2010年04月29日

普天間、朝鮮半島、中国そしてアジアへ

 また、少しばかりコラムの間があいてしまいました。それにしてもとため息をつきながら毎日のニュースを追う日々となっています。

 さてそこで、まずこれからです。
 
 普天間−ワシントン核サミット−黄ジャンヨプ訪米、来日−金正日総書記訪中問題−天安沈没「事故」−韓国6月地方選挙−中国海軍演習−中井拉致担当相訪韓−金賢姫来日問題−小沢幹事長と検察審査会−上海万博開幕、そしてキャンベル国務次官補来日と日米同盟の今後、さらには東アジア共同体構想・・・。

 なんだか「判じ物」めいた書き出しですが、最近の「国際ニュース」(国際と国内の区分けをすることに意味がないということは自明です)のあれこれです。

 ところで、これらは本当に「あれ、これ」なのだろうか、否!断じてNo!これらが「一筋の糸」でつながっていることを見落としてはならない、というのが私の問題意識です。

 そこでまず、普天間飛行場の移設問題からです。

 沖縄では25日の日曜日に普天間飛行場の移設問題をめぐって大規模な県民集会が開かれました。9万人の人々が参加したという集会について伝えるテレビニュースを見ながら、普天間問題にかかわって、というより「沖縄の基地問題」について抱き続けているなんともいえない「違和感」が一層昂じたのでした。以下は注目して見たその日夕方のニュースのコメントです。

 「アメリカ軍普天間基地の沖縄県外や国外への移設を求める県民大会が沖縄県で開かれ、仲井真知事は『集まった人たちの熱気が日米両政府を動かして、納得のいく解決策を用意してくれると確信している』と述べ、鳩山政権に対し、基地の県外や国外移設を実現するよう求めました。県民大会は、アメリカ軍普天間基地の沖縄県外や国外への移設を日米両政府に求めるため、沖縄県読谷村で開かれ、会場のグラウンドは参加者でいっぱいになり、周囲にも人があふれました。大会であいさつに立った沖縄県の仲井真知事は『戦後、基地だけは変わることなく目の前にあり、不公平で、差別に近い印象を持つ。沖縄の基地問題は沖縄だけの問題ではなく、きょう集まった人たちの熱気が日米両政府を動かして、納得のいく解決策を用意してくれると確信している』と述べ、鳩山政権に対し、基地の県外や国外移設を実現するよう求めました。また、大会では、普天間基地を抱える宜野湾市や、基地の移設が検討されている名護市の市長などが、基地の県外や国外への移設を訴えました。」

 「政府は、今回の大会について、県民の声の表れの一つだと受けとめています。そして、県民の負担軽減を図ることができる政府案の具体化を急ぎ、速やかに、アメリカと移設先双方と正式な交渉に入りたい考えで、沖縄県内だけでなく、鹿児島県の徳之島に基地機能の一部を移す案などを検討しています。しかし、これまでの非公式の協議でアメリカ側は、一部だけの移設は運用上好ましくないという考えを示しているほか、徳之島でも大規模な反対集会が開かれるなど反発が強まっています。このため、政府内では、現行案を修正して陸上から遠ざける案や、浅瀬の沖合にくいを打ち込み、その上に滑走路を作る案なども検討できないかという意見も出始めています。」

 「前原国土交通大臣は記者団に対し、『沖縄県民の皆さん方のご意向はしっかり受けとめなければいけない。鳩山総理大臣が、できるだけ県外にという思いで努力されていることは、たいへん結構なことで、われわれも後押しをしなくてはいけないと思う』と述べました。その一方で、前原大臣は『日米間の協定のたてつけでは、現在の辺野古に基地を移設するという考え方はそのまま生きている。私が今申し上げられるのは、あらゆる選択肢を想定して、日米同盟関係の実効性の確保と地元住民のご理解、これを両立する形で問題を解決するということに尽きる』と述べ、あらゆる選択肢を検討することが必要という考えを示しました。」

 随所に重要なキィーワードともいうべきものがちらばっていて、本質的に問われるべき問題が潜んでいるというべきですが、翌日の朝刊各紙の紙面もおおむねこうした論調から外れるものではありませんでした。

 おおむねと断ったのは、
 「知事は『県内移設反対』を明言しなかったが、参加した県民の一部からは、大会の過熱ぶりが全国に誤ったメッセージを送り、同飛行場の移設はおろか、日米両政府間で約束された嘉手納以南の基地返還構想も頓挫(とんざ)するのでは…と懸念する声も出た。」

 「この日、主催者の要請で大会参加者は黄色いものを身につけた。県内移設に反対する者にとって黄色は特別の意味を持つ。3月25日、高嶺善伸沖縄県議会議長が黄色の『かりゆし』姿で北沢俊美防衛相との会談に臨み、『サッカーにはイエローカードというのがある。県民の思いを込めて黄色いかりゆしにしました』と政府への抗議の意思を表明した。黄色は政府への反感を象徴する色なのだ。 ところが、仲井真知事は青いかりゆしで登場した。関係者によると、会場入りするまで黄色のかりゆしを着用していたが、直前に着替えたのだという。仲井真知事には『県内移設反対』を強く訴える意図がなかったことになる。」「知事は大会後、記者団に『いろんな方がいろんな考えを持っており、単純に表題通りではない』と述べた。県内移設に含みを残した発言で、反対を唱える市民グループ主導の“暴走”を牽制(けんせい)する思惑も見え隠れする。なお、主催者は大会参加者を9万人と発表したが、情報関係者は『実際には3万人前後だったようだ』と語った。」

 と伝えた新聞もあるわけですから、少しばかりの留保が必要ということでしょう。しかし大体はこのテレビニュースの論調から大きく外れるものはなく、いわばこれがおおむねの「スタンダード」ということなのでしょう。

 もっとも「9万人」ではなく「3万人だったようだ」と、主催者発表を否定するために持ち出したソースが「情報関係者」だというくだりには思わず苦笑いしてしまいましたが・・・。
 ちなみに、この記者とどうやら親密な関係にあるらしいこの「情報関係者」とはどんな人物なのか教えてほしいものですね。

 そんな「冗談」(本当は冗談だとは言えません)はさておき、この記事にある、仲井真知事には「県内移設反対を強く訴える意図はなかった」という指摘は大事なところだろうと思いますので、「記者の意図」がどうあれ、この記事も大いに参考になるというべきものでしょう。

 さて、そこでなのですが、先週金曜日(23日)、アジア記者クラブの例会で、沖縄県宜野湾市の伊波洋一市長の話を聴きました。もちろん普天間基地移設問題がテーマですが、この問題の実相、実体と本質がメディアで伝えられていないこと、識者たちの言説のなかでも真実に迫るものは少数であり、かつ、それらも片隅に追いやられているという現在の言論状況を、あらためて痛感しました。

 伊波市長がこれまで何を語り、この問題にどう立ち向かってきたのか、活字では何度か読んできたつもりでしたが、肉声で語りかける場に足を運んだのは初めてでした。

 メディアで真剣にとりあげられることが少ないとはいえ、実は、問題の実体、実相についてはすでにくりかえし語られているところです。要は、普天間飛行場の移設問題がいかに虚構の上につくりあげられた「問題」なのか、つまり日米同盟の深い闇=日本の米国への従属構造の闇によって「つくりあげられた問題」であるのかということです。

 2005年10月の「日米同盟:未来のための変革と再編」から2006年5月の「再編実施のためのロードマップ」さらには同年7月の「グアム統合軍事開発計画」を精査してみると、米軍は、米国自身の世界戦略の見直しの必要性から、沖縄駐留兵力のほとんどを自らの決断でグアムに移転させる計画をすすめていること、そのためにほぼ1兆円になんなんとする日本の「カネ」が使われること、にもかかわらず、グアムに移って沖縄には存在しなくなるはずの「幻の海兵隊」のために代替基地が必要だという虚構がつくりあげられ、それをめぐって政権もメディアも、「本当のこと」には知らんふりを決め込んで「代替基地をどこにつくるのか!」「期限は5月末までだ!」と「大騒ぎして右往左往」という構図がくっきりと浮かび上がってくる、伊波市長の話でした。

 その根拠となる膨大で詳細な調査資料は宜野湾市のWebサイトで公開されていますのでそこに譲ります。  http://www.city.ginowan.okinawa.jp から入って「普天間飛行場の危険性除去と海兵隊のグアム移転」そのほかです。

 
 重要なことは、現在進行している「本当のこと」が国会でも国民にも共有されていないことだというわけです。
 伊波市長は岡田外務大臣が沖縄を訪れた際にも直接ぶつけたが、「自分が聞いていることとは認識が異なる」といった反応で、日本政府もまた「(米軍のグアム統合計画は)正式な決定ではない」としているというのです。

 しかし、伊波市長は事実に基づいて「海兵隊のグアム移転が司令部中心というのは間違いであり、沖縄海兵隊の主要な部隊が一体的にグアムに移転すること、そこには普天間飛行場の海兵隊ヘリ部隊も含まれる」ことを米軍サイドの資料を詳細にあげながら、引き算、足し算の単純な算数レベルの計算をするだけで沖縄にどうして「一万人規模」の兵員が残り、かつそのための基地が必要なのか、全く説明がつかないということを端的に示して見せたのです。

 問題は、こんな「簡単なこと」がなぜ政府でもあるいはメディアでも検証されず、伝えられないのか、それが不思議でならないというわけです。

 そしてそこに見えてくるのは、米軍には沖縄にいてもらわねばならないとする日本の「ひと群れ」の人々と、そうした人々と利害を共にする米国側のこれまた「ひと群れ」の人々がいて、それらの「深い闇」が存在しているということです。

 一体誰が米軍を沖縄に「引き止め」それによってどのような利益を得るのか、それこそが重要なところなのでしょうが、それだけにこの琴線に触れる事実を報じることは、まさに命がけということになるのでしょう。

 「海兵隊がグアムに行くのはアメリカの意志であり、アメリカはグアムにいる方が機動的に動けると考えている。しかし、日本は、海兵隊は去って行かないでくれと言っている。米国にとっては、基地というものは使わなくてもあったほうがいい。しかも日本政府がカネを出してくれるというのだからなおさらあったほうがいい!」というわけで、まあカネは日本が出すと言っているのだから、言った限りは基地でもなんでも造ってもらおうじゃないかというのが「普天間移設問題の日米合意」ということになるわけです。

 伊波市長は「日本政府は(こうした本質を)知らないで(普天間の移設問題を)言っているのか、知らんふりをして言っているのかわからないが、普天間の部隊が全部グアムに行くのになぜ代替施設が必要なのかわからない」としたう上で「マスコミにも大きな責任がある。外務省や防衛省、政府の言うことをただそのまま書いているだけだ。グアムに行って取材すればすぐにわかることだ。」とメディアの在り方についても厳しく語りました。

 いわゆる「密約」問題で「調査」を命じた(これが本当の意味で実体をあきらかにするものかどうかは別にしてですが)岡田外務大臣にかかわって伊波市長は「岡田外相に言いたいのは、『密約』を明らかにしようというのはいいが、それなら、いま7000億円ものカネを出してすすめている沖縄駐留米軍のグアム移転について国民に明らかにすべきではないか。それをせずに日米で示し合わせて要りもしない基地を造ろうとするのは、自分たちで『密約』をつくろうとしているようなものだ」と語ると会場から失笑が漏れたものでした。

 これ以上何かを付け加える必要もないくらい完膚なきまでに事の実体と本質を語っていると思うのは私だけでしょうか。

 それにしても「深い闇」にあるのは日米関係だけでなく、まさにメディアのあり方だというところに気づくと、問題の深刻さが一層増すのでした。

 そして、さらに、それにしてもです。
 「沖縄の負担を軽減させてあげたいという思いで努力している最中だ。難しいことは最初から分かっている。」(4.21「朝日」鳩山首相のコメント)という記事を目の前にするとき、この人の認識は一体どういうものなのだろうかと情けなくなります。
 
 フィクションと「深い闇」にまみれた「普天間飛行場の移設問題」ですが、百歩譲ったとして「沖縄の負担を軽減させてあげる」ために取り組む問題なのでしょうか。
 
 さらに、ぶら下がりの記者たちも、ここに何も引っかかることもなくメモして、ただ唯々諾々と記事を書いてよしとしているのでしょうか。

 事態は、というより病はというべきでしょう、病はもはや回復しがたいところにまで来ているというべきではないでしょうか。

 またもや、それにしてもです。
 それにしても、このような認識の人物をわれわれは政権交代という「歴史的な出来事」?!で首相の座につけることにしてしまったのだと考えると、本当にことばを失います。

 何度も何度も、それにしてもです。
 それにしても「私は愚かな首相かもしれない。12月に辺野古に決めていれば、どんなに楽だったか計り知れない。」というのです。
 これ以上何か書くべきことがあるでしょうか。

 しかし、問題はこんな「愚か」なことでは終わりません。

 ではなぜ沖縄の基地を残そうとするのか、その本質は何なのかということになります。

 ここを深く考えていくことこそがいま重要なのだと考えます。
 さらに書き継いでいくことにします。











posted by 木村知義 at 18:26| Comment(0) | TrackBack(1) | 時々日録
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