2009年04月20日

続「狂騒」の後に・・・

 14日のブログ記事で、先日話を聴く機会があった中国の戦略問題専門家の話として、アメリカの対北朝鮮政策が一定していないという指摘があったことを書きました。
 そこでとりわけ対照的だと感じるのは、このところ米国がキューバやベネゼエラのチャベス政権との関係改善の動きを見せていることです。

 カリブ海のトリニダード・トバゴの首都ポートオブスペインで開かれた、キューバを除く中南米カリブ諸国と米国、カナダの計34カ国が参加する米州首脳会議で、オバマ米大統領は開幕式典の演説で「米国はキューバとの新たな始まりを求めている」と述べて、キューバとの関係改善への意欲を示しました。
 半世紀にもわたる米国とキューバの敵対関係に変化の兆しが見えてきているわけです。

 またこの会議では、これまで激しい反米の姿勢をとり続けてきたベネゼエラのチャベス大統領がオバマ大統領と握手し、関係修復の動きが注目されました。

 このようにオバマ政権になってブッシュ政権にはなかった動きが見えてきたのですが、一方、朝鮮半島政策とりわけ対北朝鮮政策はというとボズワース氏を北朝鮮政策担当の特別代表に任命したことをおけば、かならずしも明確な方向性が示されないまま過ぎています。
 ブッシュ政権末期からの「停滞」を考えるとすでにかなりの時間がズルズルと過ぎているというべきです。

 米国の対北朝鮮政策がどのようなものなのかはっきり見えてこないということは、今回の「ミサイル発射問題」に深くかかわる要因として軽視できない問題だというべきです。

 そこで、中国の「高位の戦略問題専門家」の話について、筆者の責任で、北朝鮮の核、ミサイルにかかわる部分について、もう少し補足しておきたいと思います。
 以下は北朝鮮の核、ミサイルにかかわる話の要旨です。

 「米国の対北朝鮮政策が一定しておらずブレがある。北朝鮮が何を信用し、どう対応すればいいのかわからないことが問題を複雑にしている。
 米国の対北朝鮮政策の決定については国務省よりペンタゴン(国防総省)のほうがより強いとみるべきだ。
 米国はコントロールされた緊張関係を持ちたいと望んでいる。
 最良の道は6者協議をうまくやることだ。
 米国が韓国に核を配置しない、日本にも核を配置しないと明確にすれば中国は北朝鮮を説得できるかもしれない。
 しかし米国はつねに「あいまい政策」をとっている。
 金正日総書記の心理についても考えてみる必要があるだろう。
 
 北朝鮮は中国の改革開放政策に一定の留保を持っている。
 かつては中国の改革開放政策は資本主義の道を歩むものだとしていた。金正日総書記が何度かの訪中を重ね、深センの視察をしてはじめてその考えを改めた。そして北朝鮮も少し開放した。しかし、韓国などの思想が入ってきて崩壊につながることを恐れている。

 胡錦濤主席が訪朝した際かなりの額の経済支援を約束した。しかし戦争への備えが必要な状況が続くと経済政策部門にこれを投入しないだろう。韓国が「太陽政策」を続けていれば北朝鮮も開放政策をすすめやすかっただろうが・・・。

 98年以来ミサイル発射、核実験といろいろあったが、結局米国との直接対話をすることになった。ここまでもってきた金正日の知恵というものを軽視すべきではない。あれだけの国土で2000万人の人を生存させるのはたやすいことではない。

 いま国際社会は北朝鮮にひたすら悪罵を投げつけている。米国は意識的に北朝鮮を悪魔化している。しかし、国際関係というものは同じテーブルで話し合うことが必要だということを忘れてはならない。

 核、ミサイル問題について言うなら、ミサイルと核が拡散するのは、米国が過去たえずミサイルと核で恫喝するという政策をとってきたからだ。
 
 米国はイスラエルに核を与えた。インド、パキスタンの核実験にはじめは反対した。しかし終わったらまず米国が認めた。核は米国が他国を従わせるための道具となってきたのだ。

 北朝鮮の核を放棄させようとするなら、まず北朝鮮の安全を保証しなければならない。

 核兵器の全廃は世界の人民の願いだ。われわれ中国は最初に核を使用しない、核を持たない国を対象に使わないと言い続けてきている。中国の核政策ははっきりしている。米国やほかの国との核の軍拡競争はしない。いくつかの核保有国が同時に廃棄することが必要だ。そのためには多国間の協調がないとむずかしい。

 金日成も金正日も国の安全を第一においてきた。
 米国が北朝鮮に対するテロ支援国家の指定解除をしたが、その上に相互不可侵条約を結べば核、ミサイルの放棄を迫るということは理にかなっている。

 中国が北朝鮮を説得しようとするならまず米国の北朝鮮政策を変えるよう説得しなければならない。しかしケ小平、江沢民、胡錦濤、いずれの中国指導者も米国を説得できなかった。

 ではオバマ大統領を説得できるのかといえばそう簡単なことではないかもしれない。」

 私のメモを元にした要旨ですが、読み返してみると重要な指摘が随所にあることに気づきます。

 なによりも米国の対北朝鮮政策がどういうものになるのか、ここが重要なカギになっていることを見ておかなければならないと思います。
 とりわけ米朝の二国間での話し合いの重要性が見えてきます。

 そしてその場合のオバマ政権の「困難」ということにも目を凝らす必要があります。

 「北朝鮮ロケット発射、米軍需産業にとっては朗報か」

 これは北朝鮮のロケット発射を控えた今月5日、ロイターが配信した記事の見出しです。

 そこでは「北朝鮮によるロケット発射は、オバマ政権が軍事費削減の方針を打ち出す中、米ロッキード・マーチンや米ボーイングなど軍需産業大手にとっては良いニュースかもしれない。」としています。

 ブッシュ前政権の閣僚のうち唯一留任したゲーツ国防長官が今年1月、軍需企業に対して「9・11(同時多発テロ)で開いた国防費の蛇口は閉まりつつある」と通告したことや、オバマ大統領が国防総省に対して「冷戦時代の兵器への支出を抑える国防費の改革」を求めていることなどをとりあげながら、軍需産業を背景にした有力議員から「「北朝鮮の弾道ミサイル能力は米国や米軍、地域の友好国や同盟国にとって脅威だ」という警告が発せられていることが米国の軍需産業にとっては「朗報」となるかもしれないというわけです。

 軍産複合体の存在が、オバマ政権が対北朝鮮政策を打ち出す際の「困難」となりうることを如実に示すものだといえるでしょう。

 一方、16日の韓国聨合通信はワシントン発で注目すべき記事を伝えています。
 
 それによると「北朝鮮が6カ国協議不参加を宣言し国際原子力機関(IAEA)検証チームなどに退去を命じたことと関連し、米国務省が先ごろ北朝鮮と直接対話を行い米政府の立場を伝えていたことがわかった。同省のウッド副報道官が16日の定例会見で明らかにした。北朝鮮の長距離ロケット発射で米朝間の緊張が高まっているにもかかわらず、双方の対話チャンネルが稼動していることになり、冷却期間が予想より短くなるかどうかが注目される。ただ、ウッド副報道官は、米朝接触に用いたチャンネルや対話の内容については具体的な言及を避けた。」というのです。

 まさに中国の戦略問題専門家が指摘するように、米政権内部のペンタゴンと国務省のスタンスの違いを物語るニュースだといえます。
 同時に、従来から見られた、朝鮮半島政策をめぐる米政権内の角逐、対立が依然として根深く存在していることに十分注意を払う必要があるということです。

 さて、そこで注目すべき最新の「ニュース」です。

 米国のシラキュース大学の公共政策系大学院マクスウェルスクールのスチュアート・トーソン教授が15日、ワシントンのコリア経済研究所(KEI)で開かれた講演会で「北朝鮮側から米国の科学者で構成された代表団をこの夏ピョンヤンへ送って欲しいとの要請を受けた」ことを明らかにしたというのです。

 2001年以来北朝鮮の金策工業大学と交流を続けてきたトーソン教授は「今回の代表団の訪問目的は、北朝鮮と米国の科学者間に信頼関係を作り上げ、特にどの分野の科学交流が必要なのかを調べるため」だと説明し、「早ければ7月に代表団が北朝鮮を訪問できるよう準備中」と述べたということです。

 この米代表団は、「1975年にノーベル生理医学賞を受賞したデビッド・ボルティモア博士が引率し、コンピュータと情報通信をはじめとする科学分野で活動する科学者数名と科学団体、大学関係者などで構成する予定」で、今回の訪問が実現すれば2002年に20人、2004年に22人の米国の科学者らが金策工業大を訪問して以来4年ぶりの大型の科学者訪問団となるということです。

 こうした「水面下」での米朝両国の動きから目をはなすことができません。

 さらに今回の北朝鮮外務省の「声明」の中で、6者協議に「二度と絶対に参加しないし、6者会談のいかなる合意にもこれ以上拘束されないであろう」と述べるとともに「われわれの主体的な原子力エネルギー工業構造を完備するため、自前の軽水炉発電所の建設を積極的に検討するであろう」と「軽水炉」に言及している点は、1994年のいわゆる「枠組み合意」とそれがたどった「その後の経緯」についてもう一度復習することを迫っているといえます。

 結局、米朝の二国間交渉と、さらに「枠組み合意」がなぜ破綻したのかという地点に戻らざるをえないということになるのではないでしょうか。

 この「枠組み合意」の崩壊については、前にも元ワシントンポスト記者のドン・オーバードーファー氏の記事にふれて少し書いたことがありますが、メディアの報道に内在する問題も含めて、あらためて考察してみたいと考えます。

 それにしても、やはりここが問題の重要なカギになってきたかという感慨です。




posted by 木村知義 at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 時々日録
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