2010年06月16日

「内向きの思考」でなければいいのだが・・・

 4年ごとの「にわかサッカーファン」程度の知識と応援ぶりでワールドカップサッカーについて発言権があるのかどうかわかりませんが、ワールドカップの開幕にはそれなりに「興奮」して毎日のテレビ中継にかじりついています。
 
 一昨日の日本―カメルーン戦には力が入りました。
 開幕前に本田選手とヒデこと中田英寿氏が熱く語る特集番組を見て二人のサッカーに向かう姿勢というか、生き方に感動したこともあって、本田選手がゴールを決めた時には本当に胸が熱くなりました。
 
 で、昨夜帰宅して、さあブラジル―北朝鮮戦だ、しかしキックオフは確か夜中というか未明の午前3時半だかなんだったな・・・と思って新聞の番組欄を見て、どこにも記載がないので目を疑いました。

 何かの間違いではないかと別の新聞の番組欄も確かめてみるというバカなことをしてみたのですが、当然といえば当然ですが、どこにも見当たりません。

 近頃はやりの表現を使えば、エエッー!!マジカョとでもいう気分でした。
 「地獄のG組」「世界ランク1位、優勝候補の一角のブラジル」と「出場チーム中世界ランク最下位、44年ぶり出場の北朝鮮」戦だぞ!なぜだ?!と声を上げてしまいました。
 
 NHKをはじめ日本の放送局はなぜこの試合を中継しなかったのでしょうか。
 まさか、北朝鮮ということで「自粛」したということはないのでしょうね、などとあらぬことまで考えてしまいました。
 
 放送関係者にはぜひこの問いに答えてもらいたいと、思います。
 「なぜ、ブラジル―北朝鮮戦を中継しなかったのか、その判断はどういう考えにもとづくものなのか?!」と。
 
 北朝鮮がどうのこうのという好悪の問題ではなく、ジャーナリストであれば、この試合に関心をもってしかるべき、と私は、思うのです。
 
 否、関心を持たないなどというのはジャーナリスト失格だとさえ考えます。

 しかも、北朝鮮代表には川崎でプレーする鄭大世と大宮の安英学という2人のJリーガーがいます。
 
 加えて44年前にはイタリアに勝って8強入りを果たし、世界をアッといわせたという歴史があります。
 もちろんその後世界の舞台から遠ざかってはいましたが、サッカーファンのみならず、ジャーナリストとしては関心を持ってしかるべきという今回のワールドカップ出場です。

 ある新聞の記事の一部を引用します。

 北朝鮮はW杯で輝かしい成績を誇る。66年イングランド大会に初出場し、強豪イタリアを倒して8強入り。国内のサッカー人気も高く、訪朝経験のある国際サッカー連盟(FIFA)のブラッター会長は「金正日総書記自らが、サッカーの発展に強い関心を持っている」というほど。日本と対戦した94年米国大会以来、予選への出場を見合わせ、食糧不足に伴う財政状況の悪化や、成績不振で金総書記が代表チームを解散させたなどの噂が飛んだ。再び力を入れ始めたのは、2002年日韓大会での韓国の躍進が起因とされる。
 代表の特徴は、準備期間の長さ。アジアサッカー連盟(AFC)などよると、W杯出場決定後、欧州とアフリカ遠征を断行し、今年はトルコや中南米、スイスで合宿を行い、南ア入りした。平壌近郊には4〜6面のピッチや宿舎、ジムを完備した国内合宿地がある。
 民族教育の影響からか国や代表チームへの忠誠心は高い。安は02年に初招集された際、当時所属した新潟のチーム事情で合流が遅れると、「代表より大事なことがあるのか」と練習着すら渡してもらえなかったという。
 FIFAランキングは、出場32チーム中最下位の105位。いまだ謎の多いチームとあって、8日に練習が公開されると100人近い報道陣が殺到した。同じG組のブラジルやポルトガル、コートジボワールだけでなく、ポーランドなど多くのメディアの注目を集めたが、報道対応は鄭大世ただ1人で、英語で「政治とスポーツは別。プレーで北朝鮮のイメージを変えたい」と意気込んだ。
 15日には強豪ブラジルとの初戦を迎える。「北朝鮮にはどこにも負けない勇気がある。奇跡は起こせる」と鄭大世の顔は自信に満ちている。
 
 さてこの記事は何新聞でしょうか?
 普段は北朝鮮に対して、きわめて!厳しい論調で知られる産経新聞の記事です。

 スポーツだから政治などと無関係に、などと間の抜けたことを言うつもりはありません。
 
 スポーツは政治そのものであり、オリンピックをはじめ、政治と無関係なスポーツの世界大会などありえません。
 
 スポーツは政治そのものです!

 だからこそ、なのです。
 ジャーナルな観点からしっかりスポーツを見つめる必要があるのです。

 そこには自身の好悪や言うところの世の中の「空気」に動かされず、しっかりとした視座が、視角がなければなりません。

 たかがブラジル―北朝鮮戦の中継がなかったからといって、そこまで言うのかと思う人がいるとしたら、まずサッカーファンとして失格というだけでなく、いま(現在)という時代を生きる一個の人間として、世界とそしてアジアとどう向き合うのかというところでその在り方が深く問われるというべきです。

 サッカーファンとして失格だと言われることぐらいは、単に趣味の問題ですから、サッカーなんか興味はアリマセン!と言い返せばそれで終わりです。
 しかし、この時代を生きる人間として…ということは、なかなか重く、厳しい問題です。

 もちろん、そこまで大げさに言うことはないだろう、という反論は承知の上です。

 しかし、産経の記事をしっかりと読んでみてください。

 わたしがワールドカップに関心を深め、「にわかワールドカップサッカーファン」になったのは、2002年の日韓共催のW杯大会の2年ほど前にさかのぼります。

 何かの折に、親しくしている編集者から「think2002」という勉強会をしているから顔を出してみないかと誘われたのでした。
 
 この会合はその名の通り、日韓共催のワールドカップについていろいろな角度から考える(think)ということであることはもちろんですが、この大会を機に、日本に住む外国人たちと日本人が手を携え、ネットワークを築いて世界から訪れる各国の人たちのために何か役立つことが出来ないだろうかという問題意識で重ねられている、すぐれて実践的な会合でした。

 国際サッカー連盟(FIFA)の理事を務める日本サッカー協会副会長の小倉純二さんやセルジオ越後さん、あるいは中田英寿選手の所属する事務所の関係者、さらにはJAWOC:FIFAワールドカップの日本組織委員会の関係者といった多くの人が、あるときは講師として、あるときは参加者の一員として集うこの会で私は単にサッカーについての知識を得ただけではなく、この時代に国をこえてスポーツの大会を開くということの意味と価値について深く学ぶことになりました。

 さらに、「在日」という存在、日本に住み、暮らす多くの外国人の多様な文化や価値観、ものの見方、そしてこの日本という国で外国人が日々生きることの困難と喜びについて、肌を通して知り、学ぶことになりました。

 そこで交流を深めることになったフリーランスのジャーナリスト姜誠さんが、その後「越境人たち 六月の祭り」(集英社刊)にこの「think2002」のこともふくめてすぐれたルポルタージュとしてまとめていますので、機会があればぜひ読んでいただきたいのですが、私にとっては多くのことを学ぶかけがえのない機会となりました。

 さらに加えて言えば、その姜誠さんからの声掛けで、その後、日本における多民族、多文化共生について考え、行動する「「在日外国人地域ボランティア・ネットワーク円卓会議」の議論にも、ささやかにですが、参加することになりました。

 姜誠さんに誘われて、ブラジル人学校や朝鮮学校などを訪問しながら、この日本国というもの、日本社会のあり方についてどれほど深く考えさせられたことか。

 あるいはこの活動の中で出会うことになった東京芸術大学の毛利嘉孝さんや法政大学の田嶋淳子さん、武蔵大学のアンジェロ・イシさん、さらにはそれぞれの先生方の下で学ぶ大勢の学生たちと一緒に考え、私は本当にいかほどのこともできなかったのですが、ともにイベントに取り組むことで、このニッポンも捨てたものではないぞという勇気を得たことは、私にとって貴重な体験となりました。

 当たり前といえば当たり前ですが、日本に住み、暮らす外国人の存在について考えるということはとりもなおさず、日本あるいは日本人という存在について考えることであり、日本のあり方について見つめ直すことであるということを、あらためて認識させられたのでした。

 つまり、私にとって、ワールドカップという4年に一度の「一大イベント」は、単ににわかサッカーファンになるということにとどまらず、世界を考え、日本を考える重要な機会の一つになるということなのです。

 さて、ブラジルー北朝鮮戦の中継はなぜなされなかったのか?

 私は、メディアにかかわる人々は真摯に考えてみるべきだと考えます。

 北朝鮮の試合だということにかかわる、何かの問題があるのでしょうか、あるいはどこか「ひっかかり」があるのでしょうか。
 その判断の依って来たる所は何なのでしょうか。

 「内向きの思考」でなければいいのだが…という危惧は杞憂でしょうか。

 それにしても、前半0−0で後半2−0となりながら、くいさがる北朝鮮がブラジルゴールのネットを揺らす一点を挙げ、さらにゴールポストの上を越えてしまいはしましたが、思い切ったミドルシュートを放った北朝鮮にハッとさせられたブラジル。

 ダイジェストではなく、中継で見たかった、と思うのは私だけでしょうか。
 たとえ夜中の3時半といえどもです!

 さて、日本のテレビ関係者はどう答えるのか。
 聞いてみたい!と思います。

 そしてもう一度問う!
 「内向きの思考」でなければいいのだが、と。
 ニッポンガンバレ!だけではすまないのではないかと。

 


 

 
 

 
posted by 木村知義 at 11:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 時々日録