2009年09月11日

「政権交代」に何を見るべきなのか?!

 仙台から戻って、中国に出かけていた10日間も含めて、この三週間ほどの国内と世界、とりわけ北東アジア、中国、朝鮮半島の「動き」をトレースしていますが、「動き」と情報の脈絡を押さえるのが大変で、あらためて8月下旬から、アジアそして日本が激動のなかにあることを痛感しています。

 言うまでもないことですが、世界が歴史的な大転換期にあるいま、その「渦中」に身を置いていると、変化あるいは「転換」というものの歴史的な意味を的確に認識することがとても難しいということをあらためて痛感します。

 後から振り返って意味づけることは誰でもできる、といえば語弊がありますが、比較的たやすくできるのでしょうが、問題は動きの真っただ中で後の評価に耐えうる分析と問題の提示ができるか、さらには展望を語ることができるかどうか、まさに言論が厳しく問われるところだと思います。

 その意味ではこのコラムを書く筆が重くなってしまいます。

 以前にも述べましたが、書くべきことは「山積」していますが、まず政権交代です。

 民主、社民、国民新党の「連立合意」がなんとか成立して、メディアは新内閣の顔ぶれの予想と人物月旦に「懸命」です。

 またテレビやスポーツ紙では「芸能情報」として民主党の新人議員の「経歴」が面白おかしく伝えられています。

 「マスコミは、ただ批判すればよいという風潮が出来てしまって、『批判のための批判』という報道が多くなったことも、戦後の弊害ではあります。わたくしからみれば、『批判』でもなく、『評論』でもなく『面白おかしく茶化している』という感じです。別にNHKのようなスタイルがよいとも思っていませんが。『批判』も『批評』もだれのためのものなのか、視点が一番大事です。政治も、誰のための政治なのか。それが一番問題です。」

 これは日頃から私のブログのコラムやホームページの記事について厳しく読み込んで叱咤してくれている人物からきのう届いたメールに記されていたものです。

 また、「とにかく、自民党『一党独裁』ではないにしろ、『自民党ごまかし政権』を続けてきたツケを、解決していかねばならないわけで、政権交代を引き受けた民主党には、期待をするだけではなく、国民がみなで支える努力をしないといけません。」ともありました。

 いまのメディアのあり方を鋭く衝く指摘だと思います。

 誰が大臣になるのかの予想で盛り上がるのも、それはそれで重要な意味もあるわけですが、まさにどういう視点で関心を持つのか、なぜ、なんのために人事に注目するのかが問われます。

 一週間余りの仙台滞在中、夫妻で力を合わせて「コリア文庫」を主宰し優れた翻訳活動を重ねている青柳純一氏と2夜にわたって日本の政治状況、文化をめぐる状況、朝鮮半島情勢について意見を交わす機会を持ちました。
 
 また青柳氏の配意で、毎月、月刊総合誌を読み真摯な議論を重ねている年配の方々とも話し合う時間を持つことができました。

 そのいずれの場でも、当然のことながら、今回の「政権交代」をどうとらえるのかが最大のテーマになりました。

 そこから浮かび上がってくるのは、今回の「政権交代」が必ずしも民主党の掲げるマニフェストに盛られた「政策」のひとつひとつに同意、賛成したがゆえに実現したわけではないということです。
 
 いわば個別には賛成できないこともあるがそれでも民主党に投票したということで、民主党の掲げるものをすべてよしとしたわけではないということです。

 この点は極めて重要なところだと思います。

 つまり、それだけ多くの人に、なんとかして現状を変えなければならないという思いが強く、切実に働いたということであり、それが選挙を通じた「政権交代」を現実のものにしたということです。

 従って、そこには当の民主党がこの「政権交代」にこめられた国民の思いを誠実、正確に受けとめることができるかどうかという重い課題と、さまざまな留保をのりこえて票を投じた有権者、国民の側にも相応の重い責任が生じたということです。

 この点について青柳氏との討論では、「楽観の青柳、悲観の木村ですね、二人を足して二で割るとちょうどいいでしょうか・・・」と笑い話になったのですが、論点は「市民の力」という問題に集中しました。

 つまり、民主党の構成や政治思想、志向するものにはさまざま異論や問題があるが、それでも民主党を政権に押し上げた「市民の力」というものは、民主党自身が決して無視できるものではなく、大きな力として民主党を取り巻いていくことになるはずで、そこにこそ今回の「政権交代」の意味があるというのです。

 楽観と悲観について言うならば、青柳氏と私で考え方が異なるというのではなく、この日本で「市民の力」というものに期待と希望を持ちたいという点では一致するのですが、私は、本当にそれだけの「市民の力」が日本の社会に根付いているだろうかという点で、それほど楽観できないのではないかというものでした。

 もちろん青柳氏も楽観はしていないのですが、希望を持つことこそがこれからの歴史をひらく力になるという立場でした。

 そして、意見を交わす機会を持った年配の方々も、やはり「政権交代」を後退させないために市民の力が大事になる、問われるということで一致していました。

 こうして書いてみると、いかにもメディアの取り上げている問題や「論調」(これをもって本当に「論」というに値する質的深まりがあるかどうかはなはだこころもとないのでカギカッコに入れているのですが)などとかけ離れた、ユートピアのような議論をしているように響くかもしれません。
 
 現実の政治というのはそんなもんじゃないんだよ!という「玄人筋」の声が聞こえてきそうです。

 しかし、ここはまさに私たちもまたその一人である「市民」の声に誠実に耳をそば立て、耳を傾けてみなければならないのではないかと思います。

 つまり、政治をふつうの市民の感覚で考え、行っていくという、これまたごくごく普通のあり方を取り戻すことが、今回の「政権交代」にこめられた民意だったというべきではないでしょうか。
 
 そのような「玄人筋」の政治を転換するべきだというのが、今回の「政権交代」にこめられた意味だったというべきです。

 ここまで政権交代にもまたカギカッコをつけて語ってきたのはそうした意味を込めたもので、従来の政治屋的感覚で権力の移動をとらえ、「器」が変わっただけでここぞとばかり党利党略、私利私欲に走る構造を続けるならば、それこそ市民からのしっぺ返しに会うことを覚悟すべきだと考えます。

 またその意味で、われわれの一人ひとりが等しく、今回の政権交代を実現させた責任を自覚する必要があると思うのです。

 つまり、その意味で、そうした「われわれ」の一構成要素としてのメディアもまた等しく責を負うべきだという認識が問われてくるのだと思います。

 こうして考えてくると、民主党が政権についてまずしなければならないことは、「55年体制」といわれるものを含め、戦後の日本がたどった道筋のなかで、私たちの目から隠され、口をつぐんで覆い隠されてきたさまざまな「仕組み」や「問題」をどこまで洗いざらい白日の下にさらすことができるのか、そしてわれわれの検証に委ねることができるのかということではないでしょうか。

 週刊誌でさえが『民主党革命・日本が変わる』と表紙に掲げたのはこういうことを言うのではないでしょうか。

 もちろん私は、今回の選挙を通じての「政権交代」をもって革命だなどと夢のようなことを考えているのではありません。

 しかし、少なくとも「いまを変えなければならない」という多くの人びとの切実な思いの結集がこの「政権交代」であったという、この一点について、戦後日本社会のあり方を批判的に検証する立場から、あるいはもっと言えば近代日本のあり方を見据えながら、いましっかりと考えてみなければならなのではないかと痛切に思うのです。

 メディアで働く人びとの歴史意識もまた、その意味で厳しく問われているのだろうと思います。

 さて、スポーツ紙やテレビもまた、新人議員が「濡れ場」を演じていたなどと面白おかしくあげつらっている場合でしょうか。

 あるいは大臣の予想をあたかも競馬の勝ち馬予想のごとく語ることでしょうか。

 メディアであれ、われわれであれ、いま試されているのは、愚直なまでの真剣さ、誠実さではないでしょうか。

 そうした「ふつうの感覚」を取り戻すことの大事さをこそ、今回の選挙が、そしてその結果としての「政権交代」が語りかけているのだと確信するのです。



追伸、私の運営するホームページのなかの「小島正憲の凝視中国」のページに、小島氏からの最新レポート「民主党大勝:中国マスコミの意外な論評」をアップしました。
 また9月4日付の「ウルムチ暴動緊急短信」も掲載しています。せひご一読ください。

Webサイトは
http://www.shakaidotai.com/index.html
です。








posted by 木村知義 at 11:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 時々日録
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