2010年05月02日

画像の補正が終わりました

 乱れていた画像の補正が終わりました。
 掲載するときの画像ファイルの番号に重複があり、3月7日の記事の中の画像と入れ替わるという不具合が起きていました。
 
 「普天間、朝鮮半島、中国そしてアジアへ(3)」をアップしたあと午後から夜にかけてお読みいただいた方のなかには金ジョンウン氏にかかわる画像が入れ替わってしまった状態でご覧いただいたケースがあったと思います。
 アップした後の確認が遅れてしまい大変失礼しました。
 
posted by 木村知義 at 22:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 時々日録

おわびです!

きょう午後掲載した記事の中で金ジョンウン氏関連の画像をアップしたのですが、その後、どういうわけかファイルが入れ替わってしまいました。ファイルの手直しをする間、きょうのブログ全体を削除します。しばしお待ちください。
posted by 木村知義 at 21:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 時々日録

普天間、朝鮮半島、中国そしてアジアへ(3)

(承前)
 いやはやというべきか、どのメディアで、一体何度報じられたのか、それをチェックするだけでも大層な手間になるのでそんな余裕はないのですが、直近のものだけを振り返っても、4月末の金正日総書記中国訪問の可能性を「朝日」が伝えたのは4月18日のことでした。
 その後、23日には共同通信とそれを引く形で東京新聞、24日には「毎日」と各紙があいついで金総書記の訪中の可能性について報じました。それらの記事の中には「先遣隊」が北京に入ったと伝えるものもありました。

 もっともその先遣隊が4月初めに北京入りと伝えていたのに後には下旬(20日過ぎ)に北京入りというわけで、こりゃ一体どうなっているんだろうかと読むほうが混乱したのですが、子細にチェックしてみると「先遣隊」は一度帰国してふたたび北京へと推測させる記事もあって、ホウそういうことですかと妙なところに感心して、いやはやそれにしてもスクープのつじつまを合わせるのは大変なんだなーと取材記者に「同情」したりもしました。

 何が「いやはや」なのかといえば、少し冷静に考えると、金正日総書記の4月末訪中という可能性は極めて低いか、ありえないということがすぐわかるはずだからです。

 これは「後証文」で言っているのではなく、これまでも何度か北朝鮮報道について書いてきたことを読みかえしていただければ、決して結果を見てからものを言っているのではないことをお分かりいただけると思います。

 そこで、笑ってはいけないのですが、とうとう金正日総書記の訪中問題は仕切り直しだ!という最終的な??結論を下す記事が4月29日に北京発共同で伝えられました。

「中国と北朝鮮の間で検討されていた4月末から5月初めにかけての金正日総書記の中国訪問が当面延期され、調整は仕切り直しされることが29日分かった。中朝関係に詳しい複数の消息筋が明らかにした。延期理由は不明だが、韓国の哨戒艦沈没をめぐる原因究明で北朝鮮の関与説が韓国内で強まり、核問題をめぐる6カ国協議再開や米朝協議の見通しに不透明さが増してきた情勢も考慮された可能性がある。」

 「当面延期」だというわけですから、きっともう少しすれば?金正日総書記訪中ということになるのかもしれません。しかしそれより重要なのは記事の後半ではないかと思うのです。

 これこそ取材しなければならない問題の本質であり気安く「延期の理由は不明だが」などと書いて事もなしということでは許されないのではないかと、私は思うのです。

 とはいいながら「韓国の哨戒艦沈没をめぐる原因究明で北朝鮮の関与説が韓国内で強まり、核問題をめぐる6カ国協議再開や米朝協議の見通しに不透明さが増してきた情勢も考慮された可能性がある。」という重要なくだりが書き込まれてあります。

 さて、ここでちょっと脱線ですが、この間の北朝鮮にかかわるスクープでもっと笑えないものは金ジョンウン氏の「近影」というものでしょう。

 4月20日の「毎日」の一面を飾った「衝撃」の写真なので覚えていらっしゃる方も多いのではないかと思います。もしかするとこの写真だけでも当日の駅売りの「毎日」の売れ行きは群を抜いたのではないかなどと「下賤」な推測をしたものでした。「正銀氏初の近影」という6段抜きの見出しに「金正日総書記に寄り添い製鉄所視察」の横見出しで大きな写真が掲載されて大いに関心をそそられたのでした。記事のリードはこうでした。

「北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記(68)の最有力後継候補で三男の正銀(ジョンウン)氏(26)の写真を、朝鮮中央通信や朝鮮労働党機関紙・労働新聞など国営報道機関が3月初めに報じていたことが分かった。北朝鮮指導部に近い関係者や韓国情報機関の関係者が毎日新聞に証言した。北朝鮮の公式メディアが正銀氏の姿を伝えるのは初めてで、正銀氏への権力移行作業が本格化している様子が浮き彫りになった。」

 この写真を見たとき、私は単純というか馬鹿というか、いやこりゃすごいスクープだと思ったのでした。しかし記事の書き出しの部分で「北朝鮮指導部に近い関係者や韓国情報機関の関係者が毎日新聞に証言した。」とあるのと写真のクレジットに朝鮮通信とあるのでなんともいえない違和感が生じました。で、記事を子細に読んでみると、これは3月5日の労働新聞に載った写真であり、平壌の「ある衣類関連企業」で出されたという「指示」を根拠にして組み立てられた記事であることがわかりました。記事の重要なくだりです。

「『今日の労働新聞をしっかり見るように』
 3月5日、平壌のある衣類関連企業で、こんな指示が出された。職員の一人が上司に『何が載っているのか』と尋ねると、上司は『金大将(正銀氏の愛称)のお姿がたくさん掲載されている』と答えたという。
 指導部に近い関係者によると、この指示は朝鮮労働党の各機関を通して、幅広く伝えられ、『「3月5日の新聞」』を探し求める人が相次いだ』という。それまでベールに包まれてきた正銀氏の姿がお披露目された形だ。この報道以後、正銀氏の写真は掲載されていない。
 その日の労働新聞は、金総書記が咸鏡北道(ハムギョンプクド)の金策(キムチェク)製鉄連合企業所を現地指導したという記事を大量の写真とともに報じた。朝鮮中央通信が掲載前日に配信した写真には、ペンを持ちながらメモ帳を広げる正銀氏の姿が写っている。紺色のスーツとみられる服に赤のネクタイ、黒っぽいコート姿。正銀氏はほとんどのカットで金総書記の隣に立ち、現地の案内人の説明を一緒に聞いているように見える。」

 まるで平壌の現場で見てきたかのようにビビッドに書かれていて、もしこの記事の通りであればこの記者の取材力、ソースはスゴイもんだと・・・、しかしここまで読んで、半信半疑に、というよりこの記事は相当危ういなと思いはじめたのでした。

 このスクープについての書き出しに「笑えない」と、実に失礼なことを書いたのは、このスクープが紙面を飾って数時間後、韓国政府の関係者から「別人」だ、つまりこの写真の人物はジョンウン氏ではないという見解が示されたからです。

 韓国の聯合通信はご丁寧にも「毎日」でジョンウン氏だとされた人物はこの製鉄所の技師である可能性が高いとしてその人物の写真を配信したのでした。

 こんなことを書いていても読者にとっては何のことやら…という具合で消化不良のような心地悪さを残してしまうでしょうから、いささかの「掟破り」を覚悟の上で写真を並べて示してみます。ただし、両者の、つまり「毎日」、聯合通信の写真をそのままクリップするのはいかにも許されないので少し加工して一部分だけをここに「引用」します。
いろいろなブログ全盛の今、著作権への配慮などまったくお構いなしに写真などが流用、掲載されていますが本当はしてはならないこと、許されないことで、私のブログではこういうことは一切避けてきています。ですから本来はこの写真の提示は「掟破り」です。しかしこの記述だけでは何が何やらさっぱりわからんという不満だけが膨らむのではないかと思い、写真の一部を加工して提示することにしたものです。その点をご理解いただきたいと思います。

   

金総書記の左、ジョンウン氏とされる人物と聯合通信が伝えた製鉄所の技師

 もうひとつ余談ですが、「毎日」は、以前、これまた独自のスクープとして、金正日総書記の三男のジョンウン氏の漢字表記が「正雲」ではなく「正銀」だとし報じて以来この漢字表記を使ってきているのですが、朝鮮問題の取材に長く携わっている知人に聞いてみると「『きんさん、ぎんさん』じゃあるまいし、朝鮮で金正銀などと『きん』(金)、『ぎん』(銀)をとりまぜた名前を付けるものだろうか・・・」というのです。したがってここでは「ジョンウン」と発音を示すカタカナ表記を使っています。

 さて、「毎日」の写真が「世紀の大スクープ」か「大誤報」か、いまのところ確認のしようがありませんのでそこは確たるものではないのですが、いずれにしても、ことほど左様に、日本での北朝鮮報道は危ういものだということは確かでしょう。

 もう一つ、付け加えておくと4月30日の「朝日」朝刊がソウル発で「ノドン発射兆候 北朝鮮、来月中にも」と伝え、ソウル発の!!ニュースが韓国の「東亜日報」に転電されて韓国でも報じられたのですが、同じ韓国の聯合通信はすかさずという感じで
「政府当局者は30日、北朝鮮が中距離弾頭ミサイル『ノドン』の発射を準備している兆候はないと明らかにした。北朝鮮懸案に詳しいこの当局者は、北朝鮮が近く『ノドン』を発射する動きがあると日本のメディアが報じたことに対し、『「ノドン」レベルのミサイル発射を準備するとなると、動きが目立つが、政府当局はそのような動きはないと把握している』と述べた。」
と、「朝日」の報道を真っ向から否定する内容を伝えています。

 一体どうなっているのか、いい加減にしてくれよ!といいたくなりますが、北朝鮮をめぐる取材者は本当にしっかりと、かつ厳しく自分の足下を見直してみる必要があるのではないでしょうか。

 前に北朝鮮にかかわる報道、とりわけスクープがなぜガセになるのか、それぞれの記者の取材の努力は認めつつも、厳しく検証する必要があるのではないかと書きました。取材した記者こそが一番検証できるはずだとも。それは取材の方法やソースについての検証を言っているだけではありません。
 
 本論の金正日総書記の訪中問題に戻りましょう。

 冷静に考えて見れば、メディアで繰り返し伝えられた4月末までの金正日総書記の訪中というのは危うい、あるいはありえないのではないかと疑うのが論理的であり朝鮮半島問題をテーマにする者であれば常識的なところだと、私は、考えていました。

 失笑を買うことを承知であえて言えば、金正日総書記の訪中は、物見遊山で中国に出かけるというものではありません。そんなことは言わずもがなです。しかし訪中予測記事を見ていると、そのことへの認識と問題意識がどの程度のものかが疑わしくなるものでした。

 すでに書いてきていることですが、金正日総書記の訪中問題を、固唾をのんで見つめていたと言ったのは、今回の金正日総書記の訪中というのは、北朝鮮の核問題、とりわけ六か国協議の行き詰まりという状況をどう打破するのかに最終的な「解」を見出すものとならなければ実現しないものであるということ、したがって訪中問題の予測をするということは、その「解」が出る状況にあるのかどうかの「見極め」に深くかかわるということです。

 これまでの報道でも伝えられていることですから詳らかに振り返ることはしませんが、ここで、昨年12月の米国のボズワース北朝鮮担当特別代表の訪朝に記憶を戻す必要があります。

 後にオバマ大統領の親書を携えていたことが明らかになりましたから、大統領特使ともいうべきボズワース氏の訪朝で何がどう話し合われたのか、その詳細は依然として詳らかにされていませんが、おおむねのところは推測できるものとなっています。

 そして、このボズワース特別代表の訪朝と相前後して訪日した中国の習近平副主席の動きについては天皇との会見問題ばかりが注目されてあまり関心が払われなかったのですが、社民党の福島党首との会見で重要な発言をしたと、私は感じました。

 習近平副主席は福島党首に対して
「6カ国協議の再開や朝鮮半島の非核化について新しいチャンスを迎えているのではないか。朝鮮半島問題は緊張緩和の兆しが出てきている。日朝関係にも期待感があり、日本としても積極的な対話と協議をしてほしい。」
と述べたのでした。

 「朝鮮半島問題は緊張緩和の兆しが出てきている」「新しいチャンスを迎えている」というのです。

 これは習副主席の訪日直前のボズワース特別代表の訪朝を下敷きに、さらにさかのぼればボズワース特別代表の訪朝に先立つ10月の温家宝首相の訪朝という一連の「事態」を下敷きしていることは想像に難くないというべきでしょう。

 では金正日総書記が10月に訪朝した温家宝首相に対して述べたのはどういうことだったのでしょうか。
 
 記憶を呼び戻す必要があります。

「米朝関係が敵対関係から平和的関係へと移行することを条件に6カ国協議を含む多国間協議を行いたい」 と言ったのでした。

 そして紆余曲折があり、ボズワース特別代表の訪朝が発表され、それも当初の計画を2泊3日の日程に延ばして行われたのでした。
 
 習近平副主席の「緊張緩和の兆し」「新しいチャンス」という重要なキィーワードに注目してその後の事態の推移を見つめることになったがゆえに、私は、金正日総書記の4月末までの訪中はないという結論に至ったのでした。

 その論理的な構造が重要になってきます。
 4月8日のコラムで書いたことと円環のように繋がってくるのです。
(つづく)



posted by 木村知義 at 15:51| Comment(0) | TrackBack(1) | 時々日録