2010年06月14日

追補、カギを握る中国・・・??

 「カギを握る中国・・・??」を書いたのは、深夜、きょう未明でしたので、朝刊に目を通す前でした。
 けさ届いた朝刊各紙を見て、いささか複雑な思いにとらわれました。
 う〜む、これは「追補」が必要ではないかと考えましたので、以下に補足します。
 問題は菅直人首相と中国の温家宝首相の「電話会談」についての報道です。
 日中間の懸案の「東シナ海ガス田の共同開発問題」などについては各紙の報道で大差ないのですが、昨夜(きょう未明)に書いたブログで焦点を当てた、「天安」問題をめぐる日中間の「連携」については、ささいな表現の違いだとして見逃すことのできない問題をはらんでいるのではないかと思いました。
 その部分にかかわる各紙の「表現」を吟味する意味で抜粋して引用してみます。(前後の文脈を切り取るとわからなくなるところもあるので、引用は前後を含みます。)

 朝日:菅直人首相は13日夜、中国の温家宝首相と約25分間電話協議した。両氏は東シナ海ガス田の共同開発について早期に条約締結交渉に入ることを確認し、韓国の哨戒艦沈没事件について緊密に連携していくことで一致。・・・

 毎日:韓国の哨戒艦沈没事件について、菅首相が「国連安全保障理事会での議論も始まるので、日中で連携し、国際社会の意志を示していくよう連絡を取り合いたい」と呼びかけ、温首相も「日中双方の緊密な連絡が重要だ」と応じた。

 読売:韓国海軍哨戒艦沈没事件を巡る対応については、日中双方が緊密に連絡を取り合っていくことで一致した。

 日経:韓国の哨戒艦沈没事件を巡っては、菅首相が「国連安全保障理事会で議論が始まる。日中で連携して国際社会の意思を示すよう連絡を取り合いたい」と提案。温首相は「緊密な連絡が重要だ」と語った。

 産経:菅首相は北朝鮮による韓国哨戒艦撃沈事件に関し「国際社会の意思を示していくように日中で連絡を取り合っていきたい」としたほか、「ホットラインを今後も継続し、戦略的互恵関係をさらに深めていきたい」と述べた。温首相は「日中双方の緻密(ちみつ)な連絡が重要だ」と応じた。会談では東シナ海のガス田開発の早期交渉開始でも一致した。

 東京:日本側の説明によると、菅氏は北朝鮮製魚雷との調査結果が出た韓国海軍哨戒艦沈没について「国連安全保障理事会での議論も始まる。日中で連携して国際社会の意思を示すよう連絡を取り合っていきたい」と要請。温氏は「日中の緊密な連携が重要だ」と述べるにとどめた。

 昨夜(きょう未明)のブログは通信社の報道をもとにして書きましたので、それも引いておきます。

 共同:日本側の説明によると、菅氏は韓国海軍哨戒艦沈没について「日中で連携して国際社会の意思を示すよう連絡を取り合っていきたい」と要請した。

 時事: 一方、韓国哨戒艦沈没事件に関し、菅首相は「国連安全保障理事会の議論が始まるので、日中が連携して(北朝鮮に対し)国際社会の意思を示すよう連絡を取り合っていきたい」と要請。温首相は「日中の緊密な連携が重要だ」と述べた。 

 ちなみにNHKニュースでは「また、菅総理大臣が、韓国の哨戒艦の沈没事件について、『国連の安全保障理事会での議論が始まるので、日中両国が連携して国際社会の意思を示せるよう、連絡を取り合っていきたい』と述べたのに対し、温首相は「日中双方の緊密な連絡が重要だ」と述べました。」と伝えていました。

 私が、けさ朝刊を開いて「エッ!」と思ったのは、朝日の「両氏は東シナ海ガス田の共同開発について早期に条約締結交渉に入ることを確認し、韓国の哨戒艦沈没事件について緊密に連携していくことで一致。」というくだりにぶつかったからです。

 そこで各紙の報道を比較、精査してみなければと思って、読み比べてみると、読売もほぼ同趣旨の「韓国海軍哨戒艦沈没事件を巡る対応については、日中双方が緊密に連絡を取り合っていくことで一致した。」となっているのですが、それ以外は微妙に含みのある表現で伝えていることがわかりました。
(「連携」と「連絡」という言葉の使い分けも含めてどう言ったのか、そこには重要な「含み」があると考えるべきことは当然です。)

 ここでどれがどうだとあげつらうことは控えますが、上記の各紙各社の報道を比較、吟味してみると、ことほど左様に、危ういものがあると言わざるをえないものが見えてきます。

 どうでしょうか?!
 ブログで取り上げた、「天安」問題をめぐって、北朝鮮、あるいは朝鮮半島問題への中国のスタンスをどう読み解くのかという問題は「中国がカギを握っている」と軽く言ってしまえるほど容易いことではないことがわかるのではないでしょうか。

 ミスリードしてはならない!というのは言うほど簡単ではない、ということを、情報の受け手である私たちもしっかり知っておく必要があると、残念ながら、言わざるをえません。

 しかし、それにしても、昨夜の電話会談には外務省の薮中次官、斎木アジア大洋州局長をはじめ仙谷官房長官、古川、福山の両官房副長官も同席しているわけですから、官邸、もしくは外務省の発表だけを鵜呑みにするのではなく、情報のクロスチェックをしていれば「韓国の哨戒艦沈没事件について緊密に連携していくことで一致。」などという記事が出てくるわけはないと思うのですが、そんなことは承知の上で、あえてこうした記事に仕立てたのでしょうか。であるならその含意は何なのでしょうか。

 もし「天安」問題で日中が「緊密に連携していくことで一致」したというなら大ニュースではないでしょうか。

 さりげなく、こうしたミスリードをして、結局、国連の安保理で中国が韓国や日本に同調しないという局面になったとき、またもや中国を非難して終わるという始末のつけ方になるのでしょうか。

 私は、中国のスタンスが良いとか、どうとかいう議論をしているのではないということはお分かりになると思います。

 何気ない、あるいは一見些細な「表現の違い」のように見えるところに、実は重要な問題が隠されていることを見ておかなければ、日々生起する「出来事」の本質を理解できず、右往左往して、あるときにはこっちを非難し、またあるときには、あっちを断ずるというようなことになって、私たちが世界に対して、あるいは時代に対してどう向き合うべきなのかという本質的な問題を深めて考えることが出来なくなってしまうのではないかと危惧を抱くのです。

 さて、日中は「天安」問題で、本当に、「緊密に連携していくことで一致」したのでしょうか。
 
 この記事の筆を執った記者は、あるいはその原稿を受けたデスクは、いま、何を考えているのでしょうか。

 あるいは、そんなことは何も気になることもなく、今も忙しく取材に走り回っているのでしょうか、デスクとして記者から上がってくる記事に読みふけって?いるのでしょうか。

 なかなか、「病い」は深いと言わざるをえません。
 
 このブログの読者のみなさんには、昨夜(きょう未明)のブログと読みあわせて考えていただければと思います。
なお、昨夜書いたブログのアップ後に、中朝友好協力相互援助条約にかかわるコメントを補足、加筆しましたのでご了解ください。
 中段パートに(・・・)として表記してあります。


posted by 木村知義 at 11:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 時々日録
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