2011年03月31日

The situation remains very serious・・・

 The situation remains very serious・・・

 これはIAEAの天野事務局長が記者会見(28日ウイーン)で「福島原発」の現局面について述べたことばです。けさTVで放映されました。しかもvery seriousな状態が続いていると繰り返して強調し、いかに深刻なレベルなのかが伝わってくる会見でした。

 日本政府はこれをなんとか薄めることにやっきになっているという様子ですが、最早、世界はそれを許してくれないという局面を迎えました。

 まさに「世界が震撼するFUKUSHIMA」となった今、東電―経済産業省―日本政府の枠組みをこえて、「世界総がかり」の取り組みを余儀なくされる段階に入りました。

 メディアではここに至ってもなお「幾分落ち着いている・・・」などと言って恥じない原子力専門家もいるので驚くばかりです。

 こうした「もの言い」は昨日東電の清水社長の「入院」によって、代わって会見に臨んだ勝俣会長の「原発の復旧の見通しは、正直、冷温に保つという最終冷却がまだできていない状況だ。最近は少し安定してきたが、冷温冷却できるようにならないと、安定しない。最大限そこに注力することが第一。それ以降、いろいろ課題あるが、こうした点については、今後、どういうステップでいくかを詰めたい。」という言及と、実に平仄の合ったものだと言わざるをえません。

 さてしかし、IAEAの天野氏は「非常に深刻だ」だと言っているのです。

 どちらが本当なのか・・・。
 昨日の会見で「事態の収束が長引いていることについて、政府、東電含めて、オペレーションのまずさによる人災の側面があるが、どう受け止めているのか」と問われて「はい。わたし自身はまずさというのは感じられませんでした。ただ、現場は電気が消えている。通信もできない状況で、いろいろ作業しなければならなかった。いろんな作業が予定より長くかかった。これまでボタン1つで動いたものが、手動でやらないといけない状況があって、意図せざる遅れがあったということかと思います。」などと臆面もなく語る人物の発言と天野氏の言及を比べれば言うまでもないことでしょう。

 まだこんなことを言いながら平然と会見の席に座る人物が東電の最高責任者だというのですから、世界が「焦燥感をつのらせる」というのもわかります。

 もちろん、この「世界総がかり」というのは、本当は、慎重に吟味、検証してみなければならない「キナ臭さ」がつきまとうのですが、いまはそんなことも言っておれず、とにかく最悪の事態をどうすれば避けることができるのかという一点で、できることをすべて「やってもらう」しかありません。

 その「総がかり」についてランダムにいくつかメモしてみると、
1.IAEAがモナコにある傘下の海洋環境研究所の専門家を新たに派遣。来月2日から日本の専門家とともに福島第一原発周辺の海水に含まれる放射性物質の測定や評価に当たる。なお、IAEAは、これまで合わせて15人の専門家を日本に派遣し、福島県や首都圏の大気中の放射線量や食品や土壌に含まれる放射性物質を独自に分析。

2.フランスの原子力企業「アレバ」のロベルジョンCEO・最高経営責任者と専門家が来日。「アレバ」は、これまでにも原発を廃止する作業の一環で汚染された水の処理を行ってきた実績があるとして、5人の専門家を中心に、福島原発の放射性物質で汚染された水の除去作業の技術的な支援に当たる。なお、アレバは福島第一原発で使用しているMOX燃料(混合酸化物燃料)を加工した企業でもある。

3.米エネルギー省原子力研究所(アイダホ州)が原発内で遠隔操作できるロボットと原発内を撮影できるカメラを提供。米エネルギー省のライヨンズ次官補代行(原子力担当)は「現時点の情報では、原発は事故からの復旧作業が遅れているように見える」としてエネルギー省から40人の専門家を派遣するとともに、作業に必要な機材約7トンも日本に送るとしている。

4.アメリカ軍の船舶(バージ船)で原発の冷却に使う真水を福島原発に運搬、提供。

5.アメリカの原子力関連メーカー「B&W」など3社の幹部や技術者合わせて数十人が、スリーマイル島の原発事故の処理に当たった経験を基に、福島第一原発の原子炉の製造に携わった「東芝」が設けている対策本部に詰めて東京電力にアドバイスをしているという。

6.日米両政府は、政府高官、原子力専門家、軍関係者らによる「福島第一原子力発電所事故の対応に関する日米協議」を3月22日に発足させていたという。日本側は内閣官房安全保障・危機管理室が事務局となり、福山哲郎官房副長官と細野豪志首相補佐官が統括役として参加、東京電力関係者も加わる。米国側からは国防総省、エネルギー省、原子力規制委員会(NRC)、米軍関係者らが入っているとされる。この「日米協議」には三つのプロジェクトチームが設置され@原子炉の冷却、流出する放射性物質の拡散防止A核燃料棒や使用済み核燃料の最終処理方法B廃炉に向けた作業、などについて検討しているという。また今1号機から3号機で漏れているとされる高濃度放射線に汚染された水の排出方法についても議論しているとのこと。

7.ただし、昨夜(30日)のNHKニュースによると「事態を深刻視しているアメリカ側の協力を得て、各省庁の担当者に在日アメリカ軍なども加わった4つの作業チームを総理大臣官邸に設置して、事態収拾に向けた具体策の検討を本格化」させているということで、これが上記の22日に発足した「日米協議」と同じものかは判然としないが、この作業チームには原子力安全・保安院や経済産業省などの関係省庁の担当者、在日米軍、アメリカの原子力規制委員会などの担当者が加わり、@漏えいが続いている放射性物質を空中や海中に拡散させないための方策、A作業員の被ばくを避けるため、原発敷地内で遠隔操作の無人機器を使った作業、B核燃料棒の処理方法、C原発周辺の住民の生活支援などについて検討を進めているという。

8.中国の建設機器大手、三一重工(湖南省長沙市)が、高さ62メートルから放水できる生コン圧送機を東京電力に寄付し、28日に福島県に到着。もとは高層ビルの建設現場で生コンを流し込む機械だが、冷却のための放水に転用。ドイツで製造され、ベトナムの建設会社「ソンダー・ベトドク」に納入するために船便で運ぶ途中、たまたま横浜港にあったために、日本側が協力を要請。ソンダー社が使用を快諾したもの。

 報道されているものをざっと拾い上げるとこうしたものになるのですが、最後の中国からの「生コン圧送機」をおくと、要は、日−米−仏という原発大国の連携の構図が「FUKUSHIMA」を軸に形成されたというわけです。しかも民間のメーカー、企業の参加とはいえ、日本企業との密接な関連も含めて、いずれも「軍需産業」に連なる気配をもつものであることは留意しておくべきことだろうと思います。

 今回のような「危急存亡のとき」に背後にこうした国際的な「総がかりの構図」が見え隠れするのも、いかにも原子力産業というべきでしょう。

 ところで、このなかで冒頭に挙げたIAEAにかかわるところでは、福島第一原発からおよそ40キロ離れた福島県飯舘村で、土壌から、IAEAの避難基準の2倍に当たる放射性物質が検出され、日本政府に対し、「住民に避難を勧告するよう促した」と伝えられたのですが、その後、内閣府の原子力安全委員会の代谷誠治委員が「日本の避難の基準は、大気や空中の浮遊物、飲食物の放射線量など、人体への直接的な影響を判断できる数値で決めている。IAEAは、草の表面のちりの放射能を測定しており、日本の基準の方がより正確だ」として退け、各メディアの報道は「(IAEAは)日本政府に状況を注視するよう求めた」といった表現、トーンに変わりました。

 メディアの報道を時系列で注意深く見ていると、どこか釈然としない事にぶつかるというのは、それこそ「今回の事象」が発生してから、ごくごく日常的なことですから驚くに値しませんが、きょうの原子力安全委員会のきっぱりとした言明は際立っているというべきでしょう。

 ところで、今回の「原発事故」(人災というべきものですから、事故と記しますが)については、今後考えうる「シナリオ」(問題の所在)は明確になってきています。

 テレビをはじめメディアに登場する「専門家」たちの話をいやというほど聞いて考えてみると、論理的にはこうでしかありえません。

 つまり、初動で東電−経済産業省−政権の「内輪」だけでなんとかすり抜けようとする「弥縫策」に走ったことが致命的かつ泥沼のような「世界が震撼する福島」を引き起こしたということです。

 「止める」「冷やす」「閉じ込める」という三要素のうち、なにはともあれ「止める」ことだけはできたものの、問題は「冷やす」というところで致命的な問題にぶつかったことを知りながら、ただひたすら水をかけまくる(放水)そして「水を注ぐ」(注水)ということに終始して、本来的に冷却機能を回復させるための時間を浪費してしまい、「メルトダウン」によって原子炉本体(東電や安全・保安院、官邸の発表では圧力容器か格納容器なのか、あるいは、そのどちらもなのか、まったくもって判然としませんが)が損傷して、その過程で、いうところの「水素爆発」を引き起こし、気づいた時には「かけまくった水」と「注いだ水」が「ザザ洩れ」となっていて高濃度の放射性物質の漏れ出た「水」によってにっちもさっちもいかなくなった、しかし電源を回復させて冷却系を稼働させるだけの時間的余裕もなくなって、ひたすら「水」をぶっかけ、注ぐしか手立てがないという泥沼にはまり込んでしまった、つまりはこういうことなのです。

 つまり戦略なき「弥縫策」が招いた当然の帰結というべきです。

 米国をはじめいくつかの「筋」から、当初から、「深刻な状況だ」という警告が発せられていたわけですから、まさに「事象」がどう進むのかということ(つまり「最悪の事態」がどういうものか)を明確にし、すべての情報を余すところなく正しく開示して、国民と世界に虚心坦懐に語り、よびかけて、初動から時を置かず「世界の知恵と力」を結集して立ち向かっていれば、もちろん事態は深刻であることには変わりがないとしても、このような底なしの「泥沼」にはまることはなかったと言えます。

 今となれば、効果のほどはいざしらず、とにかく水を注いで冷やすということをやめることは「恐ろしいまでの破綻」を招きよせることに他ならず、しかし水をかけまくる、注ぎ続けるということを続ける限り本来的な冷却系の回復に取り組むことが極めて困難という「二律背反」の地獄に苦しむということが避けられなくなってしまったというわけです。

 まさに、なんとかいう副大臣だかが言ったように「神のみぞ知る」というところに来てしまっているのですから、地元の福島の人たちのみならず、国民は救われません。

 発災の2日目にして、私のような素人でも身近な人たちとの話で、「これはチェルノブイリのような『石棺』で閉じ込めるしかないだろう。しかしそれを可能にするために、どう冷やすのかだろう。『石棺』による閉じ込めを可能とするためにどうするのかを考えないと大変なことになる・・・」と話し合ったものです。
 発災2日目のことです。

 何も知らない「素人」でもそれぐらいのことはわかったのです。
 いまさら「布で覆う」などという絵空事を云々するのなら、初動でなすべき決断と対処、対策があったはずです。

 ここに至れば、どれほど「キナ臭い」ものであれ、とにかく「世界総がかり」の取り組みに望みをかけるしかありません。

 だからこそ、ここまでの「泥沼状態」を招き寄せた人々ははっきりと責任を全うすべきなのです。

 それにしても、きのうも書きましたが、原子力産業という、産−官−学−政を結ぶ度し難いまでの「闇の構図」をどうするのか、それこそ「FUKUSHIMA」をのりこえたとしても、立ち向かうべき問題の根は深いと言うべきです。

 そして、昨日の東電勝俣会長の会見の質疑について、けさの新聞をはじめ、なぜかほとんどのメディアは触れていないのですが、注目すべき「やりとり」がされています。

 ―事故当時、マスコミを引き連れて、中国へ訪問旅行に行っていたのか。旅費は東電持ちか・・・

 勝俣会長「全額東電負担ではない。詳細はよく分からないが、たぶん、多めには出していると思う。マスコミ幹部というのとは若干違う。OBの研究会、勉強会の方々。誰といったかはプライベートの問題なので・・・」

 ―どの社なのか

 勝俣会長「責任者の方によく確認して対応を考えさせていただきたい。2〜3日中にどういうことになっているか照会したい」

 産−官−学−政と書きましたが、ここに「メディア」を加えなければならないという根深い構図が見えてくることに、めまいがする思いです。

posted by 木村知義 at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 時々日録
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