり観察したほかの国々もいろんなことを汲み取ったのではないでしょうか。
3日もたてば話題が古くなって忘れられてしまう国民性に仕立て上げたのは誰でしょうか。
問題が、指摘されるとおり、朝鮮戦争がキチンと終結していない、日本も植民地にした後始末ができていないというところにそもそもの出発点があることは全くと言っていいほど論じられませんね。
以前だと、深夜の討論番組などテレビでも時折やっていましたし、少数派ですが、そういうことを指摘される方々の出番もあったのですが、いまはもう、「ミサイル発射」もただの一過性の「話題」にすぎなくなっています。
まして、米朝関係、日朝関係を根源的に捉えなおそうなどというマスコミの論調など皆無です。
それこそがお先真っ暗な状況を作り出しているのではないかと思います。
今回の事態では一部の防衛族議員、防衛庁、自衛隊その他軍事に前のめりになりがちな面々にとってはありがたいことだったでしょうね。田母神さんはじめよくテレビに出る人たちにとって血沸き肉踊る事態だったのではないでしょうか。
その反面、ロケット工学の専門家がマスコミに出て、科学的な情報を伝えるという場面がほとんどありませんでした。
片方では根拠も示さず日本に落下する可能性はほとんどないと報じられ、もう一方では迎撃用のミサイルが白昼堂々と移動し、配備され、各自治体に至るまで緊急体制が敷かれ、何と大阪府までが真新しい制服の職員が事態に備えているのがテレビに映し出されていやが上にも大変なことになるという心配を煽る内容の報道が目につきました。そうでないものは、数日前の「朝日」で、軌道をみればミサイルか人工衛星かはすぐわかるとの特集記事を目にしたぐらいしかありませんでした。NHKでは自衛隊OBとかの人物が盛んに出て、よくわからない解説をしていました。
でも、本当に伝えるべきは、ロケットの専門家が、失敗するとすればどの段階の確率が多いのか、軌道を描いていく飛行体が軌道を外れて異常な方向へ飛んでいく可能性はあるのか、切り離しに失敗する可能性はどの程度なのか。過去にはどんな事例があるのかなどを交えて、きちんと解説がなされるべきではなかったかと思います。
意図してか、意図せずかは解りませんが、落ちてくる可能性は極めて低いという指摘が、ほんの少しですが、あったほかは圧倒的に大変だ、大変だの報道に終始しました。
考えてみると今回の事態、発端は米韓合同軍事演習だったような気がします。毎度のことですがほとんどのマスコミでは、注目するほどの取り上げ方はされませんでしたけれど。
日本の政治家もマスコミもわれわれ一般人の頭の中も、「アメリカは世界中で何をやっても許される」という無言の合意が、知らず知らずに形成されているような気がします。
荒唐無稽な話ですが、たとえばメキシコと中国がアメリカの国境地帯で上陸演習をやったらどうなるでしょう。サンフランシスコ沖を領空すれすれに中国空軍機が飛んで、強制着陸させられたら日本の政府、マスコミ、言論界はどうするでしょう。
アメリカと一緒に中国に攻め込むべし一色に塗りあげられてしまうのではないでしょうか。
同じ事をアメリカが太平洋をまたいで対岸までわざわざ出向いてやっても誰も何も言わない。私たちの頭の中までいつの間にかそれを不思議とも思わないように出来上がってしまっているんですね。
アメリカは、本気で北朝鮮と関係正常化する気はないのではないか。最近ふと、そんな事を考えるようになりました。
アメリカにとっては、東北アジアの各国がなんとなくいがみ合っていて不安定であること、それこそがアメリカの世界戦略上必要なことなのでしょう。北朝鮮と平和条約を結び、韓国と北朝鮮の関係が前進し、日本と北朝鮮も正常化する、そして、アメリカの軍事プレゼンスが要らなくなる、それはアメリカの産軍複合体にとっては一番避けたいことでしょうが、そんな時がやってくるのか疑問に思えます。
テロ支援国家からの解除で前進したかに見える米朝関係がまたもたつき始めたのも、元をただせばその辺に原因があるように思えます。
以上が、長文のメールで寄せられた、14日のブログ記事へのコメントです。
このように、ブログの記事を介して論点や議論が深まっていくことを期待したいと考えます。
その意味でも、熱のこもったコメントをいただいたことに心から感謝したいと思います。
なお、重ねてですが、一部割愛したところがあります。
ご理解を。
今回のコメントにもかかわる問題について、「狂騒の後で・・・」に続く補足、続編を書かなければと考えています。
以下は、以前からこのブログを熱心に読んで感想や意見を寄せてくださっていた、茨城県にお住まいの読者からのメールです。
ブログを介して双方向性の中で問題を深めていくという意味から、今回いただいた長文のコメントを紹介させていただくことにしました。
なお論旨を損なわないように気をつけながら、個人にかかわる部分など、一部割愛させていただいたところもあります。ご理解ください。
「北朝鮮ミサイル発射」に関する論考、読ませていただきました。
まさにわが意を得たりの内容でした。私ら一般の者が接するのは新聞、テレビ、雑誌ぐらいの二次情報、三次情報しかありませんが、今回のような騒ぎは嫌でも耳目をそばだたせてくれます。
前の不審船の時もそうでしたが、今回も日本の政治、行政、報道、社会全体の反応に至るまで子供じみた未熟さを露呈してしまいました。
それこそ国家としての安全にかかわるところを全世界に暴露してしまったように思います。
「誤報」だけのことではなく、一連の流れの中で、日本という国は、周辺でどのような事態を作り出し、どのような情報を流せば自分たちの意図するままに国論がまとめられ動いてくれるかがアメリカによって、いいように操られ、しっかりシミュレーションされたように思います。
この間、日本での「ばか騒ぎ」をしっかり観察したほかの国々もいろんなことを汲み取ったのではないでしょうか。
3日もたてば話題が古くなって忘れられてしまう国民性に仕立て上げたのは誰でしょうか。
問題が、指摘されるとおり、朝鮮戦争がキチンと終結していない、日本も植民地にした後始末ができていないというところにそもそもの出発点があることは全くと言っていいほど論じられませんね。
以前だと、深夜の討論番組などテレビでも時折やっていましたし、少数派ですが、そういうことを指摘される方々の出番もあったのですが、いまはもう、「ミサイル発射」もただの一過性の「話題」にすぎなくなっています。
まして、米朝関係、日朝関係を根源的に捉えなおそうなどというマスコミの論調など皆無です。
それこそがお先真っ暗な状況を作り出しているのではないかと思います。
今回の事態では一部の防衛族議員、防衛庁、自衛隊その他軍事に前のめりになりがちな面々にとってはありがたいことだったでしょうね。田母神さんはじめよくテレビに出る人たちにとって血沸き肉踊る事態だったのではないでしょうか。
その反面、ロケット工学の専門家がマスコミに出て、科学的な情報を伝えるという場面がほとんどありませんでした。
片方では根拠も示さず日本に落下する可能性はほとんどないと報じられ、もう一方では迎撃用のミサイルが白昼堂々と移動し、配備され、各自治体に至るまで緊急体制が敷かれ、何と大阪府までが真新しい制服の職員が事態に備えているのがテレビに映し出されていやが上にも大変なことになるという心配を煽る内容の報道が目につきました。そうでないものは、数日前の「朝日」で、軌道をみればミサイルか人工衛星かはすぐわかるとの特集記事を目にしたぐらいしかありませんでした。NHKでは自衛隊OBとかの人物が盛んに出て、よくわからない解説をしていました。
でも、本当に伝えるべきは、ロケットの専門家が、失敗するとすればどの段階の確率が多いのか、軌道を描いていく飛行体が軌道を外れて異常な方向へ飛んでいく可能性はあるのか、切り離しに失敗する可能性はどの程度なのか。過去にはどんな事例があるのかなどを交えて、きちんと解説がなされるべきではなかったかと思います。
意図してか、意図せずかは解りませんが、落ちてくる可能性は極めて低いという指摘が、ほんの少しですが、あったほかは圧倒的に大変だ、大変だの報道に終始しました。
考えてみると今回の事態、発端は米韓合同軍事演習だったような気がします。毎度のことですがほとんどのマスコミでは、注目するほどの取り上げ方はされませんでしたけれど。
日本の政治家もマスコミもわれわれ一般人の頭の中も、「アメリカは世界中で何をやっても許される」という無言の合意が、知らず知らずに形成されているような気がします。
荒唐無稽な話ですが、たとえばメキシコと中国がアメリカの国境地帯で上陸演習をやったらどうなるでしょう。サンフランシスコ沖を領空すれすれに中国空軍機が飛んで、強制着陸させられたら日本の政府、マスコミ、言論界はどうするでしょう。
アメリカと一緒に中国に攻め込むべし一色に塗りあげられてしまうのではないでしょうか。
同じ事をアメリカが太平洋をまたいで対岸までわざわざ出向いてやっても誰も何も言わない。私たちの頭の中までいつの間にかそれを不思議とも思わないように出来上がってしまっているんですね。
アメリカは、本気で北朝鮮と関係正常化する気はないのではないか。最近ふと、そんな事を考えるようになりました。
アメリカにとっては、東北アジアの各国がなんとなくいがみ合っていて不安定であること、それこそがアメリカの世界戦略上必要なことなのでしょう。北朝鮮と平和条約を結び、韓国と北朝鮮の関係が前進し、日本と北朝鮮も正常化する、そして、アメリカの軍事プレゼンスが要らなくなる、それはアメリカの産軍複合体にとっては一番避けたいことでしょうが、そんな時がやってくるのか疑問に思えます。
テロ支援国家からの解除で前進したかに見える米朝関係がまたもたつき始めたのも、元をただせばその辺に原因があるように思えます。
以上が、長文のメールで寄せられた、14日のブログ記事へのコメントです。
このように、ブログの記事を介して論点や議論が深まっていくことを期待したいと考えます。
その意味でも、熱のこもったコメントをいただいたことに心から感謝したいと思います。
なお、重ねてですが、一部割愛したところがあります。
ご理解を。
今回のコメントにもかかわる問題について、「狂騒の後で・・・」に続く補足、続編を書かなければと考えています。
2009年04月14日
狂騒の後に・・・
北朝鮮の「ミサイル発射」問題はその後、発射の際の映像と金正日総書記の「動く映像」が公開されて7日夜のニュースから8日朝のテレビの「ワイドショー」をにぎわせました。
発射前、そして発射の当日(5日・日曜日)の異様なまでの「狂騒」は幾分治まってきましたが、今度は、9日にひらかれた最高人民会議第12期第1回会議で金正日総書記が国防委員会委員長に3選され、加えて国防委員会の委員枠を倍増し、金正日総書記の義弟、張成沢労働党中央委部長が国防委員に選ばれたことが大きなニュースになりました。
同時に、会議に出席した金正日総書記の映像が朝鮮中央テレビで流れたことから、テレビ各局では、朝鮮半島問題から医学までのさまざまな専門家が映像を見ながら「おっ、歩いてる!」とか「足を引きずっていて不自然だ」、「ページをめくった!左手が動く」「いやまだ不自由だ」などとあれこれ喧しくコメントするというありさまで、なんとも騒がしいかぎりでした。
そして注目の国連の安全保障理事会は、米国が、新たな「決議」をめざすのではなく、報道機関向け「声明」との中間に当たる「議長声明」の素案を提示したことで、結局、ミサイルか人工衛星かの判断を示さず「発射を非難する」とともに過去の「安保理決議1718に違反する」こと、「北朝鮮がさらなる発射を行わないよう要求する」とした内容の「議長声明」で決着することになりました。
しかし、オバマ大統領の「強硬」なことばとは裏腹な米国の「変わり身」に、梯子をはずされた格好の日本は、振り上げたこぶしの落としどころに苦慮するという局面に立たされました。
「誤探知」という奇妙な言葉まで生み出して、てんやわんやの大騒ぎをしたことは論外としても、人工衛星は載っていたのか、成功だったのか失敗だったのかなど、メディアでは依然として本質的ではないあれこれが繰り返されています。
しかし、このあたりでそろそろ「狂騒」に終止符を打って、見据えるべき問題のありかを冷静に考えてみるべきではないでしょうか。
そこでまず、「発射」の当日に戻るのですが、この日私は、朝から韓国の聨合通信に注目して、刻々伝えられる情報の流れを注視していました。
日本で「発射か?」という速報が流れる前に聨合通信はいち早くその情報を伝えたので驚きました。
この日朝から聨合通信が伝えた関連ニュースの流れを時系列で少しばかりメモしてみます。
これを見ていた発射当日、5日午前中の気持ちを率直に言うと、実に興味深いものが見えるものだなー・・・というものでした。
09:28 政府が北朝鮮滞在人員最小化、南北関係緊張に備え
(注、この時点でも北朝鮮に韓国の「人員」が滞在していることに注目するべきではないでしょうか。聨合通信によれば「統一部は、北朝鮮が予告したロケット発射期間(4日〜8日)初日の同日、平壌に交流協力などの事業で滞在していた韓国人81人が、航空便を利用し中国の北京、瀋陽などに移ったと明らかにした。平壌には当面、長期にわたり常駐してきた平和自動車関係者1人だけが残る。また、この日は京義線陸路を通じ161人が訪朝し、528人が韓国側に戻った。3日夜まで906人だった開城工業団地滞在者数は、4日午後7時現在、540人となった。北朝鮮地域には現在、金剛山地域滞在者41人を含め582人の韓国民が滞在していることになる。」と伝えています。)
10:01 「衛星打ち上げ」予告のなか平壌は平穏、訪朝団体
(注、先月末に訪朝し、韓国統一部の勧告を受け日程を前倒しして4日韓国に戻った韓国の北朝鮮支援団体「ウリ民族相互助け運動」関係者が「平壌市内は普段と特に変わらず、静かだったと」語るとともに、韓国に戻る際に北朝鮮側関係者らが「ここに来てみて分かったと思うが、われわれが招請状を送ったのは身辺安全を保障し不便のないよう万全を期すという意味。統一部に心配や懸念は必要ないと必ず伝えてほしい」と話したという。また同じ期間に訪朝していた「キョレマル(民族語)大辞典」韓国側編纂(へんさん)委員会関係者も「街の雰囲気に特に異常な動向はなく、人工衛星打ち上げに直接言及したり示唆したりするような看板も見当たらなかった。市内の警備が強化されたり、軍服姿の人物が多かったり軍隊が移動するということもなかった」と話したという。北朝鮮側関係者らは「宇宙の平和的利用は国家の自主権に属する事案だが、特に日本が、なぜ問題視するのか分からない」という話をしていたと伝えた。)
10:15 金総書記が平壌大劇場を視察、朝鮮中央通信(写真も配信)
10:35 北ロケット発射場に頻繁な車両往来、発射可能性注視
10:51 北朝鮮ロケットの覆い外される、発射の兆候確認
10:56 統一部長官「国民の安全に異常ないよう対処」(写真も配信)
11:14 外交通商部ロケット対策会議、発射後の政府措置検討
11:28 青瓦台が緊急NSC招集、ロケット発射切迫と判断(写真も配信)
11:38 「政府当局者は5日、北朝鮮が長距離ロケットを発射したと伝えた。」(速報)
11:49「青瓦台(大統領府)は5日、北朝鮮が午前11時30分15秒、長距離ロケットを発射したと発表した。」
12:05 政府当局者「北朝鮮ロケットは人工衛星と確認」
12:29 北朝鮮挑発に断固・毅然として対応、青瓦台 (写真も配信)
13:10 北ロケットに政府声明「安保理決議違反の挑発行為」(写真も配信)
13:29 「北朝鮮ロケット発射政府公式声明全文」配信
13:52 軍が危機管理委員会を稼動、警戒態勢を強化
14:21 政府がPSI参加判断先送り、北朝鮮の反発考慮
14:53 国民も衝撃・懸念・・・、政府には落ち着いた対応求める
15:05 北ロケットは「宇宙発射体」、衛星搭載の可能性高い
15:19 国防部「韓米合同のミサイル戦力増強を検討」
15:33 国連北朝鮮代表部は無反応、韓国は非常勤務体制
15:43 オバマ米大統領が声明「北ロケットは挑発行為」
15:56 青瓦台「衛星」判断留保、韓米協議経て公式発表
16:02 国連安保理あす早朝緊急招集、日本の招集要請受け
16:16 韓米は北ロケット安保理決議違反で一致、駐韓米大使
16:37 朝鮮中央通信「人工衛星の軌道進入に成功」
17:18 柳外交通商部長官、米中日の外相と電話協議
17:57 柳明桓長官「人工衛星打ち上げを試みたもよう」
18:31 南北関係状況の安定管理と国民安全を優先、統一部
18:56 権哲賢駐日大使と河村官房長官、対北朝鮮で協力確認
19:37 李大統領は冷静対処を強調、NSC約5時間に及ぶ
19:44 北朝鮮の発射体が軌道進入に失敗、政府当局者
20:01 国防部長官「北朝鮮の衛星、軌道進入失敗と把握」
「国防部の李相憙(イ・サンヒ)長官は5日、北朝鮮の長距離ロケット発射について、『これまでの判断では、(ロケットの)1〜3段目がすべて海上に墜落した』『いかなる物体も軌道に進入できなかったと判断している』と述べた。緊急招集された国会国防委員会全体会議での発言。衛星が軌道進入に失敗したものと把握されるとしながら、韓米は引き続き分析を行うと述べた。」
20:56 「国防部の李相憙(イ・サンヒ)長官は5日、北朝鮮の長距離ロケット発射について、『いかなる物体も軌道に進入できなかったと判断している』と述べ、地球軌道への進入に失敗したことを強く示唆した。」
この日夜までに聨合通信が伝えた関連ニュースの流れです。
日本での「大騒動」あるいはメディアの伝え方と比べてみるときわめて冷静であることがわかります。
また、あれだけ北朝鮮と「緊張関係」にある李明博政権の対応が実に冷静かつ沈着であることが見えてきます。
そして、私がなによりも注目したのは、発射の「兆候」のキャッチがなぜこれほど早かったのかという点です。
発射直前の11時28分に青瓦台(大統領府)はNSC、国家安全保障会議を招集しています。わたしはこの時、ある推測を持ったのですが、後にそれを裏付ける報道がなされることになりました。以下は読売新聞の報道です。
【ソウル=伊藤彰浩】北朝鮮の「人工衛星打ち上げ」名目での長距離弾道ミサイル発射について、韓国の情報機関、国家情報院は6日、北朝鮮が米中露3か国に対し、おおよその発射時刻を事前に伝えていたことを明らかにした。
聯合ニュースが、国会情報委員会の非公開懇談に出席した議員の話として伝えた。
北朝鮮が日韓両国に対する軽視姿勢を鮮明にするのが狙いだったとみられる。また、この議員は、韓国に対しては米国が情報を伝えた模様だと述べたという。
聯合電によると、北朝鮮は、4日から8日の午前11時から午後4時の間に発射すると、国際海事機関(IMO)などに事前通告していたが、米中露への通報内容は、より詳細なものだった。李明博大統領はミサイル発射直前の5日午前、国家安全保障会議(NSC)を招集したが、これは米国から情報提供があったためとみられる。
(2009年4月6日13時26分 )
つまり、アメリカ、中国、ロシアに対して北朝鮮は「事前通告」をしていて、韓国にはアメリカから「情報提供」がなされていたということです。それもかなりきめ細かく情報が提供されていたことがうかがえます。
日本にはどうだったのか、日本のメディアが「究明」もしくは「解明」するつもりがあるのかどうかも含めて、わかりません。
しかし、「発射、その後」を考えて行く時、これは無視できない、重要な問題だと思います。
知らされていたかどうかという「面子」の問題を云々しているのではなく、米、中、ロと日本の関係がどういうものかを考える材料として重要だと思うのです。
とりわけ国連の安保理事会での米国の「豹変ぶり」や各常任理事国の「駆け引き」を目の当たりにすると、日本のおかれた位置がどのようなものか、いわずもがなと言うべきでしょう。
ところで、今回の「ミサイル発射問題」でまたもや、「独自の北朝鮮攻撃論」が湧き上がってきました。
「北朝鮮の脅威に見合った抑止力を考えるのは与党の政治家の責務だ。日本独自で北朝鮮の基地を攻撃できる能力について議論すべき・・・」というのです。
国際問題通だとかあるいは安全保障問題に通じているなどといううたい文句でメディアにしばしば登場する議員の発言です。
テレビで「北朝鮮にガツンとやれないのか!」と叫ぶ「キャスター」や「怖いですねぇー」と顔を曇らせてみせる、「キャスター」と「大学特任教授」を肩書きとする女性などはさておくとしても、こうした軽薄な論調がいとも簡単に湧き上がる状況の危うさに言葉を失うばかりでした。
国防族の重鎮、山崎拓元自民党副総裁が「ミサイルが飛んでくるなら発射基地をたたこうとか、むこうが核武装するならこちらもという意見は人類を破滅に導く議論だ」とクギ刺したという報道や、防衛庁長官、防衛大臣を歴任した久間章生衆議院議員が「北朝鮮がミサイルの実験をやりたがっているのはよくわかっていたことです。でも日本にミサイルを撃ち込むような、緊迫した情勢だったかどうか。それがあたかも日本に向けて発射するかのような雰囲気になってしまった。どんなに考えても今、北朝鮮が日本めがけて撃つはずがありませんから」(「朝日」4月11日朝刊)と語るのを目にして、こうした至極まっ当な言説が常に「その後」にしか出てこない問題はあるにせよ、言論の復元力に少しはホッとするものがありました。
ただし、「日本中がこんな騒ぎになると思っていましたか」という問いに「騒ぎにしたのは、おたくら(マスコミ)でしょう。・・・」と切り返えされて「新聞もテレビも、国民の関心事だから、取り上げたのですが」と言い訳する記者の底の浅さには情けなくなりました。
久間氏は「誤探知」をめぐる「混乱」について聞かれ「緊張状態になりすぎていたから」だとしたあと、「なぜそんな緊張状態になったのか」と質問が重ねられたことに対して、「日本と北朝鮮は休戦状態というか、講和条約も国交も結んでおらず、『戦後』を迎えていない。特に向こうにとってみれば、昔のままです。韓国は北朝鮮のゲリラ部隊が入り込むなど、こういう状況に慣れているところがある。いまいましいとは思っているでしょうが、冷静でした」と述べています。
ようやく問題が本質的なところにきました。
ここで、ある書物からの引用です。
「北朝鮮は、テポドンによる人工衛星打ち上げに失敗した8年後、今度はテポドン2を発射したが、わずか42秒後に日本海に着弾した。そして3ヵ月後、1回きりの核実験は、中途半端なものに終わった。経済的に衰弱しきった国の失敗したロケットに搭載される、実験の不十分な核兵器を、『省』に昇格した日本の防衛省は本当に恐れているのだろうか。それが発射された数分後に、北朝鮮は地球上から消し去られてしまうだろうに。日本での北朝鮮のイメージは、白か黒かのどちらかだ。朝鮮総連のような団体は、北朝鮮をこの世で最もすばらしい国と褒め称えるが、その他の人々にとっては悪の枢軸のひとつでしかない。もちろん、どちらも本当の姿ではない。米政府は体制転換を主張するが、それよりも体制の変化を支持するほうが、誰にとってもよい結果を生むだろう。北朝鮮は改革の途上にある。」
「日本、そして世界にとって一番の利益は、北朝鮮に対して批判的に関与することによって、現在この国の経済改革を遅らせている外的障害を取り除くことだ。日本は、意見の相違を際立たせようとするのではなく、合意を探ろうという観点から、北朝鮮との対話をはじめるべきだろう。」
引用が長くなりますが、もう少しお読みください。
「問題は、ステレオタイプな物の見方にある。北朝鮮は狂気の指導者が支配するスターリン主義の遺物でもなければ、世界の安全に対する致命的な脅威でもない。現体制の『生き残り』と『安全保障』を最大の関心事とする、理性的な一団が統治する国である。また、同時に、法的にはいまも米国と戦争状態にある。北朝鮮から見れば、自分たちの行動は生き残りをかけた戦いの論理的結果である。そのことが見えない者、見たくない者にとっては、北朝鮮は因果関係に基づく正常な政治的判断能力を失った、危険で不可解な存在になってしまうのだ。北朝鮮とその指導体制がそれほど悪くないという幻想を抱くべきではないが、その政治体制を作り上げたのは、この国自身と友好国だけでなく、敵国でもある。」
「地域的な軍拡競争と共産主義の崩壊により、北朝鮮は一般市民の経済を犠牲にして、減少する国家収入の中からいっそう大きな割合を軍備に費やしてきた。その後、手本を示されたことと経済的な理由から、確実な抑止力を備えるために核保有の道へと駆り立てられたのである。米国によって経済的に追い詰められた北朝鮮は、軍事境界線の南側からの脅威に対抗して“先軍政治”を敷き、市民生活は窮乏した。しかし、たとえ北朝鮮が核兵器を、経済を危機に追い込んだ通常兵器の安価な代替物だと結論づけた場合でも、これは度が過ぎた行為であり、世界の安全にとって脅威であることは確かだ。」
さらに、北朝鮮のミサイル発射、拉致問題、核実験を挙げて、「つまり北朝鮮が日本国民の意見を変えるためのうってつけの触媒になっているのだ。北朝鮮が常軌を逸した行動を取っている間に、日本はとがめ立てされることなく、種子島の発射台からロケットを打ち上げることができる。また、すでに世界第5位の軍事費を浪費していながら、さらに強力な軍事力を備える必要について語ることができるのである。」
これらはEU・欧州議会議員グリン・フォード氏の著書『北朝鮮−ゆるやかな変革−』の冒頭のパートのほんの一部です。
1950年英国生まれで、東京大学客員教授として半年間日本に滞在した経験もあるグリン・フォード氏は、日本に関する欧州代表団副代表を務めて以来、アジアとEUの関係発展に努力を傾けている人物です。
わずか300ページに満たない本書ですが、いま私たちが手にしうる最良の「北朝鮮分析」のうちの一冊といっても過言ではないと感じます。
なによりも、事実にもとづいて冷徹に分析する、すぐれた視座のすえ方に触発されるところが大なのですが、ここは書物の紹介が目的ではありませんので、ここまでに控えます。
さて、記事が長くなりますので、できるだけ手短にまとめますが、今回の「ロケット発射」を契機に、いまこそ東アジアの平和にむけて何とどう向き合うべきなのかを本質的に深める必要があると思います。
その際の最も重要な指標は、まず、グリン・フォード氏の指摘にもあるように、われわれは北朝鮮とのあいだでまだ「戦争状態」に終止符を打つことができていないこと、そればかりか、北朝鮮は軍事境界線をはさんで南の在韓米軍、韓国軍と対峙する緊張状態にあるだけでなく、日本には日米安保にもとづいて米軍が駐留しかつ自衛隊が対峙するという状態が続いていること、この緊張状態を解消していく努力なしに問題を解決に向かわせることは叶わないということです。
日本の私たちは日ごろあまり意識していませんが、北朝鮮との間ではまだ戦争処理さえ終わっていません。
米国と北朝鮮の間では朝鮮戦争の「休戦状態」のままでもう半世紀以上が過ぎています。
さらに、東アジアの非核化という課題と真摯に向き合う必要があります。
先日テレビである出演者が、意図してか意図せずにかはわかりませんが、「朝鮮半島の非核化」をめざすべきだと、したり顔で述べていましたが、それこそ問題の本質をそらす言説です。
日本は非核三原則を掲げているがゆえに核を持たない国だ、だから北朝鮮は核を捨てるべきだ、朝鮮半島を非核化すべきだというのは、もし悪意を含んでいないとすれば、まったく的外れな議論です。
日米安保にもとづいて、日本は米国の核の傘の下にあることは自明であり、だからこそ東アジア地域の、つまり中国、韓国、日本、日本に駐留する米国、そしてロシアなどすべての国が核を廃絶するという決断をしなければなんの説得力もない議論になってしまいます。
かつて中国からも、北朝鮮からもこの東アジア非核地帯化構想について突きつけられた日本は、どうしてもこれに乗れないと態度をかたくなにしてきました。
それはまさしく、日本もまた、核を「放棄」しないことを意味するのだということを、いまこそ真剣に考えてみなければならないと思います。
本質的に考えるための最低限の指標といえばさらにもうひとつ、日本の国民の中に存在する、抜きがたい差別意識や偏見を捨て去り、事実を事実としてあるがままに見据え、考えることです、北朝鮮に向き合うカギは!
先週中国の戦略問題の専門家(江沢民前主席にも直接戦略問題、安全保障問題について進言する立場にあり、米国のペンタゴンにも招かれて戦略問題の議論を重ねてきた高位の専門家です)の話を聴く機会がありました。
米国の強圧的な政策こそが北朝鮮に核開発を促したのだということ、米国が軍事的圧力をかけ緊張状態を作り出してきたのは、北朝鮮に、国家予算の6割から7割をこえる部分を軍事費に回さざるをえなくして、軍事費の重圧で崩壊させるという考え方に立ってきたからだと指摘しました。
さらに、北朝鮮がそれでも持ちこたえるということになると、クリントン政権時代には、北朝鮮を開放に向かわせ北朝鮮の政策を変えさせようとしたが、ブッシュ政権ではまた「悪の枢軸」という政策に振れ、米国の対北朝鮮政策が定まらず、北朝鮮の不信を募らせるばかりという経過をたどっていると指摘しました。
中国としては、北朝鮮の核やミサイルの開発には反対だという留保をつけながら、何が問題の根源に横たわるのかを鋭く指摘し、北東アジア地域が冷戦構造から抜け出すために何をなすべきかについて熱をこめて語るのでした。
聴き手の責任において文字にするのですが、「私が金正日ならこう言って欲しいと思うだろう。胡錦濤主席が『中国の核は北朝鮮の核でもあるのだ、だから核開発の必要はない!』と。しかしケ小平氏から胡錦濤主席まで、だれもそれを言うことはできない・・・」と語ったことばが重く残りました。
日本にとっての米国の「核の傘」に北朝鮮にとっての中国の「核の傘」を対決させることでは問題の解決に進めないことは確かです。
だからこそ、では北朝鮮に核とミサイルの放棄を迫るなら、何をしなければならないかは明確に見えてくる話だと思います。
ここまで書いているとき国連の安保理での「議長声明」採択を受けて北朝鮮が外務省声明を発し、6者協議に「再び絶対に参加しない」と表明、核開発の再開を示唆したというニュースが入ってきました。
しばらくはまた緊張をはらんだ状況を余儀なくされるのでしょう。
だからこそ、いまこそ冷静に、かつ本質にふれる思考が必要です。
狂騒はもうたくさんです。
そんな空疎な「狂騒」にはそろそろ終止符を打って、今そこにある危機を、問題の根本的な解決にむかう力に変えていかなければなりません。
その意味では久間氏の言にあるとおり、マスコミ、メディアの責任は重大です。
本質へ、そして冷静な思考を!です。
発射前、そして発射の当日(5日・日曜日)の異様なまでの「狂騒」は幾分治まってきましたが、今度は、9日にひらかれた最高人民会議第12期第1回会議で金正日総書記が国防委員会委員長に3選され、加えて国防委員会の委員枠を倍増し、金正日総書記の義弟、張成沢労働党中央委部長が国防委員に選ばれたことが大きなニュースになりました。
同時に、会議に出席した金正日総書記の映像が朝鮮中央テレビで流れたことから、テレビ各局では、朝鮮半島問題から医学までのさまざまな専門家が映像を見ながら「おっ、歩いてる!」とか「足を引きずっていて不自然だ」、「ページをめくった!左手が動く」「いやまだ不自由だ」などとあれこれ喧しくコメントするというありさまで、なんとも騒がしいかぎりでした。
そして注目の国連の安全保障理事会は、米国が、新たな「決議」をめざすのではなく、報道機関向け「声明」との中間に当たる「議長声明」の素案を提示したことで、結局、ミサイルか人工衛星かの判断を示さず「発射を非難する」とともに過去の「安保理決議1718に違反する」こと、「北朝鮮がさらなる発射を行わないよう要求する」とした内容の「議長声明」で決着することになりました。
しかし、オバマ大統領の「強硬」なことばとは裏腹な米国の「変わり身」に、梯子をはずされた格好の日本は、振り上げたこぶしの落としどころに苦慮するという局面に立たされました。
「誤探知」という奇妙な言葉まで生み出して、てんやわんやの大騒ぎをしたことは論外としても、人工衛星は載っていたのか、成功だったのか失敗だったのかなど、メディアでは依然として本質的ではないあれこれが繰り返されています。
しかし、このあたりでそろそろ「狂騒」に終止符を打って、見据えるべき問題のありかを冷静に考えてみるべきではないでしょうか。
そこでまず、「発射」の当日に戻るのですが、この日私は、朝から韓国の聨合通信に注目して、刻々伝えられる情報の流れを注視していました。
日本で「発射か?」という速報が流れる前に聨合通信はいち早くその情報を伝えたので驚きました。
この日朝から聨合通信が伝えた関連ニュースの流れを時系列で少しばかりメモしてみます。
これを見ていた発射当日、5日午前中の気持ちを率直に言うと、実に興味深いものが見えるものだなー・・・というものでした。
09:28 政府が北朝鮮滞在人員最小化、南北関係緊張に備え
(注、この時点でも北朝鮮に韓国の「人員」が滞在していることに注目するべきではないでしょうか。聨合通信によれば「統一部は、北朝鮮が予告したロケット発射期間(4日〜8日)初日の同日、平壌に交流協力などの事業で滞在していた韓国人81人が、航空便を利用し中国の北京、瀋陽などに移ったと明らかにした。平壌には当面、長期にわたり常駐してきた平和自動車関係者1人だけが残る。また、この日は京義線陸路を通じ161人が訪朝し、528人が韓国側に戻った。3日夜まで906人だった開城工業団地滞在者数は、4日午後7時現在、540人となった。北朝鮮地域には現在、金剛山地域滞在者41人を含め582人の韓国民が滞在していることになる。」と伝えています。)
10:01 「衛星打ち上げ」予告のなか平壌は平穏、訪朝団体
(注、先月末に訪朝し、韓国統一部の勧告を受け日程を前倒しして4日韓国に戻った韓国の北朝鮮支援団体「ウリ民族相互助け運動」関係者が「平壌市内は普段と特に変わらず、静かだったと」語るとともに、韓国に戻る際に北朝鮮側関係者らが「ここに来てみて分かったと思うが、われわれが招請状を送ったのは身辺安全を保障し不便のないよう万全を期すという意味。統一部に心配や懸念は必要ないと必ず伝えてほしい」と話したという。また同じ期間に訪朝していた「キョレマル(民族語)大辞典」韓国側編纂(へんさん)委員会関係者も「街の雰囲気に特に異常な動向はなく、人工衛星打ち上げに直接言及したり示唆したりするような看板も見当たらなかった。市内の警備が強化されたり、軍服姿の人物が多かったり軍隊が移動するということもなかった」と話したという。北朝鮮側関係者らは「宇宙の平和的利用は国家の自主権に属する事案だが、特に日本が、なぜ問題視するのか分からない」という話をしていたと伝えた。)
10:15 金総書記が平壌大劇場を視察、朝鮮中央通信(写真も配信)
10:35 北ロケット発射場に頻繁な車両往来、発射可能性注視
10:51 北朝鮮ロケットの覆い外される、発射の兆候確認
10:56 統一部長官「国民の安全に異常ないよう対処」(写真も配信)
11:14 外交通商部ロケット対策会議、発射後の政府措置検討
11:28 青瓦台が緊急NSC招集、ロケット発射切迫と判断(写真も配信)
11:38 「政府当局者は5日、北朝鮮が長距離ロケットを発射したと伝えた。」(速報)
11:49「青瓦台(大統領府)は5日、北朝鮮が午前11時30分15秒、長距離ロケットを発射したと発表した。」
12:05 政府当局者「北朝鮮ロケットは人工衛星と確認」
12:29 北朝鮮挑発に断固・毅然として対応、青瓦台 (写真も配信)
13:10 北ロケットに政府声明「安保理決議違反の挑発行為」(写真も配信)
13:29 「北朝鮮ロケット発射政府公式声明全文」配信
13:52 軍が危機管理委員会を稼動、警戒態勢を強化
14:21 政府がPSI参加判断先送り、北朝鮮の反発考慮
14:53 国民も衝撃・懸念・・・、政府には落ち着いた対応求める
15:05 北ロケットは「宇宙発射体」、衛星搭載の可能性高い
15:19 国防部「韓米合同のミサイル戦力増強を検討」
15:33 国連北朝鮮代表部は無反応、韓国は非常勤務体制
15:43 オバマ米大統領が声明「北ロケットは挑発行為」
15:56 青瓦台「衛星」判断留保、韓米協議経て公式発表
16:02 国連安保理あす早朝緊急招集、日本の招集要請受け
16:16 韓米は北ロケット安保理決議違反で一致、駐韓米大使
16:37 朝鮮中央通信「人工衛星の軌道進入に成功」
17:18 柳外交通商部長官、米中日の外相と電話協議
17:57 柳明桓長官「人工衛星打ち上げを試みたもよう」
18:31 南北関係状況の安定管理と国民安全を優先、統一部
18:56 権哲賢駐日大使と河村官房長官、対北朝鮮で協力確認
19:37 李大統領は冷静対処を強調、NSC約5時間に及ぶ
19:44 北朝鮮の発射体が軌道進入に失敗、政府当局者
20:01 国防部長官「北朝鮮の衛星、軌道進入失敗と把握」
「国防部の李相憙(イ・サンヒ)長官は5日、北朝鮮の長距離ロケット発射について、『これまでの判断では、(ロケットの)1〜3段目がすべて海上に墜落した』『いかなる物体も軌道に進入できなかったと判断している』と述べた。緊急招集された国会国防委員会全体会議での発言。衛星が軌道進入に失敗したものと把握されるとしながら、韓米は引き続き分析を行うと述べた。」
20:56 「国防部の李相憙(イ・サンヒ)長官は5日、北朝鮮の長距離ロケット発射について、『いかなる物体も軌道に進入できなかったと判断している』と述べ、地球軌道への進入に失敗したことを強く示唆した。」
この日夜までに聨合通信が伝えた関連ニュースの流れです。
日本での「大騒動」あるいはメディアの伝え方と比べてみるときわめて冷静であることがわかります。
また、あれだけ北朝鮮と「緊張関係」にある李明博政権の対応が実に冷静かつ沈着であることが見えてきます。
そして、私がなによりも注目したのは、発射の「兆候」のキャッチがなぜこれほど早かったのかという点です。
発射直前の11時28分に青瓦台(大統領府)はNSC、国家安全保障会議を招集しています。わたしはこの時、ある推測を持ったのですが、後にそれを裏付ける報道がなされることになりました。以下は読売新聞の報道です。
【ソウル=伊藤彰浩】北朝鮮の「人工衛星打ち上げ」名目での長距離弾道ミサイル発射について、韓国の情報機関、国家情報院は6日、北朝鮮が米中露3か国に対し、おおよその発射時刻を事前に伝えていたことを明らかにした。
聯合ニュースが、国会情報委員会の非公開懇談に出席した議員の話として伝えた。
北朝鮮が日韓両国に対する軽視姿勢を鮮明にするのが狙いだったとみられる。また、この議員は、韓国に対しては米国が情報を伝えた模様だと述べたという。
聯合電によると、北朝鮮は、4日から8日の午前11時から午後4時の間に発射すると、国際海事機関(IMO)などに事前通告していたが、米中露への通報内容は、より詳細なものだった。李明博大統領はミサイル発射直前の5日午前、国家安全保障会議(NSC)を招集したが、これは米国から情報提供があったためとみられる。
(2009年4月6日13時26分 )
つまり、アメリカ、中国、ロシアに対して北朝鮮は「事前通告」をしていて、韓国にはアメリカから「情報提供」がなされていたということです。それもかなりきめ細かく情報が提供されていたことがうかがえます。
日本にはどうだったのか、日本のメディアが「究明」もしくは「解明」するつもりがあるのかどうかも含めて、わかりません。
しかし、「発射、その後」を考えて行く時、これは無視できない、重要な問題だと思います。
知らされていたかどうかという「面子」の問題を云々しているのではなく、米、中、ロと日本の関係がどういうものかを考える材料として重要だと思うのです。
とりわけ国連の安保理事会での米国の「豹変ぶり」や各常任理事国の「駆け引き」を目の当たりにすると、日本のおかれた位置がどのようなものか、いわずもがなと言うべきでしょう。
ところで、今回の「ミサイル発射問題」でまたもや、「独自の北朝鮮攻撃論」が湧き上がってきました。
「北朝鮮の脅威に見合った抑止力を考えるのは与党の政治家の責務だ。日本独自で北朝鮮の基地を攻撃できる能力について議論すべき・・・」というのです。
国際問題通だとかあるいは安全保障問題に通じているなどといううたい文句でメディアにしばしば登場する議員の発言です。
テレビで「北朝鮮にガツンとやれないのか!」と叫ぶ「キャスター」や「怖いですねぇー」と顔を曇らせてみせる、「キャスター」と「大学特任教授」を肩書きとする女性などはさておくとしても、こうした軽薄な論調がいとも簡単に湧き上がる状況の危うさに言葉を失うばかりでした。
国防族の重鎮、山崎拓元自民党副総裁が「ミサイルが飛んでくるなら発射基地をたたこうとか、むこうが核武装するならこちらもという意見は人類を破滅に導く議論だ」とクギ刺したという報道や、防衛庁長官、防衛大臣を歴任した久間章生衆議院議員が「北朝鮮がミサイルの実験をやりたがっているのはよくわかっていたことです。でも日本にミサイルを撃ち込むような、緊迫した情勢だったかどうか。それがあたかも日本に向けて発射するかのような雰囲気になってしまった。どんなに考えても今、北朝鮮が日本めがけて撃つはずがありませんから」(「朝日」4月11日朝刊)と語るのを目にして、こうした至極まっ当な言説が常に「その後」にしか出てこない問題はあるにせよ、言論の復元力に少しはホッとするものがありました。
ただし、「日本中がこんな騒ぎになると思っていましたか」という問いに「騒ぎにしたのは、おたくら(マスコミ)でしょう。・・・」と切り返えされて「新聞もテレビも、国民の関心事だから、取り上げたのですが」と言い訳する記者の底の浅さには情けなくなりました。
久間氏は「誤探知」をめぐる「混乱」について聞かれ「緊張状態になりすぎていたから」だとしたあと、「なぜそんな緊張状態になったのか」と質問が重ねられたことに対して、「日本と北朝鮮は休戦状態というか、講和条約も国交も結んでおらず、『戦後』を迎えていない。特に向こうにとってみれば、昔のままです。韓国は北朝鮮のゲリラ部隊が入り込むなど、こういう状況に慣れているところがある。いまいましいとは思っているでしょうが、冷静でした」と述べています。
ようやく問題が本質的なところにきました。
ここで、ある書物からの引用です。
「北朝鮮は、テポドンによる人工衛星打ち上げに失敗した8年後、今度はテポドン2を発射したが、わずか42秒後に日本海に着弾した。そして3ヵ月後、1回きりの核実験は、中途半端なものに終わった。経済的に衰弱しきった国の失敗したロケットに搭載される、実験の不十分な核兵器を、『省』に昇格した日本の防衛省は本当に恐れているのだろうか。それが発射された数分後に、北朝鮮は地球上から消し去られてしまうだろうに。日本での北朝鮮のイメージは、白か黒かのどちらかだ。朝鮮総連のような団体は、北朝鮮をこの世で最もすばらしい国と褒め称えるが、その他の人々にとっては悪の枢軸のひとつでしかない。もちろん、どちらも本当の姿ではない。米政府は体制転換を主張するが、それよりも体制の変化を支持するほうが、誰にとってもよい結果を生むだろう。北朝鮮は改革の途上にある。」
「日本、そして世界にとって一番の利益は、北朝鮮に対して批判的に関与することによって、現在この国の経済改革を遅らせている外的障害を取り除くことだ。日本は、意見の相違を際立たせようとするのではなく、合意を探ろうという観点から、北朝鮮との対話をはじめるべきだろう。」
引用が長くなりますが、もう少しお読みください。
「問題は、ステレオタイプな物の見方にある。北朝鮮は狂気の指導者が支配するスターリン主義の遺物でもなければ、世界の安全に対する致命的な脅威でもない。現体制の『生き残り』と『安全保障』を最大の関心事とする、理性的な一団が統治する国である。また、同時に、法的にはいまも米国と戦争状態にある。北朝鮮から見れば、自分たちの行動は生き残りをかけた戦いの論理的結果である。そのことが見えない者、見たくない者にとっては、北朝鮮は因果関係に基づく正常な政治的判断能力を失った、危険で不可解な存在になってしまうのだ。北朝鮮とその指導体制がそれほど悪くないという幻想を抱くべきではないが、その政治体制を作り上げたのは、この国自身と友好国だけでなく、敵国でもある。」
「地域的な軍拡競争と共産主義の崩壊により、北朝鮮は一般市民の経済を犠牲にして、減少する国家収入の中からいっそう大きな割合を軍備に費やしてきた。その後、手本を示されたことと経済的な理由から、確実な抑止力を備えるために核保有の道へと駆り立てられたのである。米国によって経済的に追い詰められた北朝鮮は、軍事境界線の南側からの脅威に対抗して“先軍政治”を敷き、市民生活は窮乏した。しかし、たとえ北朝鮮が核兵器を、経済を危機に追い込んだ通常兵器の安価な代替物だと結論づけた場合でも、これは度が過ぎた行為であり、世界の安全にとって脅威であることは確かだ。」
さらに、北朝鮮のミサイル発射、拉致問題、核実験を挙げて、「つまり北朝鮮が日本国民の意見を変えるためのうってつけの触媒になっているのだ。北朝鮮が常軌を逸した行動を取っている間に、日本はとがめ立てされることなく、種子島の発射台からロケットを打ち上げることができる。また、すでに世界第5位の軍事費を浪費していながら、さらに強力な軍事力を備える必要について語ることができるのである。」
これらはEU・欧州議会議員グリン・フォード氏の著書『北朝鮮−ゆるやかな変革−』の冒頭のパートのほんの一部です。
1950年英国生まれで、東京大学客員教授として半年間日本に滞在した経験もあるグリン・フォード氏は、日本に関する欧州代表団副代表を務めて以来、アジアとEUの関係発展に努力を傾けている人物です。
わずか300ページに満たない本書ですが、いま私たちが手にしうる最良の「北朝鮮分析」のうちの一冊といっても過言ではないと感じます。
なによりも、事実にもとづいて冷徹に分析する、すぐれた視座のすえ方に触発されるところが大なのですが、ここは書物の紹介が目的ではありませんので、ここまでに控えます。
さて、記事が長くなりますので、できるだけ手短にまとめますが、今回の「ロケット発射」を契機に、いまこそ東アジアの平和にむけて何とどう向き合うべきなのかを本質的に深める必要があると思います。
その際の最も重要な指標は、まず、グリン・フォード氏の指摘にもあるように、われわれは北朝鮮とのあいだでまだ「戦争状態」に終止符を打つことができていないこと、そればかりか、北朝鮮は軍事境界線をはさんで南の在韓米軍、韓国軍と対峙する緊張状態にあるだけでなく、日本には日米安保にもとづいて米軍が駐留しかつ自衛隊が対峙するという状態が続いていること、この緊張状態を解消していく努力なしに問題を解決に向かわせることは叶わないということです。
日本の私たちは日ごろあまり意識していませんが、北朝鮮との間ではまだ戦争処理さえ終わっていません。
米国と北朝鮮の間では朝鮮戦争の「休戦状態」のままでもう半世紀以上が過ぎています。
さらに、東アジアの非核化という課題と真摯に向き合う必要があります。
先日テレビである出演者が、意図してか意図せずにかはわかりませんが、「朝鮮半島の非核化」をめざすべきだと、したり顔で述べていましたが、それこそ問題の本質をそらす言説です。
日本は非核三原則を掲げているがゆえに核を持たない国だ、だから北朝鮮は核を捨てるべきだ、朝鮮半島を非核化すべきだというのは、もし悪意を含んでいないとすれば、まったく的外れな議論です。
日米安保にもとづいて、日本は米国の核の傘の下にあることは自明であり、だからこそ東アジア地域の、つまり中国、韓国、日本、日本に駐留する米国、そしてロシアなどすべての国が核を廃絶するという決断をしなければなんの説得力もない議論になってしまいます。
かつて中国からも、北朝鮮からもこの東アジア非核地帯化構想について突きつけられた日本は、どうしてもこれに乗れないと態度をかたくなにしてきました。
それはまさしく、日本もまた、核を「放棄」しないことを意味するのだということを、いまこそ真剣に考えてみなければならないと思います。
本質的に考えるための最低限の指標といえばさらにもうひとつ、日本の国民の中に存在する、抜きがたい差別意識や偏見を捨て去り、事実を事実としてあるがままに見据え、考えることです、北朝鮮に向き合うカギは!
先週中国の戦略問題の専門家(江沢民前主席にも直接戦略問題、安全保障問題について進言する立場にあり、米国のペンタゴンにも招かれて戦略問題の議論を重ねてきた高位の専門家です)の話を聴く機会がありました。
米国の強圧的な政策こそが北朝鮮に核開発を促したのだということ、米国が軍事的圧力をかけ緊張状態を作り出してきたのは、北朝鮮に、国家予算の6割から7割をこえる部分を軍事費に回さざるをえなくして、軍事費の重圧で崩壊させるという考え方に立ってきたからだと指摘しました。
さらに、北朝鮮がそれでも持ちこたえるということになると、クリントン政権時代には、北朝鮮を開放に向かわせ北朝鮮の政策を変えさせようとしたが、ブッシュ政権ではまた「悪の枢軸」という政策に振れ、米国の対北朝鮮政策が定まらず、北朝鮮の不信を募らせるばかりという経過をたどっていると指摘しました。
中国としては、北朝鮮の核やミサイルの開発には反対だという留保をつけながら、何が問題の根源に横たわるのかを鋭く指摘し、北東アジア地域が冷戦構造から抜け出すために何をなすべきかについて熱をこめて語るのでした。
聴き手の責任において文字にするのですが、「私が金正日ならこう言って欲しいと思うだろう。胡錦濤主席が『中国の核は北朝鮮の核でもあるのだ、だから核開発の必要はない!』と。しかしケ小平氏から胡錦濤主席まで、だれもそれを言うことはできない・・・」と語ったことばが重く残りました。
日本にとっての米国の「核の傘」に北朝鮮にとっての中国の「核の傘」を対決させることでは問題の解決に進めないことは確かです。
だからこそ、では北朝鮮に核とミサイルの放棄を迫るなら、何をしなければならないかは明確に見えてくる話だと思います。
ここまで書いているとき国連の安保理での「議長声明」採択を受けて北朝鮮が外務省声明を発し、6者協議に「再び絶対に参加しない」と表明、核開発の再開を示唆したというニュースが入ってきました。
しばらくはまた緊張をはらんだ状況を余儀なくされるのでしょう。
だからこそ、いまこそ冷静に、かつ本質にふれる思考が必要です。
狂騒はもうたくさんです。
そんな空疎な「狂騒」にはそろそろ終止符を打って、今そこにある危機を、問題の根本的な解決にむかう力に変えていかなければなりません。
その意味では久間氏の言にあるとおり、マスコミ、メディアの責任は重大です。
本質へ、そして冷静な思考を!です。
2009年04月12日
ホームページ、新記事のお知らせ
ホームページの、小島正憲氏の「凝視中国」に新しい記事「ホーチミンと毛沢東、西郷隆盛と毛沢東」を掲載しました。
いま中国では[毛沢東再評価]の動きが取りざたされています。
もちろん大きな動きになっているとはいえませんが、北京のハイテクの街、中関村に毛沢東思想について議論するグループの「サロン」があったり、ネット上で「毛沢東主義」を掲げる「共産党」について取りざたされるといったことも起きています。
そんな折、小島氏から「ホーチミンと毛沢東」「西郷隆盛と毛沢東」という論考が届きました。
小島氏独自の「毛沢東論」の興味深い一断面が読み取れます。
ぜひご一読を。
ホームページのサイトは
http://www.shakaidotai.com です。
いま中国では[毛沢東再評価]の動きが取りざたされています。
もちろん大きな動きになっているとはいえませんが、北京のハイテクの街、中関村に毛沢東思想について議論するグループの「サロン」があったり、ネット上で「毛沢東主義」を掲げる「共産党」について取りざたされるといったことも起きています。
そんな折、小島氏から「ホーチミンと毛沢東」「西郷隆盛と毛沢東」という論考が届きました。
小島氏独自の「毛沢東論」の興味深い一断面が読み取れます。
ぜひご一読を。
ホームページのサイトは
http://www.shakaidotai.com です。