2009年07月08日

続・核持ち込み密約報道をどう読む・・・

  前回のコラムで「この間の政治の液状化、政権の「迷走ぶり」を目の前にして、その背後で、確かに、いま、何かが動き始めていると確信する」と書きましたが、その動きは急です。

 今朝の読売新聞の一面トップには、

 「核の傘」日米協議へ 有事の運用確認 月内にも初会合

 という見出しが躍りました。

 前回のコラムで引いた『WEDGE』7月号に掲載された「北朝鮮の暴走 日米同盟強化のため今こそ核の傘の議論を」の筆者、読売新聞政治部次長の飯塚恵子記者によるワシントン発の記事です。

【ワシントン=飯塚恵子】日米両政府は7日、米国の「核の傘」を巡る両国の協議の場を初めて正式に設け、月内にも初会合を開く方向で検討を始めた。

 複数の日米関係筋が明らかにした。外務、防衛両省と米国務省、国防総省の局次長・審議官級の枠組みとする方向で、協議では、有事の際の核兵器の具体的な運用に関して日本側が説明を受け、オバマ大統領が目指す大幅な核軍縮と核抑止の整合性などを話し合う。
 
 日本に対する「核の傘」は、日米安全保障条約に基づき、米国が保有する核兵器によって日本に対する第三国からの核攻撃を抑止する仕組みだ。米国は、同様の仕組みを持つ北大西洋条約機構(NATO)諸国とは、有事の際の核兵器の運用や手順などの具体的な情報を共有している。
 
 これに対し、唯一の被爆国である日本では、国民に核兵器への抵抗感が強く、運用について協議すれば、野党などから強い反発が出る状況だった。また、米側には日本の機密漏洩への懸念も根強く、日米間ではほとんど議題に上らなかった。
 
 しかし、北朝鮮が5月に2回目の核実験を行い、中国も核戦力の近代化を進めるなど、東アジアの安全保障環境は不安定さを増している。米韓両国は6月、米国による「核の傘」の韓国への提供を明記する首脳合意文書を交わした。日本政府でも「核の傘」の有用性を再確認し、米側から運用の具体的説明を受けるべきだとの声が高まっていた。
 
 一方、米側では、オバマ大統領が4月、究極の目標として「核兵器のない世界」を目指す考えを表明した。今月6日のロシアとの協議では、12月に失効する第1次戦略兵器削減条約(START1)に代わる新たな取り組みとして、核弾頭配備数を双方が最低レベルで1500個まで大幅削減することで合意した。
 
 新方針は、オバマ政権が12月にまとめる、米史上3回目の「核戦力体制見直し(NPR)」に反映される予定だ。日本としてはこの時期までに、有事に備えた「日米共同作戦計画」に核兵器使用がどう組み込まれているかなど運用について説明を受けたうえで、日本側の要望を伝える考えだ。NPRの全容は非公開で、協議内容も基本的には公表されない見通しだ。
 
 この一面の記事に加えて、飯塚記者は二面の「解説記事」で、

 「日米両政府が『核の傘』に関する協議を初めて正式に行う方向で検討を始めたのは、北朝鮮の核開発の進展などを受けて、『核の傘』の信頼性の確認を日本側が求めたのがきっかけだ。」

 「日本側の懸念は、米国の核軍縮や核弾頭の老朽化の中で、「核の傘」は有事の際に本当に機能するのか、という点にある。」

 「一方、米国でも保守系議員や識者らを中心に、『米国が信頼できる「核の傘」の姿を示さなければ、日本や韓国は北朝鮮などの動きに対処するため、自ら核武装するのではないか』という警戒感がうまれている。こうした事情から、米政府も日本の要請を受け入れる必要があると判断した。」

 と書いています。 

 けさの各紙の中では読売の「特ダネ」として掲載されたこの記事ですが、先にふれた『WEDGE』7月号に掲載された飯塚氏執筆の内容と見事に平仄が合っていることに気づきます。
 
 またけさは、毎日新聞の一面トップには、

 核艦船寄港の容認検討 三原則修正 74年、田中内閣時 大河原元駐米大使証言

 という見出しで、

 「1974年11月のフォード米大統領(当時)の来日に合わせ、日本政府が非核三原則の「持ち込ませず」を事実上修正し、核搭載艦船の寄港を公式に認める方向で検討をしていたことがわかった。外務省アメリカ局長から官房長に就任していた大河原良雄元駐米大使(90)が毎日新聞の取材に明らかにした。核搭載艦船については60年安保改定交渉時に結ばれた寄港を認める密約がある。現職米大統領の初来日をきっかけに密約を解消し米国の核の傘を明確化する動きだったとみられる。」という記事が載りました。
 
 この動きは、金脈問題などにからんで当時の田中首相が退陣したため「話はそのまま立ち消えになったという。」としています。

 毎日も二面に「解説記事」を掲載して、その末尾で須藤孝記者は、
 
 「米国の『核の傘』という現実と、非核三原則に象徴される唯一の被爆国の立場との間の矛盾を密約であいまいにしたことが、日米間の不透明な関係を作った。その矛盾は今も変わらない。
 
 オバマ米大統領は『核兵器のない世界』を掲げ、新しい核政策を推進しようとしているが、北朝鮮の核実験の脅威を受ける日本にとって、米国の「核の傘」は今すぐには手放せない状況にある。
 
 しかし、日本の核政策の根本にある矛盾に日本政府が向き合わない限り、日米関係に潜む不透明さはより増幅されていくだろう。」

 と述べています。

 ただし、私の読解力が足りないのか、「北朝鮮の核実験の脅威を受ける日本にとって、米国の『核の傘』は今すぐには手放せない状況にある。」ということと、最末尾の「しかし」以降のくだりが、一体何を言おうとしているのか曖昧で、要は非核三原則を見直せと言っているのか、守れと言っているのか、須藤氏の考えるところが明確には読み取れないのですが、それにしても、証言者は、またもや外務省元高官です。

 この前の日曜日(7月5日)の午前、NHKで放送された「日曜討論」で外務省OBの岡本行夫氏は、非核3原則の「見直し」について、政策論議はあってよいと思うとして、少なくとも核搭載艦船の領海通過は認めていい、その意味では「3点5ぐらい」でもいいのではないかと述べていました。

 この「日曜討論」では、拓殖大学学長の渡辺利夫氏が「集団的自衛権の行使」について、政策概念であって法理概念ではない!明日からでも政府解釈で変えられることだ、として、「日本の核」についても、保有、レンタル、開発などさまざまな選択肢について議論すべきだと主張していました。

 「核」にかかわる日米の「密約」問題についての外務省元高官の証言による「スクープ」で「火がついた」この問題ですが、こうして見ると、今回のあれこれが偶然の符合などではないことが一層鮮明に見えてきます。

 前回のコラムで、「スクープ」をめぐる風景が一変すると書いた所以です。

 また、「メディアで仕事をすることの容易ならざる『手ごわさ』を思い、複雑な気持ちになるのは、さて、私だけなのだろうか」とも書きました。

 そこでもうひとつ、きのう(7月7日)の産経新聞「正論」欄に元駐タイ大使の岡崎久彦氏が「村田発言の誠意を無にするな」と題して筆を執っています。

 岡崎氏は冒頭で、

 「核問題に関する村田良平・元外務次官の発言を新聞で見た時は、私はこの問題の新たな発展を期待して胸を躍らせた。

 村田氏とは電話一本していないが、捨て身の発言であることは聞かなくても分かる。公務員には職務上知り得た秘密を守る義務があり、それは退職後も適用され、懲役1年に及ぶ罰則もある。その危険を敢(あ)えて冒しても真実を語ろうという覚悟と見受けられた。

 永年の牡蠣(かき)がらのように固まった政府答弁を崩すにはこの位の捨て身の業が必要なのであるが、その後の展開は従来と全く変わらないのには失望した。」

 と、「密約問題」について証言した村田元外務事務次官の「捨て身の業」を賞賛しながら、しかし「その後の展開」が「従来と全く変わらない」ことに失望したと嘆いています。
 
 しかし、少なくとも、岡崎氏の「失望」についていえば、「心配には及ばない」?!と言える展開になってきているのではないでしょうか。

 それはとりもなおさず、私たちにとっては「大いに心配な」展開なのですが・・・。

 外務省元高官が何人も登場していますので、最後にもう一人、外務省OBの言説に耳を傾けておきたいと思います。

 それはこの4月まで日朝国交正常化交渉政府代表を務めた美根慶樹氏です。

 昨日、あるジャーナリストの会合で美根氏のお話を聴く機会を得たのですが、日朝交渉にかかわる部分はオフ・ザ・レコードの約束ですのでここで詳らかに触れることは控えます。

 ただし、核問題にかかわっては、先月はじめ(6月4日)の朝日新聞のオピニオン欄に「オバマ軍縮 非核国への核不使用から」という美根氏の所論が掲載されていますので、それを活用しながら、昨日のお話の重要な「示唆」について記しておきたいと考えます。

 美根氏は、「核兵器を使用したことがある唯一の核保有国として、米国には行動する道義的責任がある」として「核廃絶」に向けて努力することを語ったオバマ大統領のプラハ演説について「日本人としては感動した」としながらも、「しかし、核の使用については何も語っていない。オバマ演説は、自国がしていることの意味を客観的にとらえられていない・・・」と力を込めて語りました。

 北朝鮮の核実験は「相変わらずの暴挙だが、北朝鮮なりの事情もあれば、考えもある。とくに北朝鮮は米国からの核攻撃を恐れているが、米国は歴代政権の一貫した方針として核兵器を使う可能性をいつも残している。北朝鮮はこの安全保障上の問題がある限り核兵器を放棄しないだろう。
 
 90年代の米朝枠組み合意でも、また6者協議でもこの問題は取り上げられたが、米国は不完全な対応しかしなかった。これに対し、北朝鮮は安全保障を確保する必要から核開発するという態度をとってきた。北朝鮮の核問題を解決するには、査察の強化もさることながら、米国が北朝鮮に対し、『核兵器を保有し続ける限り核攻撃する可能性は保持する。北朝鮮が核兵器を放棄すれば攻撃しないことを明確に約束する』という論理で迫っていくべきだ。」
(朝日 2009年6月4日オピニオン欄)
 
 とする美根氏は、
 
 「このように交渉するには、米国が政策変更し、核兵器を持たない国には核攻撃しないこととしなければならない」と強調し、オバマ演説が核廃絶について語りながら「核兵器の使用問題」については何も触れていないと、鋭く問題を指摘しています。

 私たちは、美根氏の言説にこそ、いま耳を傾けるべきだと思います。

 さて、ここまで見てきたメディア状況を考えると、あるいは記者たちの記事と美根氏の言説を重ねてみると、ジャーナリストたらんとすることはなんと「手ごわい」営みだろうかと気の遠くなる思いがします。

 いや!記者は「事実」を伝えるのが仕事であって意見を述べるのは本務ではないという声が聞こえてきそうです。

 さて、そういう人とは、では「事実とは何か」という本質的な議論をしなければならないでしょうね。

 問題意識のありようについて問われているということが、問題の核心なのです。
 
 問題識とは何か?!

 まさかそこまで語らなければ話が通じないということは、ないでしょう。

 否、ない、と信じたいと思います。


 この間の「核密約問題」報道をどう読み解くのか、いまメディアが内包する問題性と、私たちの問題意識のありように鋭く迫る問題としてあることを痛感します。









posted by 木村知義 at 21:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 時々日録
この記事へのコメント
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Posted by スーパーコピー at 2013年11月14日 18:40
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Posted by スーパーコピー at 2014年06月28日 14:54
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