2010年04月30日

普天間、朝鮮半島、中国そしてアジアへ(2)

 (承前)
 「沖縄の負担を軽減させてあげたい」
 「普天間飛行場の移転問題」は、鳩山首相が、はからずもというべきか、漏らしてしまったような「施し」で取り組む問題でないことは言うまでもないことです。

 日本と米国のあり方を根底から問い直す、そして日本がアジアでどう生きるのかを問う問題として、日本国の総理大臣その人自身の問題としてあるのだというごくごく普通の感覚と問題意識があれば、こんな他人事のようなことばが出てくることはないでしょう。
 
 はからずもというときに、まさに本音が見えてしまうものです。恐ろしいものです。しかしながら、連日メディアで報じられる「ことば」を聴いていると、与党、野党を問わず、メディアに登場する多くの政治家たちからも、これと大差のない意識であることが透けて見えてきますから、事は深刻です。

 さて、そこで、沖縄の「基地」(この際、米軍基地とだけ限定的にいうべきではないので「基地」としておきます。当然、米軍と自衛隊との共同使用、共同作戦ということも視野に入れてのことです)は何のためにあるのかということに思考をすすめなければならないと思います。

 そんなこと、答えは簡単な話じゃないかという声が聞こえてきそうです。

 そう、まさに「脅威」に対する備え(抑止力)として「沖縄」はキィストーンをなしているというわけでしょう。

 私は1969年の4月から5月にかけて、復帰前の沖縄に出かけて以降沖縄に足を踏み入れることなく今に至っているのですが、当時は、米軍車両の黄色いナンバープレートに「Key Stone of the Pacific」と記されてありました。まさに沖縄が何であるのかを象徴するものだと、ベトナム戦争最中の嘉手納基地一帯をそして那覇軍港界隈を歩きながら、考えさせられたものです。

 ここで、まえのコラムで引いた、TVニュースで伝えられた前原国土交通大臣のコメントを思い出す必要があります。

 「沖縄県民の皆さん方のご意向はしっかり受けとめなければいけない。鳩山総理大臣が、できるだけ県外にという思いで努力されていることは、たいへん結構なことで、われわれも後押しをしなくてはいけないと思う」
 「日米間の協定のたてつけでは、現在の辺野古に基地を移設するという考え方はそのまま生きている。私が今申し上げられるのは、あらゆる選択肢を想定して、日米同盟関係の実効性の確保と地元住民のご理解、これを両立する形で問題を解決するということに尽きる」
 
 前半のコメントは、「負担を軽減させてあげたい」という鳩山首相と意識において大差ないことがわかり「大変結構なこと」?というべきなのでしょうが、そんな軽口はともかく、続く「日米同盟関係の実効性の確保と地元住民のご理解、これを両立する形で問題を解決するということに尽きる」ということになると、「日米同盟の実効性」、要は「脅威」に対する日米での備え(抑止力)が万全に機能するようにできるかどうか、それが「確保」できるかどうかが問題だと言っているわけです。

 結論から言えば、そんなことと「住民の理解」が「両立」させられたらたまったものではないのですが、そこは、いまはまず置いておくことにします。

 本当は置いておけないことであることはいうまでもありません!
 
 さてそこで、問題は、ここでいう「脅威」とは一体何なのかということになります。

 いま、なぜ沖縄なのか、あるいは沖縄の海兵隊なのか、を問うとき、注目すべき報道があったことを思い起こす必要があります。

 もちろん、一般的にいわれるように中国、北朝鮮の存在をもって「脅威」とすることについても深い吟味が必要であることはいうまでもありませんが、いまは、そこにおさまらない、そこをこえたというか、さらに踏み込んだ「問題のありか」についてしっかりと考えておかなければならないということなのです。

 遡ることひと月、4月1日(木)の朝、「毎日新聞」の朝刊を手にしたとき、やはりここにきたかという、なんとも言い難い感慨にかられながら活字を追ったのでした。

 「海兵隊 北朝鮮核が狙い」と一面トップ6段抜きの見出しが躍る紙面では「なぜ沖縄に−米軍高官の『本音』」という横見出しに「オキナワになぜ米海兵隊が必要なのか−−。米軍高官が『抑止力』以上の『主たる理由』を日本側へ新たに伝えてきていることが関係者らの証言で明らかになった。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題の迷走は結果として米軍の『本音』を引き出し、鳩山政権の掲げる『対等な日米関係』を築く一歩になるのだろうか。」というリードが続きました。

 少し長くなりますが、重要な記事なので冒頭の部分を引用します。

 「東京・赤坂の米国大使館。2月17日午前、日米の防衛当局幹部による会合がひそかに開かれた。呼びかけたのは来日中の米太平洋海兵隊(司令部ハワイ)のキース・スタルダー司令官。アジア太平洋に展開する海兵隊の最高指揮官である。
 日本側から西原正・前防衛大学校長ほか研究者数人。防衛省陸上幕僚監部の番匠幸一郎・防衛部長と統合幕僚監部の磯部晃一・防衛計画部長も同席した。
 日本滞在中の司令官は多忙を極めた。合間を縫うように招集された極秘会合は制服組同士、普天間問題への日本国民の反応、自衛隊内部の雰囲気を探る意味合いもあった。
 司令官は普天間飛行場移設問題について、現行計画への理解を求め『公式見解』をひと通り述べた。通訳なしの英語だけで1時間の会合の最後、日本側出席者の一人がいらだちを抑えるように反論した。『そんな話は私たち安保専門家はわかっています。そういう説明ばかりだから海兵隊は沖縄に必要ないと言われるのです』
 同席者によると、司令官はしばし考えたあと、言葉をつないだ。『実は沖縄の海兵隊の対象は北朝鮮だ。もはや南北の衝突より金正日(キムジョンイル)体制の崩壊の可能性の方が高い。その時、北朝鮮の核兵器を速やかに除去するのが最重要任務だ』
 緊急時に展開し『殴り込み部隊』と称される海兵隊。米軍は沖縄駐留の意義を『北朝鮮の脅威』『中国の軍拡』への抑止力や『災害救援』と説明してきた。しかし、司令官の口から出たのは『抑止力』よりは『朝鮮有事対処』。中台有事に比べ、北朝鮮崩壊時の核が日本に差し迫った問題であることを利用したきらいもあるが初めて本音を明かした瞬間だった。出席者の間に沈黙が流れた。」

 この日の朝刊の一面と三面をフルに使って展開されている「転換期の安保」論は、いま私たちが目にしている「普天間問題」の本質をきわめて明確に提示したというべきです。

 ただし、
 「『沖縄の負担軽減、抑止力の問題も含めて、私が腹案として持っているものは現行案と同等か、それ以上に効果のある案だと自信を持っている』。31日の党首討論で、鳩山由紀夫首相は『負担軽減』と『抑止力維持』を両立させた新移設先の選定に自信を示した。だが、日本列島を取り巻く安全保障環境は急変を続け、見方もさまざま。普天間飛行場の移設先探しばかりが先行し、海兵隊の機能が日米間で具体的に検証された様子はない。」
 と、まさに「見方もさまざま」と書くように、この記事を書いた記者がどういうスタンスなのかはあいまいなのですが。

 そして三面です。

 「95年9月に起きた沖縄駐留米海兵隊員3人による少女暴行事件をきっかけに、日米両国は議論を重ね、海兵隊が持つ普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の返還で合意した。日本ではあまり知られていないが、米国内では沖縄の海兵隊の撤退論や海外移転論の研究が盛んになった。
 『沖縄の海兵隊基地をオーストラリアへ移した場合の影響は』。冨沢暉(ひかる)元陸上幕僚長は、米海軍系研究機関からたずねられた場面を鮮明に覚えている。96年7月、都内での昼食会に呼ばれた時のことだ。
 冨沢氏が衝撃を受けたのは、日本では話題にすらなっていなかった『沖縄海兵隊の撤退シナリオ』を、一つの研究機関であれ、米軍関係者が真剣に検討していたという事実だった。冨沢氏は今、振り返る。『当時、彼らは横須賀・佐世保の海軍基地を確保するためには、海兵隊基地の撤退やむなしとの感じだった。米軍はあらゆることを想定、研究する。日本側に真剣な議論はあったのか』
 日米両国は06年5月、在日米軍再編協議の末、普天間飛行場の名護市辺野古への移設や、司令部を中心に沖縄海兵隊8000人をグアムに移転することで合意した。海兵隊の撤退や海外全面移転論はひとまず終息したが、北朝鮮崩壊のシナリオが真実味を増し、中国は急速に軍備増強を進める。
 アフガニスタン攻撃、イラク戦争を経て、米オバマ政権が今年2月に発表した4年ごとの国防政策の見直し(QDR)では、『在日米軍の存在を確実にし、グアムを安全保障の拠点にする』ことを強調。外務省幹部は『「沖縄の海兵隊は不要か」と問われれば、安保環境の流れはむしろ逆、「必要」だ』と断言する。
 だが、鳩山政権が普天間移設の現行計画を見直し、新たな移転先を探し始めたことで、議論は再びくすぶり始めた。主要閣僚の一人は『5月までに移設先を決められなければ、海兵隊が全面撤退する事態はあり得る。海兵隊の実力部隊をグアムに移転し、現行計画でグアムに移ることになっている司令部隊を沖縄に残せばいいと思う。司令部を残すだけならキャンプ・シュワブ内で足り、自衛隊と連携できる』と語る。」

 ようやく「議論」が本質に近づいたというべきです。

 ただし、ここでも注意が必要なのは「日米両国は06年5月、在日米軍再編協議の末、普天間飛行場の名護市辺野古への移設や、司令部を中心に沖縄海兵隊8000人をグアムに移転することで合意した。」としながら、これで「海兵隊の撤退や海外全面移転論はひとまず終息したが、」と書くのですから、前のコラムで触れたように「知ってか知らずか、それはわからないが、メディアが『真実』を報じていない」という宜野湾市長の伊波氏の懸念がこうした記事でも現実のものとなっていると思わざるをえません。

 しかし、そこを割り引いたとしても、この「毎日」の記事は「画期的」だというべきでしょう。
 なお、画期的ということばは本来、プラスの意味で使うのですから、本当はこういうときに使うのは不適切なのでしょうが、それでもこの間の普天間報道では群を抜いているという意味で「画期的」だというべきでしょう。

 さて、ここまで考えてきて、ようやく問題は朝鮮半島、それも「核を振りかざす」?北朝鮮と「軍拡」著しい中国、なかんずく北朝鮮こそが問題なのだという、事の「本質」?!に突き当たることになりました。

 物事はすべて関連していて、連鎖の輪の中にあること、そしてそれらはすべて複雑に絡まりながら同時進行していること、しかし、それらは一見、ひとつひとつの出来事として私たちの目の前に立ち現われてくること、まさにそうしたことを如実に思い知らされることを、いまさらながら、この記事を読み進みながら痛感したものです。

 ですから、私たちは、本当に頭をシャープにして、賢くあらねばならない!でなければ事の実体、実相と本質を見失うことになると、これまたあらためて思うのでした。

 さて、そこで、では北朝鮮をどうとらえるのか、あるいは北朝鮮と核の問題をどう見据えるのかというところに思考をすすめなければならないというべきでしょう。

 そこで、ちょっと迂回してしまうのですが、金正日総書記の訪中問題をめぐる報道について考えてみることにします。(つづく)



posted by 木村知義 at 23:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 時々日録

久しく書かなかった「お知らせ」を

 私が運営しているささやかなホームページに、中国への深い視線と中国での長いビジネスの積み重ねをもとにした小島正憲さんの「凝視中国」のページを設けていますが、いつも示唆深いレポートが届いています。

 中国国内を、あるときはアジア各国、米国へと飛び回って、各メディアのジャーナリストが顔色を失う徹底した現場主義で、自身の足と目と耳で取材、検証して中国社会の深層に迫る「暴動情報検証」、さらに日本で続々発行される中国関係図書を読み込んだ「読後雑感」は単なる書評というレベルをこえて、中国の現在(いま)を読み解く「現代中国論」というものでもあり、いずれも読み応えのあるものばかりです。

 最新レポートの中でも「チャイナウォッチャーの立ち位置について」は、同時代人として、あるいは中国にいささかでも関心を抱き見つめ続けている者として、深く考えさせられる内容です。

 私自身の運営するホームページの宣伝めいたことを書くのは気が引けてあまりここで取り上げてきていないのですが、読む価値のあるものを広く知らせないのは謙虚でもなんでもなく間違っているのだと思い、あらためてここに紹介することにしました。

 今後はもっときめ細かくというか、頻繁に紹介していこうと考えます。
 「今、チャイナ・ウォッチャーに課せられている任務は、『誤認情報の悪循環』を絶つことである。」という書き出しではじまる 「チャイナウォッチャーの立ち位置について」は、

http://www.shakaidotai.com/CCP099.html
 
  
また、ホームページTOPは

http://www.shakaidotai.com/index.html 
 
です。
 ぜひご一読いただきたいと考えます。


posted by 木村知義 at 09:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 時々日録

2010年04月29日

普天間、朝鮮半島、中国そしてアジアへ

 また、少しばかりコラムの間があいてしまいました。それにしてもとため息をつきながら毎日のニュースを追う日々となっています。

 さてそこで、まずこれからです。
 
 普天間−ワシントン核サミット−黄ジャンヨプ訪米、来日−金正日総書記訪中問題−天安沈没「事故」−韓国6月地方選挙−中国海軍演習−中井拉致担当相訪韓−金賢姫来日問題−小沢幹事長と検察審査会−上海万博開幕、そしてキャンベル国務次官補来日と日米同盟の今後、さらには東アジア共同体構想・・・。

 なんだか「判じ物」めいた書き出しですが、最近の「国際ニュース」(国際と国内の区分けをすることに意味がないということは自明です)のあれこれです。

 ところで、これらは本当に「あれ、これ」なのだろうか、否!断じてNo!これらが「一筋の糸」でつながっていることを見落としてはならない、というのが私の問題意識です。

 そこでまず、普天間飛行場の移設問題からです。

 沖縄では25日の日曜日に普天間飛行場の移設問題をめぐって大規模な県民集会が開かれました。9万人の人々が参加したという集会について伝えるテレビニュースを見ながら、普天間問題にかかわって、というより「沖縄の基地問題」について抱き続けているなんともいえない「違和感」が一層昂じたのでした。以下は注目して見たその日夕方のニュースのコメントです。

 「アメリカ軍普天間基地の沖縄県外や国外への移設を求める県民大会が沖縄県で開かれ、仲井真知事は『集まった人たちの熱気が日米両政府を動かして、納得のいく解決策を用意してくれると確信している』と述べ、鳩山政権に対し、基地の県外や国外移設を実現するよう求めました。県民大会は、アメリカ軍普天間基地の沖縄県外や国外への移設を日米両政府に求めるため、沖縄県読谷村で開かれ、会場のグラウンドは参加者でいっぱいになり、周囲にも人があふれました。大会であいさつに立った沖縄県の仲井真知事は『戦後、基地だけは変わることなく目の前にあり、不公平で、差別に近い印象を持つ。沖縄の基地問題は沖縄だけの問題ではなく、きょう集まった人たちの熱気が日米両政府を動かして、納得のいく解決策を用意してくれると確信している』と述べ、鳩山政権に対し、基地の県外や国外移設を実現するよう求めました。また、大会では、普天間基地を抱える宜野湾市や、基地の移設が検討されている名護市の市長などが、基地の県外や国外への移設を訴えました。」

 「政府は、今回の大会について、県民の声の表れの一つだと受けとめています。そして、県民の負担軽減を図ることができる政府案の具体化を急ぎ、速やかに、アメリカと移設先双方と正式な交渉に入りたい考えで、沖縄県内だけでなく、鹿児島県の徳之島に基地機能の一部を移す案などを検討しています。しかし、これまでの非公式の協議でアメリカ側は、一部だけの移設は運用上好ましくないという考えを示しているほか、徳之島でも大規模な反対集会が開かれるなど反発が強まっています。このため、政府内では、現行案を修正して陸上から遠ざける案や、浅瀬の沖合にくいを打ち込み、その上に滑走路を作る案なども検討できないかという意見も出始めています。」

 「前原国土交通大臣は記者団に対し、『沖縄県民の皆さん方のご意向はしっかり受けとめなければいけない。鳩山総理大臣が、できるだけ県外にという思いで努力されていることは、たいへん結構なことで、われわれも後押しをしなくてはいけないと思う』と述べました。その一方で、前原大臣は『日米間の協定のたてつけでは、現在の辺野古に基地を移設するという考え方はそのまま生きている。私が今申し上げられるのは、あらゆる選択肢を想定して、日米同盟関係の実効性の確保と地元住民のご理解、これを両立する形で問題を解決するということに尽きる』と述べ、あらゆる選択肢を検討することが必要という考えを示しました。」

 随所に重要なキィーワードともいうべきものがちらばっていて、本質的に問われるべき問題が潜んでいるというべきですが、翌日の朝刊各紙の紙面もおおむねこうした論調から外れるものではありませんでした。

 おおむねと断ったのは、
 「知事は『県内移設反対』を明言しなかったが、参加した県民の一部からは、大会の過熱ぶりが全国に誤ったメッセージを送り、同飛行場の移設はおろか、日米両政府間で約束された嘉手納以南の基地返還構想も頓挫(とんざ)するのでは…と懸念する声も出た。」

 「この日、主催者の要請で大会参加者は黄色いものを身につけた。県内移設に反対する者にとって黄色は特別の意味を持つ。3月25日、高嶺善伸沖縄県議会議長が黄色の『かりゆし』姿で北沢俊美防衛相との会談に臨み、『サッカーにはイエローカードというのがある。県民の思いを込めて黄色いかりゆしにしました』と政府への抗議の意思を表明した。黄色は政府への反感を象徴する色なのだ。 ところが、仲井真知事は青いかりゆしで登場した。関係者によると、会場入りするまで黄色のかりゆしを着用していたが、直前に着替えたのだという。仲井真知事には『県内移設反対』を強く訴える意図がなかったことになる。」「知事は大会後、記者団に『いろんな方がいろんな考えを持っており、単純に表題通りではない』と述べた。県内移設に含みを残した発言で、反対を唱える市民グループ主導の“暴走”を牽制(けんせい)する思惑も見え隠れする。なお、主催者は大会参加者を9万人と発表したが、情報関係者は『実際には3万人前後だったようだ』と語った。」

 と伝えた新聞もあるわけですから、少しばかりの留保が必要ということでしょう。しかし大体はこのテレビニュースの論調から大きく外れるものはなく、いわばこれがおおむねの「スタンダード」ということなのでしょう。

 もっとも「9万人」ではなく「3万人だったようだ」と、主催者発表を否定するために持ち出したソースが「情報関係者」だというくだりには思わず苦笑いしてしまいましたが・・・。
 ちなみに、この記者とどうやら親密な関係にあるらしいこの「情報関係者」とはどんな人物なのか教えてほしいものですね。

 そんな「冗談」(本当は冗談だとは言えません)はさておき、この記事にある、仲井真知事には「県内移設反対を強く訴える意図はなかった」という指摘は大事なところだろうと思いますので、「記者の意図」がどうあれ、この記事も大いに参考になるというべきものでしょう。

 さて、そこでなのですが、先週金曜日(23日)、アジア記者クラブの例会で、沖縄県宜野湾市の伊波洋一市長の話を聴きました。もちろん普天間基地移設問題がテーマですが、この問題の実相、実体と本質がメディアで伝えられていないこと、識者たちの言説のなかでも真実に迫るものは少数であり、かつ、それらも片隅に追いやられているという現在の言論状況を、あらためて痛感しました。

 伊波市長がこれまで何を語り、この問題にどう立ち向かってきたのか、活字では何度か読んできたつもりでしたが、肉声で語りかける場に足を運んだのは初めてでした。

 メディアで真剣にとりあげられることが少ないとはいえ、実は、問題の実体、実相についてはすでにくりかえし語られているところです。要は、普天間飛行場の移設問題がいかに虚構の上につくりあげられた「問題」なのか、つまり日米同盟の深い闇=日本の米国への従属構造の闇によって「つくりあげられた問題」であるのかということです。

 2005年10月の「日米同盟:未来のための変革と再編」から2006年5月の「再編実施のためのロードマップ」さらには同年7月の「グアム統合軍事開発計画」を精査してみると、米軍は、米国自身の世界戦略の見直しの必要性から、沖縄駐留兵力のほとんどを自らの決断でグアムに移転させる計画をすすめていること、そのためにほぼ1兆円になんなんとする日本の「カネ」が使われること、にもかかわらず、グアムに移って沖縄には存在しなくなるはずの「幻の海兵隊」のために代替基地が必要だという虚構がつくりあげられ、それをめぐって政権もメディアも、「本当のこと」には知らんふりを決め込んで「代替基地をどこにつくるのか!」「期限は5月末までだ!」と「大騒ぎして右往左往」という構図がくっきりと浮かび上がってくる、伊波市長の話でした。

 その根拠となる膨大で詳細な調査資料は宜野湾市のWebサイトで公開されていますのでそこに譲ります。  http://www.city.ginowan.okinawa.jp から入って「普天間飛行場の危険性除去と海兵隊のグアム移転」そのほかです。

 
 重要なことは、現在進行している「本当のこと」が国会でも国民にも共有されていないことだというわけです。
 伊波市長は岡田外務大臣が沖縄を訪れた際にも直接ぶつけたが、「自分が聞いていることとは認識が異なる」といった反応で、日本政府もまた「(米軍のグアム統合計画は)正式な決定ではない」としているというのです。

 しかし、伊波市長は事実に基づいて「海兵隊のグアム移転が司令部中心というのは間違いであり、沖縄海兵隊の主要な部隊が一体的にグアムに移転すること、そこには普天間飛行場の海兵隊ヘリ部隊も含まれる」ことを米軍サイドの資料を詳細にあげながら、引き算、足し算の単純な算数レベルの計算をするだけで沖縄にどうして「一万人規模」の兵員が残り、かつそのための基地が必要なのか、全く説明がつかないということを端的に示して見せたのです。

 問題は、こんな「簡単なこと」がなぜ政府でもあるいはメディアでも検証されず、伝えられないのか、それが不思議でならないというわけです。

 そしてそこに見えてくるのは、米軍には沖縄にいてもらわねばならないとする日本の「ひと群れ」の人々と、そうした人々と利害を共にする米国側のこれまた「ひと群れ」の人々がいて、それらの「深い闇」が存在しているということです。

 一体誰が米軍を沖縄に「引き止め」それによってどのような利益を得るのか、それこそが重要なところなのでしょうが、それだけにこの琴線に触れる事実を報じることは、まさに命がけということになるのでしょう。

 「海兵隊がグアムに行くのはアメリカの意志であり、アメリカはグアムにいる方が機動的に動けると考えている。しかし、日本は、海兵隊は去って行かないでくれと言っている。米国にとっては、基地というものは使わなくてもあったほうがいい。しかも日本政府がカネを出してくれるというのだからなおさらあったほうがいい!」というわけで、まあカネは日本が出すと言っているのだから、言った限りは基地でもなんでも造ってもらおうじゃないかというのが「普天間移設問題の日米合意」ということになるわけです。

 伊波市長は「日本政府は(こうした本質を)知らないで(普天間の移設問題を)言っているのか、知らんふりをして言っているのかわからないが、普天間の部隊が全部グアムに行くのになぜ代替施設が必要なのかわからない」としたう上で「マスコミにも大きな責任がある。外務省や防衛省、政府の言うことをただそのまま書いているだけだ。グアムに行って取材すればすぐにわかることだ。」とメディアの在り方についても厳しく語りました。

 いわゆる「密約」問題で「調査」を命じた(これが本当の意味で実体をあきらかにするものかどうかは別にしてですが)岡田外務大臣にかかわって伊波市長は「岡田外相に言いたいのは、『密約』を明らかにしようというのはいいが、それなら、いま7000億円ものカネを出してすすめている沖縄駐留米軍のグアム移転について国民に明らかにすべきではないか。それをせずに日米で示し合わせて要りもしない基地を造ろうとするのは、自分たちで『密約』をつくろうとしているようなものだ」と語ると会場から失笑が漏れたものでした。

 これ以上何かを付け加える必要もないくらい完膚なきまでに事の実体と本質を語っていると思うのは私だけでしょうか。

 それにしても「深い闇」にあるのは日米関係だけでなく、まさにメディアのあり方だというところに気づくと、問題の深刻さが一層増すのでした。

 そして、さらに、それにしてもです。
 「沖縄の負担を軽減させてあげたいという思いで努力している最中だ。難しいことは最初から分かっている。」(4.21「朝日」鳩山首相のコメント)という記事を目の前にするとき、この人の認識は一体どういうものなのだろうかと情けなくなります。
 
 フィクションと「深い闇」にまみれた「普天間飛行場の移設問題」ですが、百歩譲ったとして「沖縄の負担を軽減させてあげる」ために取り組む問題なのでしょうか。
 
 さらに、ぶら下がりの記者たちも、ここに何も引っかかることもなくメモして、ただ唯々諾々と記事を書いてよしとしているのでしょうか。

 事態は、というより病はというべきでしょう、病はもはや回復しがたいところにまで来ているというべきではないでしょうか。

 またもや、それにしてもです。
 それにしても、このような認識の人物をわれわれは政権交代という「歴史的な出来事」?!で首相の座につけることにしてしまったのだと考えると、本当にことばを失います。

 何度も何度も、それにしてもです。
 それにしても「私は愚かな首相かもしれない。12月に辺野古に決めていれば、どんなに楽だったか計り知れない。」というのです。
 これ以上何か書くべきことがあるでしょうか。

 しかし、問題はこんな「愚か」なことでは終わりません。

 ではなぜ沖縄の基地を残そうとするのか、その本質は何なのかということになります。

 ここを深く考えていくことこそがいま重要なのだと考えます。
 さらに書き継いでいくことにします。











posted by 木村知義 at 18:26| Comment(0) | TrackBack(1) | 時々日録

2010年04月08日

固唾をのんで見つめたニュースの行方は・・・

 4月も一週間が過ぎました。
 3月末から固唾をのんで毎日のニュースを注視していたのですが、結局「あの報道」はなんだったのだろうかと思う毎日が過ぎました。もちろん、今のいまも、突然のニュースが飛び込んでくるのかもしれませんが、しかし・・・です。

「あの報道」とは「金総書記訪中へ 非公式 今月後半で調整」という見出しが躍った毎日新聞3月3日(水)朝刊のスクープをはじめ、その後いくつかのメディアでも伝えられた一連の金正日総書記の訪中観測記事です。

3月末までに「訪中」がなかったためか、次には、4月はじめにという観測が流され、先遣隊が中国に入ったという「情報」まで伝えられました。

 金正日総書記の訪中があるとすれば中国の党、政府首脳との会見、会談が必須となるので、外国訪問が予定されていた習近平副主席の「日程」についての「質問」を中国外交部関係者に「当てて」探るという取材努力までしたあげく、金総書記の訪中観測をにべもなく「否定」されるなど、さまざまな「曲折」をへて、結局、大山鳴動して・・・の類に終わったというところです。

 ただし、今のところ、と注釈をつけておかなければなりません。
 
 朝日新聞は4月1日の朝刊で「韓国大統領府報道官は31日の記者会見で、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記の訪中について『(近く実現する)可能性が高いとみて、鋭意注視している』と語った。北朝鮮は4月9日に国会にあたる最高人民会議の開催を予定しており、それまでの訪中の可能性を念頭に置いた発言とみられる。」と伝えています。

 ただし、この記事では、末尾に「一方で、北朝鮮核問題の停滞や金総書記の健康問題などを理由に、訪中を疑問視する見方も依然残っている。」とそれまでの記述をちゃんと?打ち消す一行も加えるという、なんともややこしい記事になっていました。

 で、8日の今日に至ると、この観測記事はもうハズレた、というべきですから皮肉なことに「訪中を疑問視する見方も依然残っている」という一行の方が正しかったというわけです。

 ところが、今現在、Web掲載のみで紙面(私がチェックしているのは、「朝日」の場合は、朝刊は14版、夕刊は4版です)では見当たらないという不思議さは残しつつですが、ご丁寧にも続報として「韓国の情報機関・国家情報院の元世勲(ウォン・セフン)院長は6日、国会情報委員会で証言し、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記の訪中時期について『(最高人民会議が開かれる)9日以前に行かないのであれば、12日に胡錦濤(フー・チンタオ)中国国家主席の外遊日程もあり、4月末になるだろう』と述べた。『25日から28日までの間とみることもできるのではないか』とも語った。同委に出席した国会議員が明らかにした。」(web版2010年4月7日3時0分)とフォローしています。

 なにがなんだかわからなくなりますが、ということは、この報道に従うかぎり、少し日延べとなっているという程度のことなのかもしれません??

 また、「非公式」訪中というわけですから、中朝両国の情報管理が行き届いていて?!実は金総書記はすでに訪中しているが、メディアにはキャッチできていないということも皆無とはいえないのかもしれません・・・??

 しかし、常識的に考えると、一連の「金総書記訪中観測報道」はガセだった!というべきです。

 もちろん、メディアの報道の揚げ足取りをするためにこれを書いているのではありません。血のにじむようなあるいは地を這うような取材の積み重ねを要求される「現場」の努力を一切顧みず、いわば安全地帯からあれこれあげつらうというような態度をとるつもりは、少なくとも、私には、ありません。

 しかし、先月から、この動向を、まさに固唾をのむ思いで見つめていたのは私一人ではなかったと思うだけに、今回の一連の「北朝鮮報道」について、厳しい検証がなされてしかるべきだと考えます。

 一体何がガセだったのか?!なぜガセになってしまったのか、スクープが嘘報だったのはなぜなのか?!どこにその原因があったのかを突き止めることができるのは伝えた記者本人であるはずです。

 ことほど左様に「北朝鮮情報」といわれるものがいい加減で危ういということでは、我々がメディアの報道などをもとに何も判断できない、考えられないということになりますし、何を書いても「書き得!」、あとは野となれ山となれでは、ジャーナリズムの名に恥じる、もっとも唾棄すべきところにメディア自らが堕していくことになりかねないというべきです。

 一連の報道に実のある検証がなされることを切に期待しておきたいと思います。

 と、朝からここまで書いてきたところに朝刊が届きました。
 
 「朝日」一面の「北朝鮮『6者』前向き 予備会合支持、米は慎重」という見出しに目が釘付けになりました。
 ソウル発のこの記事では「北朝鮮が3月下旬に、核問題をめぐる6者協議の予備会合開催を呼びかけた中国提案への支持を表明していたことが分かった。」と伝えています。そして「米国が日韓など関係国に説明した内容を、協議筋が明らかにした」とソースも示しています。
 「これを受け、米国も北朝鮮の高官の訪米に向けた調整などを始めたが、直後に起きた韓国哨戒艦沈没の影響などで慎重姿勢に転じ、予備会合の開催は固まっていない。」ともしています。

 ただし、記事の中で北朝鮮が「中国提案への支持を表明していた」と表現しているところと「哨戒艦の沈没」とからんで米国が「慎重姿勢に転じ」としていることに、わたしはなんともいえない違和感を抱いたのでしたが・・・。

 この「違和感」についてだけでも、何ページもの紙幅を費やして書くべき問題だと思うのですが、今回はそのために書き始めたわけではないので、簡単に2点だけメモするにとどめます。(なお、不思議なことに朝刊一面記事であるにもかかわらず、いまのところWebには掲載されていません。先ほどの、金総書記の訪中観測の「フォロー」記事とは逆のケースとなっています。)

1.北朝鮮は予備会合の当事者であって、中国提案への「支持」を表明する立場ではなく、それに「合意」あるいは「同意」するのかしないのかというべきです。支持を表明するというときは中国が北朝鮮の態度にというべきで、一見言葉尻をうんぬんしているように見えるかもしれませんが、この情報への違和感をぬぐえません。

2.米国が「慎重姿勢に転じた」理由にふれて、韓国の哨戒艦沈没と北朝鮮のかかわりを何気なく匂わせるというトーンには、記者が韓国の「協議筋」と記している情報源による情報操作の色合いがにじみ出ているというべきで、この情報を漏らした目的に「不純」なものを否定できないというべきです。

 さしあたりはこの2点についてはきちんと検証されなければならないといえます。
 特に後者については、今回の哨戒艦沈没にかかわってさまざまな「不手際」が重なったことから、窮地に立った李明博政権の「情報操作」がとりざたされている状況で、沈没と北朝鮮のかかわりを、あるでもなくないでもないという曖昧さの中に落とし込んでおきたいという「見えざる意図」が強く働いていることを見落とすわけにはいかないと思います。

 わたしが接する韓国の人々の見方、感じ方からもこのことを強く感じます。さらにいえば、今回の哨戒艦沈没の原因は「単純であるがゆえに、より深刻だ」という観測もあります。

 北朝鮮にかかわる情報操作については、まさに魑魅魍魎というべき、ほの暗い世界が無限に広がっていることを知っておかなければならないと感じます。

 さて、金総書記の訪中問題に戻るならば、なぜ固唾をのんでニュースを注視していたのかといえば、まさにこの「6者協議」の行方を見定める上で決定的というか、無視できない重要性を帯びているからです。

 そこで、今回の「金総書記訪中」報道とかかわって、実はもっと大きな、注目すべき「スクープ」があったことを思い出さなければなりません。

 「金総書記の訪中観測」にさかのぼる2月23日(火)の「朝日新聞」朝刊一面トップを飾った「改革開放 世襲反対 核放棄 中国、北朝鮮に圧力 昨春の核実験直後」という見出しの大スクープ記事です。
 二面に続く解説記事では「『北朝鮮の経済体制は全面的に崩壊しつつあり、警戒する必要がある』中国共産党上層部は昨年12月16日、北京で政府系研究機関の研究者や当局者を集めた内部検討会議を開き、悪化する北朝鮮の経済状況を集中的に議論した。」というくだりにつづけて、北朝鮮のいわゆるデノミネーションの失敗や金総書記の三男ジョンウン氏への権力継承問題さらには1月に北朝鮮が発表した「国家開発銀行」の設立と外資導入問題にふれて書いています。

 この国家開発銀行については「中国の北朝鮮大使館で経済を担当する外交官が、人民日報系の国際情報紙・環球時報の取材を受けて詳細に説明している。」として、その説明では「経済開放を本格的に始める第一歩で、核問題を含めた安全保障の解決にもつながる」としていると書いています。

 しかし、続けて「ただ、こうした北朝鮮当局の主張に対し中国内には懐疑的な見方がある。中国共産党の対北朝鮮政策のブレーンの1人、張l瑰・中央党校国際戦略研究所教授は、北朝鮮が本気で開放政策を導入するのではなく、国連安保理の制裁で不足した外貨を一時的に補うのが目的だとみる。」として張教授は「北朝鮮の安全を保障するのは核兵器ではない。改革開放によって自国の経済を発展させることで、国民の支持を得ることだけだ」と批判している、と記事を締めくくっています。

 二面の見出しだけを拾ってみると「中朝ひそかな攻防」「核放棄・改革開放の圧力」「中国6者維持へ策」「石油止め復帰促す」「本心見えぬ北朝鮮」「『装った開放』の懸念」というものです。
 
 正直なところこの記事には驚きました。
 何に驚いたのかというと、中国が圧力をかけているということにではなく(それで北朝鮮が動くかどうか、もっと率直に言うと、従うかどうかは別にして、「圧力を加える」ことは想像の範囲ですから驚きはしません)この記事に、中国の北朝鮮関係の研究者それも「対北朝鮮政策のブレーンの1人」とされる人物が実名で登場していることにでした。

 昨年2月、北朝鮮情報を「漏えい」したとして日本でもよく名前の知られている研究者が身柄を拘束されたという情報が流れました。もちろん確認されたものではありませんが、この情報は中国が北朝鮮情報の扱いについて少なからずセンシティブになっていることを示したものとして注目されました。

 私のつきあいのある中国人研究者は、情報を漏らしたのはこの人物ではないといったのでしたが、何らかの形で北朝鮮情報が洩れたということは事実でありそれに対して中国当局が厳しく調査していることはうかがえました。

 また、北朝鮮情報を知りうる専門家、研究者は党の許しなしに党外の人物に北朝鮮問題について語ることは厳しく規制されているともいわれていました。

 したがって、こうした記事に、しかも単なる北朝鮮関連記事というレベルを超えて、政権の継承問題や核開発問題で中国が北朝鮮に対して圧力をかけていると伝える詳細な記事の中に、北朝鮮の実情と真意は・・・という形で、中国共産党中央党校の研究機関の教授が実名でコメントするというのは異例のことであり、常識的に考えればなんらかの「お墨付き」がなければ勝手にはできない「わざ」だというべきでしょう。となるとこの記事が書かれた背景は一体なんだろうかということを考えざるをえなくなります。

 さて、ここまで長々と書いてきたのは、いま書き続けているこのブログ記事に登場する韓国のオールドジャーナリストとの「対話」で、氏が、南北関係、北朝鮮の動向について、「李明博政権では動かすことができない。オバマ政権の現状を見ると米国も朝鮮半島問題に力を傾ける余裕などなく政権維持で精いっぱいだ。カギは一にかかって中国にある!」と鋭く断じたことに深くかかわるからです。

 かつて韓国を代表する新聞の外信部に身を置き、責任ある立場で仕事を重ねたこのオールドジャーナリストは、俗にいわれるような、北朝鮮に影響力を持っているのは中国だ・・・といったレベルで語ったのではありませんでした。

 もっと深く朝鮮半島の動向を洞察して、いま動きのとれない米国とまさに存在感を大きくする一方の中国という世界史的な構図の中で、北東アジアと朝鮮半島問題での中国の存在の重さとそれが果たすであろう「役割」さらにはそこで中国がめざすであろう「方向性」(意図)と選択肢について、深く考察、分析することこそが今後の北朝鮮情勢を判断するうえで不可欠になっているという、きわめて含むところの大きい、あるいは重い、示唆について語っているのでした。

 金正日総書記の訪中問題とは、実は、この問題設定への「解」がほの見えてくるということであり、それゆえに固唾をのんで注視しているというわけです。

 少し飛躍していうならば、北朝鮮と朝鮮半島問題への中国の決断とはどのようなものなのか、また北朝鮮はそれに対してどのような対策あるいは決断をもって向き合うのか、要はここに集約される問題が、多分、かなりの確率で見えてくるだろうと思うのです。

 もちろんその際のアクターの一人は米国であることはいうまでもありません。朝、中、米と、中国を中にはさむ国際政治の「ゲーム」が見えないところで熾烈に戦われ、展開されているということ、そしてその方向性がそれほど時をおかず見えてくるということだろうと思います。

 さて、残念ながら、この構図のなかでは韓国もそして日本もリアクターではあってもアクターではない、という実は深刻な問題が横たわっているというべきです。

 韓国のオールドジャーナリストとの対話に読み取るべきことはそのことでもあると痛感したのでした。

 さてそれにしても、メディアの伝える北朝鮮情報の危うさ、不確かさをのりこえる真剣な努力がなされないと、「リアクターからアクターへ」などと考えてみても、一歩たりとも踏み出せないことを、いま私たちは肝に銘ずるべきだと考えます。

 その上で、朝、中、米の「ゲーム」の構図を真剣に見据えるならば問題の所在あるいは争点はもう明確に絞られているというべきです。

 メディアが決まり文句のようにいう「米朝の溝は広くて深い」というような評論家然とした言説で事足れりというものではなく、なすべきことは明らかというべきです。

 北朝鮮の主張への賛否や好悪をあれこれいうのではなく、問題は、北朝鮮の主張が何であり、米国が主張するのは何かというところを見据え論点のありかを明確にすれば、何をどうしようとも動かせないものは動かせないということがわかってくるのです。逆にいえば、何をどうすることで事態は動くのかがはっきりするというわけです。

 そのためには北朝鮮が何を主張しているのかを冷静に見極める必要があります。

 近いところでいうと、ひとつには朝鮮中央通信が3月16日付で報じた「備忘録」がありますし、もうひとつは3月末にバンコクで開かれたIPU列国議会同盟第122回総会での朝鮮最高人民会議代表団団長の洪善玉最高人民会議副議長の演説があります。

 この演説で洪善玉副議長は「現在、朝鮮半島と地域の平和と安全保障で提起される根本の問題は朝米の敵対関係を終息させることである」として「米国の持続的な核の脅威に対処して自国の自主権と生存権の守護を目的にやむを得ず核の保有を選ばなければならなかったわれわれにとって、平和と安全保障問題は死活の問題として提起されている」「深い不信が根付く朝米の敵対関係を終息させる活路は、朝米間に平和協定を締結し、互いの信頼を築くところにある。6者会談が停滞しているのもまさしく、朝米間に信頼がないためである。」と述べています。

 また、「備忘録」では3月に行われた米韓共同の軍事演習「キー・リゾルブ、フォールイーグル」を非難するとともに「米国の現民主党政府は、就任前から対朝鮮政策で『変化』を提唱した。しかし、それは虚構にすぎなかった。」「昨年、米国が非核化のための会談再開を請託し続けるので、まず朝米会談を行ってみて米国が朝鮮を圧殺しようとする意図を改めたのか確かめた後、多者会談にも臨む意向を明らかにする『最大の雅量』を示した」「新年には、平和協定締結で戦争状態に終止符を打ち、信頼を築いて非核化をはじめ朝米間の諸問題の解決を前進させることに関する提案も打ち出した。しかし、米国は合同軍事演習で核の脅威を極大化し、朝鮮大豊国際投資グループと国家開発銀行の活動に嫉妬して経済制裁のさらなる強化に進んでいる」と米国を非難しています。

 そして「戦争か平和かという最も根本的な問題を抜きにして、朝鮮半島問題のいかなる解決も期待できない。米国は、核問題の軍事的・政治的根源である朝米間の戦争状態、敵対関係を解消して信頼を築くための実質的な措置を講じなければならない」と主張しています。

 繰り返していいますが、北朝鮮側の主張をそのままよしとするのかどうか、あるいは好悪の感情を抱くかどうかということが問題なのではなく、この指摘と主張がなされているという現実をふまえて、では何をどうすれば事態を動かすことができるのかということです。

 少なくとも、6か国協議を重ねてきた結果、このままでは北朝鮮としてはもはや得るものは何もないと断じているわけで、もし事態を動かそうという意志があるなら、残されるのは、米朝の直接対話による「戦争状態の終結」という道しか選択肢はないということです。

 もちろん戦争もまたやむなしということであれば別ですが、朝鮮半島のみならず北東アジアにおよぶ「災厄」の甚大さを考えれば、事実上、そのような選択肢はありえないことは明白です。

 とするならば、事はすでに煮詰まったというべきです。そのために、米国、中国がどう動くのか、それがいま試されているというべきです。

 現実主義ということばを、いまこそかみしめて考えてみなければならないと思うのです。

 また、そのような選択によってこそ、北朝鮮が主張することが本当なのかどうか世界注視の場で試されることになるという意味で、本質的に厳しく北朝鮮に迫るという構図をもたらすものだということです。

 韓国の李明博政権のいう「グランドバーゲン」なるものこそが、一見耳にここちよく響きながら実は現実離れした、ある種の「観念論」にすぎないことがわかってきます。

 交渉や協議というものは相手があることだということを忘れ自己の好悪や賛否でしか物事を考えられないとき、アクターであることを降りなければなくなる、それが国際政治の「ゲーム」というものです。

 もし相手が気に入らないのなら、本質的に相手を追いつめるということはどういうことなのかという現実的な判断ができなければ勝負にならないというべきでしょう。

 重ねていいます。この北東アジアで、またふたたびの戦争をしようというのなら別の選択肢があるかもしれないが、そうでないのであればとるべき選択は自ずとあきらかだというべきでしょう。

 メディアもまたこのことを率直かつ正直に語らなければならないと思います。

 すでに問題の所在は煮詰まり、動かし難く明白になっているということを直視すべきです。



posted by 木村知義 at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 時々日録