またもやこのコラムの筆を執るのが間遠になっていますが、被災地からレポートを送ってくださる柳あいさんから第3弾「脱原発解散」を市民主導で、が届きました。
果てしなく液状化する政治にどう向き合うのか、まさに政党政治の崩壊というべき現実を前にして日本の社会が危うい状況にあることを痛感する日々です。
被災地でアジアと日本を考え続ける柳あいさんからの問題提起です。
ご一読ください。
「脱原発解散」を市民主導で
柳 あい
菅直人首相による「脱原発解散」が「真夏の夜の夢」とヤユされながらも、しだいに現実味を帯びはじめている。菅首相の心境を推測すれば、その契機は6月12日にイタリアで行われた国民投票の結果であり、前後して行われた日本での世論調査の結果、60%前後が「脱原発」を支持していると判明したことである。この国民投票の結果を、自民党の石原幹事長は「集団ヒステリー現象」と批判したが、それはむしろ危機感を反映したものといえよう。
その後の展開を見れば明らかなように、菅首相は政権延命のために「脱原発解散」をもくろんでいる。では、これに対して「脱原発」をめざす市民運動はどのような立場をとるべきだろうか、それが今、私たちに問われている。
私はこの際、菅首相を突き上げる意味でも、彼に同調して「脱原発解散」を少しでも市民主導で実現するように、強く要求したい。その理由として、以下の5点を挙げたいと思う。
その第1は、日本では制度的に国民投票がないため、総選挙という形で国家政策の是非、または選択を問わざるを得ない。自らの政権強化のために、この方式をうまく活用したのが2005年小泉首相による「郵政解散」であり、菅首相がこれを念頭においているのは、すでに周知の事実である。
第2に、そしてこれが最大の要点だが、長期間にわたった自民党政権の原発推進政策の過ちをこそ、問うべきである。一体「3・11大震災」後、すなわち福島原発事故の勃発以後、自民党が一度でも謝罪しただろうか。彼らはまるで「万年野党」でもあったかのように菅首相を批判しているが、彼らこそが原発推進政策の張本人だったことを明確にする必要がある。それには、総選挙という場でその責任を問う必要があるのではないか。そして、この点にこそ、市民参加の政治を実現させる第1歩として、「脱原発解散」を市民主導で実現させる意味がある。さらに、この点を基軸にすえれば、震災後の国会における「政治的駆け引き」の半ば程度は終息に向かわざるをえない。
つまり、第3点として、民主党内部の分裂現象が、菅首相の主導の下で整理されざるを得ない。その過程で、菅首相の「脱原発」政策がどの程度本気なのかが問われるだろう。
これに関連する第4点として、公明党や「みんなの党」はもちろん、共産党や社民党まで、各党の「脱原発」政策がどの程度本気なのかが問われ、それは選挙結果にかなりの影響を与えるだろう。現時点において、菅首相の「脱原発解散」の可能性を早くから指摘する「みんなの党」が「脱原発」を主張しはじめているのは、その兆候といえるだろう。
そして最後に、若い女性の政治参加、選挙参加が飛躍的に増大すると予測できる点に「脱原発解散」を行う最大の意義がある。おそらくそれは投票という結果的行為にとどまらず、選挙運動そのものを変えていく可能性がある。なぜなら、20〜30代の女性こそ、出産・子育てを通じて原発の被害に最も敏感にならざるを得ないし、事実として最近の「脱原発」運動の一角を担いつつある。そして、若い女性の意識が変わってこそ、その社会は根本的な変革を迎える。
とはいえ、この点も含め、果たして日本の国民がそこまで「脱原発」政策を重視するかと疑問に思う人もいるだろう。つまり、「脱原発解散」の思惑は外れ、万一自民党が勝利するとか、参議院とのねじれ状態は続くとか、という事態を懸念する声は根強いと思う。しかし、「脱原発解散」は1回では終わらないし、終わらせてはならない。今回の解散総選挙は単なる始まりに過ぎない。なぜなら、不幸にも原発による被害は、そして放射能に対する不安は、事実を知れば知るほど、強まらざるをえない。それに加えて、従来のエネルギー政策や社会のあり方、そして私たちの暮らし方を根底から問い直す方向へと問題は発展せざるをえない。
このように考えれば、今後数年間に最低3回程度の「脱原発解散」が必要になるだろう。また、そうしてこそ、日本の政治・社会、とりわけ国会のどうしようもない現状を変革していく芽が育っていく。だから、「脱原発」をめざす市民運動は、今回の「脱原発解散」の結果がどうなろうとも挫けてはならない。
「フクシマ」は、今日も日本社会と政治に問い続けている。
「放射性廃棄物のタレ流しをどうするのか、誰が責任を取るべきなのか」と。
2011年07月10日
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